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た行

日本の「哲学」を読み解く―「無」の時代を生きぬくために

世界恐慌を機に日本が模範としていた西洋近代化の諸理念が崩れ、一九三〇年代に日本独自の哲学が生み出された。その先駆者が西田幾多郎だ。西洋の形而上学的原理に基づく哲学を「有」とみなし、自らの哲学を「無」の哲学と称した西田、その西田哲学の大きな影響を受けたのが和辻哲郎、九鬼周造、三木清。この四人が、日本のいわば〝哲学山脈〟を形づくったと著者は位置付ける。

本書は「無」の西田、「空」の和辻、「偶然性」の九鬼、「虚無」の三木のそれぞれの生い立ちから、各哲学の形成課程や、西田との出会いなどを振り返りながら、四人の思想を分かりやすく解説、現代を生き抜く知恵を探っている。すべての価値観が色あせたといわれる現代にあっても「生きた力」として彼らの魅力が伝わってくる。

巻末に四人の関連年譜やブックガイドなどが付いているのも親切だ。

書籍名 日本の「哲学」を読み解く―「無」の時代を生きぬくために
著者名 理工学部教授 田中 久文・著
月号 2001年冬季号 No.86
価格 680円(税別)
出版社情報 東京都台東区蔵前2-5-3、筑摩書房