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教材における漢詩文の風景

中学時代から中国4千年の歴史と風土にひかれ、漢詩文研究と教育に没頭した著者のライフワークである。この20年余り、毎年のように中国を旅し、漢詩文発露の地の実景に浸った著者の紀行は、時空を越えて詩仙、詩聖のたぎる思いをほうふつさせる。北京近郊から始まり、黄河流域、長江流域、西域に及ぶ幾度もの旅程で、著者は英傑たちが中原に鹿を追った「三国志」の世界を再現し、玄宗皇帝と楊貴妃の愛の世界を追憶し、ついに日本に帰ることのなかった遣唐使阿倍仲麻呂の望郷の念をよみがえらせる。

読者は懐かしい、あるいは始めて接する漢詩と現地解説に心を弾ませ、詩聖杜甫の「人生七十古来稀なり」(70歳まで生きるものはめったにいない)に古稀の由来を確認し、改めて学ぶ喜びを知る。研究者の現場主義の蓄積から発酵する悠久の詩情は教材の価値を越えている。

書籍名 教材における漢詩文の風景
著者名 前藤沢高校校長 半谷芳道・著
月号 2002年夏季号 No.92
価格
出版社情報 川崎市多摩区登戸1518-7、カワハラプリント