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CO2と交通―TDM戦略からのアプローチ

本書は、長年にわたり都市交通問題に取り組んできた著者が、今日の地球環境時代にふさわしい『クルマ社会』の在り方と、その実現の方策について総合的な観点から研究し、その成果をまとめたものである。

年々深刻化する地球環境問題。なかでも地球温暖化の進行は、熱帯林の減少や砂漠化、野生生物種の減少など各種の自然環境破壊を招く現象としてその影響が危惧されている。そして、地球温暖化の主な原因として、近年「温室効果ガス」の存在が注目され、フロン対策等とあわせて、自動車から排出されるCO2(二酸化炭素)の削減が緊急の課題となっている。

しかし、自動車は自由で快適かつ便利な移動手段、物流手段として個人の生活、企業の活動で重要な役割を果たしていることから、その削減は容易でなく、また一方的な抑制は経済活動を著しく停滞させるなどのデメリットをもたらすことから、国・地方行政においてもその対策に苦慮している。

この現状に対して、著者は自動車交通が発生する需要そのもののコントロールに主眼を置き、欧米諸国で自動車交通削減に成果を上げているTDM(交通需要マネジメント)手法に早くから着目。その対策は、安全性に資する道路管理、信号制御を中心とした交通管理、バス、タクシー、トラック等の公共交通・物流交通の効率化を図る運輸管理、さらにはその環境づくりに資する土地利用変更などの都市計画にまで及んでいる。

著者は本書において、欧米諸国における環境面からの道路交通対策とTDM成功事例を紹介するとともに、日本の道路交通需要を「自家用」「業務用」「物流用」の三点に集約してそれぞれにおける「日本版TDM」手法を試み、予測される成果と、実現に向けてクリアすべき、行政システム等に根ざす種々の問題点並びに対策について指摘している。ちなみに、東京都が将来的な導入を決定し話題となっている「ロード・プライシング」についても、欧米における成功事例と、日本における導入シミュレーションについて考察。特に業務用・物流自動車については、ロード・プライシング導入による道路環境の改善から輸送効率が飛躍的に向上し、結果として徴収額を上回る業績アップが期待できるという、興味深いデータを示している。
書籍名 CO2と交通―TDM戦略からのアプローチ
著者名 日本大学理工学部教授 高田邦道・著
月号 2000年夏季号 No.84
価格
出版社情報 東京都千代田区麹町6-6 麹町東急ビル7階、交通新聞社(営業部03-5216-3217)