東都大学野球春季リーグ第4週。すでに青山学院大の優勝は決まっているが、日本大学は中央大学との初戦を勝利し、連敗を4で止めると、2回戦も連勝。勝ち点を2とし、暫定ながら順位を3位に上げた。
5月18日中大との1回戦で4安打無四球完封の市川 【日本大学野球部】
不思議な勝ち、と言っていいですか? とたずねると、「そうですね」と日大・片岡昭吾監督。
中大に先勝しての、2回戦である。なにしろ、2回に敵失と積極的な走塁、角田勇斗(スポーツ科学部3年・習志野)のタイムリーなどで3点を先制したものの、2回途中からリリーフした中大の二番手・石田投手に手も足も出ない。9回2死から友田佑卓(法学部4年・九州学院)が四球を選んだが、出した走者はこれだけ。9三振と完璧に抑えられた。逆に中大には9安打を許し、3、4、9回以外は,得点圏に走者を背負っての守り。押しに押されながら、終わってみれば4投手の継投で3点を守り切っていたのだから、不思議な勝ちだろう。
片岡監督は言う。「今週は、山内翔太(スポーツ科学部3年・習志野)を後ろに置き、ワンポイント・リリーフでもピッチャー全員でいく、と告げていたんです」
それで腹をくくったのか、初先発の坂尾浩汰(危機管理学部3年・龍谷大平安)は、「行けるところまで飛ばす」と変化球を駆使し、「一回り」という片岡監督の期待以上、6回途中まで無失点。1死一、三塁のピンチでゲームプラン通りのワンポイント・リリーフした柏崎日祐(生産工学部2年・樹徳)が相手四番を三振に取ると、継投した山内翔は四球などでピンチを招きながらも、8回までをゼロに抑えた。8回には、1死一、三塁のピンチを迎えたが、ここで片岡監督はタイムを取ってマウンドに向かい、山内翔に告げる。
「3点差。1点やってもいいんだから、ゴロを打たせよう」
それに応じて、内野も併殺を狙う中間守備。そして山内翔は……注文通り、次打者をまんまと遊ゴロ併殺に打ち取った。さらに9回は、前日112球で4安打完封し、頼れるエースとなった市川祐(法学部2年・関東一)が危なげなく締めることになる。
5月19日中大との2回戦 リーグ戦初先発ながら6回途中まで投げ無失点の好投を見せた坂尾 【日本大学野球部】
5月19日中大との2回戦 1死一、三塁のピンチにワンポイント・リリーフで登板した柏崎、4番を三振に切ってとり起用に応えた 【日本大学野球部】
5月19日中大との2回戦 ピンチを招きつつも無失点で継投をつないだ山内 【日本大学野球部】
注目ルーキーもデビューした!
そう、1回戦はその市川がすばらしかったのだ。「まっすぐが指にかかって、いい投球ができました」と、147キロのストレートを中心に8三振、4安打無四球完封だ。大学入学後に後ろの小さいフォームにモデルチェンジ。最速152キロだった球速は多少落ちたが、新たに習得したフォークが有効で、二段気味のモーションも打者のタイミングをうまく外す。初戦の完封で、0.75の防御率は並みいるドラフト候補を抑えてトップに躍り出ていた。
さらに、その1回戦で目立ったのは手堅く決めた4つのバントだ。そのうち2つが、貴重な得点に結びついた。たとえば青山学院大との第2週、亜細亜大との第3週、勝負どころでのバント失敗が大きく響いて黒星を喫していた。だから、雨天などの影響で空いた中15日の間は、
「バント、ヒットエンドラン……とにかく、1点をしぼり取る練習を詰めてきました」
と片岡監督は言い、
「変則の日程になり、確かに調整はむずかしいですが、ウチにとってはいい期間でした」。
1回戦では花﨑成海(経済学部4年・広島商業)が2本のタイムリーヒットで2打点を上げるなど、4年生が市川の好投に援護を送った。
5月18日中大との1回戦 2本のタイムリーを放った花﨑 【日本大学野球部】
ちなみに、そのリーグ戦がない期間中に力を伸ばしてきたのが、注目の新人・村上慶太(法学部1年・九州学院)だ。村神様こと、東京ヤクルトスワローズ・村上宗隆の弟。中大との2回戦では、9回2死から高校の先輩・友田が粘って四球を得たことで、代打としてリーグ戦デビューが巡ってきた。結果は、空振り3つの三振。だが、「連日居残りの守備練習をこなし、下半身がしっかりしてきました」と片岡監督は言う。そして、こう付け加えるのだ。
「次週は、(村上に)さらに期待していますよ」
さあ、最終週。勝ち点3として、上位に食い込もう。次戦は駒澤大学。5月23日(火)9時から@UDトラックス上尾スタジアムでプレーボール予定。
5月19日中大との2回戦 リーグ戦初出場となった村上 【日本大学野球部】