開催日時 令和元年7月2日(火)
表題 「改正相続法のポイント」
講師 危機管理学部 准教授 永沼淳子
改正相続法が2018(平成30)年7月に成立し、1980(昭和55)年の改正以来、約40年ぶりに大幅な見直しが行われた。改正の背景には、急激な高齢化に伴う国民の相続意識の変化が指摘されている。高齢化による変化として、相続人も高齢化していることが挙げられる。そうすると、特に被相続人(亡くなった方)の残された配偶者には生活保障の必要性が一層増し、他方で、被相続人の子は既に自立していることが多く、相続による生活保障の必要性は少なくなったとも考えられる。さらに、高齢者の再婚、長期の介護をした者に対する配慮の必要性など、相続を取り巻く社会情勢にも変化がみられる。
このような変化に対応するため、改正相続法は、配偶者の居住権を保護するための制度を新設した。具体的には、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身または一定期間、住み慣れた家に無償で居住できるようにしたものである。長期の居住権が認められない場合、一定の条件の下で、6カ月間の短期居住権を保証する制度も併せて創設された。さらに、相続人以外の親族の貢献を考慮する制度も新たに設置された。この制度は、被相続人を介護・看護した親族、例えば長男の配偶者が相続人に対し、その寄与に応じた額の金銭の支払いを請求できるとする内容で、相続の実質的な公平を目指したものである。
今回の改正は、上記の他、自筆証書遺言に関する見直し、自筆証書遺言の保管制度の新設、遺留分制度の見直し等、多岐にわたっている。施行日は、自筆証書遺言に関する見直しは2019年1月13日、長期及び短期の配偶者居住権については2020年4月1日、自筆証書遺言の保管制度については2020年7月10日より施行される予定であり、これ以外は2019年7月1日である。