令和6年能登半島地震で被害を受けた皆さまへ

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や行

経ヶ峰

自分の分身のように愛した妻、こよなく慈しんだ妻の母。そのかけがえのない生と死を、夫である大学教員の「私」が内面に問いかけ、紡ぎ出した珠玉の短編精神小説だ。

「母のところに休ませてくださいね」。「ああ、きっと」。喀血し死を覚悟する病床の妻と、これに応じる夫の会話から物語は展開していく。
妻との約束を守って遺骨を抱え丹後半島の村に向かった夫は、美しい日本の風景の中で妻との静謐で幸せな時間を、花びらを数えるように回想する。「妻に今一度見せてやりたいと思うあちこちで、花を拾い集めて、二人の一番の思い出深いところで散華して、妻を送りましょう」。
傷みの旅を自らの卒論のテーマ「聖徳太子の母・穴穂部間人皇女」の悲しみも絡めて活写した「私」の行くてを照らすのは、「妻をいつも思う心で歩く」たくましい生である。「イタリヤ四季 春・夏・秋・冬」も収録。

書籍名 経ヶ峰
著者名 経済学部教授 横山理吉・著
月号 2004年春季号 No.99
価格
出版社情報 東京都千代田区三崎町1-3-2、桜門書房出版部