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島崎藤村『破戒』に学ぶ―いかに生きる

日本近代文学の金字塔、島崎藤村の『破戒』を告白小説として見るべきか、社会小説と見るべきか。著者はいずれの思潮にもくみせず、自己の想像力を全開させて人間悲劇の全体像としての『破戒』論を練り上げた。

「人種差別という人間悪に根ざす社会悪を、藤村は詩人としての思想主義的世界観と現実主義的人生観とを踏まえながら、時代に先がけて小説化した」「そこには明治という時代精神の矛盾と自己に芽生えた新しい相剋葛藤があった」。最終章で著者が脳幹から搾り出すように綴る言葉は、自我の普遍的理想への希求という大テーマと格闘した文豪の内面に鋭く迫る。

「人生は戦場である。作家は戦士である」。傷つきながら妥協することのない藤村文学の激しさをいとおしみつつ、代表作の解読に明け暮れた著者のイリノイ大学留学時代がみずみずしく甦る。

書籍名 島崎藤村『破戒』に学ぶ―いかに生きる
著者名 国際関係学部長 佐藤三武朗・著
月号 2003年秋季号 No.97
価格 2,800円(税別)
出版社情報 東京都渋谷区笹塚2-23-2、双文社出版