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日本大学病院

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2024年7・8月号

アピアランスケア シリーズ第2弾「頭皮冷却装置による抗がん剤予防法」

アピアランスケア シリーズ第2弾 『 頭皮冷却装置による抗がん剤脱毛予防法 』

【頭皮冷却療法とは】

乳がんの治療の1つとして抗がん剤治療がありますが、その副作用として脱毛は必発です。この脱毛は抗がん剤を開始してから23週間後に始まり、その後、頭髪はほとんど脱毛するのが一般的でありました。頭皮冷却療法とは、抗がん剤の投与時に頭部に専用のキャップをかぶり、頭皮を冷やすことで頭皮血管を収縮させ、その血流を減らすことで、毛根へ到達する抗がん剤の作用を抑制させる脱毛予防法です。実際は、冷却装置内で約-4℃に冷却した冷却液を、連結したキャップ内に循環させて継続的に頭皮を冷却(頭皮表面19℃以下)します。抗がん剤投与開始30分前から冷却を始め、投与中および投与終了後90分まで冷却します。

【頭皮冷却療法の歴史】

頭皮冷却装置を開発したイギリスのPAXMAN社は、元はビールサーバーの冷却システムを造っていた会社でした。会社の会長の妻が乳がんになり、抗がん剤治療を行ったことがきっかけで、ビールを冷やす技術を応用して頭皮冷却装置を1997年に開発しました。欧州では2000年に頭皮冷却装置はCEマークを取得し、米国では2015年にFDADigniCapPaxman Scalp Cooling2種類の頭皮冷却装置を承認されました。現在では、PAXMAN頭皮冷却装置は全世界の50ヵ国以上で使用されており、延べ10万人以上の患者さまに使用されています。

【日本における頭皮冷却療法】

日本では頭皮冷却療法は20193月に厚生労働省により薬事承認され、2021年版の『がん治療におけるアピアランスケアガイドライン』でCQ1「化学療法誘発脱毛の予防や重症度軽減に対する頭皮クーリングシステムは、周術期化学療法を行う乳がん患者に限定して、行うことを弱く推奨する。」と記載され、科学的根拠のある治療法として推奨されています。2024年現在、東京都で頭皮冷却療法が導入されている病院は約10ヵ所程度とまだ少なく、どこの病院の外来でも普通に選択肢として提供出来る体制ではないのが現状です。

【当院における頭皮冷却療法】

当院では202011月よりPAXMAN頭皮冷却装置を導入し、多くの患者さまにご利用頂いています。当院での適応基準は、乳がん患者さまで、外来通院での周術期(手術前・手術後)の抗がん剤治療であることです、乳がんの再発治療に関しては適応外としています。上記の適応基準を満たしていれば、他病院からの紹介患者さまも施行しています。頭皮冷却療法は保険外診療であり、頭皮冷却用キャップの購入費用と頭皮冷却装置使用の医療サービス費用がかかります。副作用としては、頭皮冷却による寒さや頭痛、キャップのストラップによる下顎の痛み、吐き気や眩暈、ゴム臭による不快感などがあります。また、頭皮冷却療法を行えば、全く脱毛しないわけではなく、3050%程度の脱毛が起こりえます。ここまで言われると、やる意味があるのかと思うかもしれませんが、頭皮冷却療法をしなければ、完全に脱毛して、生えそろうまでかなりの時間がかかりますが、頭皮冷却療法を行うと発毛し生えそろうまでの期間も短くなります。当院の経験では、頭皮冷却療法を行った場合、抗がん剤治療終了から3ヵ月後でほとんどの患者さまが完全に生えそろい、毛量も以前の毛量に戻っています。今後は、頭皮冷却療法が全国に普及し、乳がん患者さまが少しでも笑顔になってもらえるように尽力していきたいと思います。

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