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ガラガーの挑戦

文理学部OBの著者が自治体行政の現場で文学者や子供らと関わったことをきっかけに書き上げた社会派タッチの児童文学だ。ガラガーは美しい村を人間による破壊から命がけで守るオオカミであり、自然への限りない愛と知勇を備えたガラガーを中心に物語は展開する。

現代の子供にとって死語になりそうな「正義」や「信頼」を主題に据えたという著者は、村長と結託して鉄道工事を始めた大臣の暴挙にガラガーが憤り、動物たちのリーダーとして全知全能を発揮して兵隊と戦う姿を「人間の欲望と悲しみ」とあぶりだしながら描いている。

ガラガーの周りには行動を共にしてガラガーを守る村の少年、都会の弁護士、新聞記者なども登場し、ついに裁判で無罪を勝ち取るフィナーレは、村を見守り続けた「天国の木」の最期と重なって大人の読者の胸にも迫る。
書籍名 ガラガーの挑戦
著者名 海口光之・著
月号 2003年秋季号 No.97
価格 800円(税別)
出版社情報 東京都新宿区新宿1-10-1、文芸社