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ニコライ遭難

日本を震撼させた大津事件。明治24年5月、国賓のロシア皇太子を警護の巡査が襲い、日本の朝野は驚天動地の騒ぎとなった。極東進出をはかる強国ロシアに対し、日本はあまりにも弱小国だった。犯人の津田三蔵の扱いを巡り、政府の有力者と司法当局の考えは大きな隔たりがあった。

司法大臣・山田顕義(日本大学学祖)の苦悩は深まるばかりだった。 著者の吉村昭氏は、その周到な取材、緻密な構成に定評がある作家である。

本書でも日本国内の動き、司法内部の動揺、政府の混乱ぶりを描写するとともに、山田司法相の政治手腕を余すところなく明らかにしている。果たしてどのような対処ぶりを示したのか、ぜひ本書のご一読をお勧めしたい。

書籍名 ニコライ遭難
著者名 吉村 昭・著
月号 1997年冬季号 No.70
価格 560円
出版社情報 東京都新宿区矢来町71、新潮社