ヘーゲル伝
著者はフランス哲学会会長などを務めたヘーゲル研究の大家。十数年前に来日した際、各地の大学や研究会で講演しており、わが国でもよく知られている。本書ではドイツ古典哲学の代表者・ヘーゲルのなぞと空白に満ちた生涯を復元し、新しいヘーゲル像を示そうと試みている。
著者は、今日では人々は、ヘーゲルが自らの生活や活動、あるいは内密の思想の多くの面を状況に応じて有効な方法で、計画的に隠びしたという事実に気づいており、「ヘーゲルを再発見するときが到来している」との認識を持つ。つまりヘーゲルの生涯の道筋は、歴史家の側からなされた何がしかの歪曲を被っており、その道筋を正すこと、少なくともそのための努力をすることが肝要だと強調する。翻訳も「ヘーゲルは、物事を逆向きに考える人間である」の書き出しに見られるように、軽妙かつ格調高く、訳注も豊富だ。
書籍名 | ヘーゲル伝 |
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著者名 | ジャック・ドント・著 法学部教授 飯塚 勝久・訳 |
月号 | 2002年冬季号 No.90 |
価格 | 5,600円(税別) |
出版社情報 | 東京都文京区小石川3-7-2、未来社 |