新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、例年より遅い2021年3月5日(金)から3日間にわたり、無観客での開催となった第66回全日本大学対抗ウエイトリフティング選手権大会(1部)。昨年、7連覇を飾った本学は、全10階級のうち8階級に選手がエントリーし、優勝3名をはじめ7階級で表彰台に上がるなど、団体得点を着実に重ねて、見事8年連続※121回目※2の総合優勝を達成。重量挙部の伝統と誇りが、チーム1人ひとりに息づいていることを結果で証明した。

※1 大会最長記録。過去に5連覇を日体大、4連覇を明治大、法政大、本学が記録。
※2 大会最多記録。2位は法政大・18回、3位は日体大・11回。

 

インカレ1部の10校が10階級で得点を競う今大会。選手1人がスナッチ※1とクリーン&ジャーク※2の2種目で3本ずつ試技を行い、それぞれのベスト記録による順位得点と、トータル記録による順位得点、3つの合計で団体得点が決まる。同一階級には2名まで出場可能なため、レギュラー10選手の配置も重要な作戦となる。
※1 プラットフォームに置いているバーベルを一気に頭上まで持ち上げる動作。
※2 バーベルを肩のラインまで一度上げて静止(クリーン)、次いで一気に頭上へ持ち上げる(ジャーク)動作。


埼玉県上尾市・スポーツ総合センターで行われた初日の55kg級には、インカレ4年連続出場となる久保海斗選手(スポーツ科学・4年)と2月の全日本ジュニア選手権で2位となった君島一成選手(スポーツ科学・1年)の2名が出場。「いつもの試合と異なり団体戦なので、ミスをしてはいけないという緊張感がありました」と先陣を切った君島選手はスナッチ1本目88kg、2本目92kg、3本目では自己ベストまであと1kgに迫る94kgを成功させ、流れをつかむ。続いてプラットフォームに昇った久保選手は「緊張というより、楽しみのほうが強かったです」と経験に裏打ちされた自信を持って試技に臨み、1本目は95kgからスタートし、2本目98kg、そして3本目に自己ベストの101kgを挙げ、スナッチを終えて3位につけた。
クリーン&ジャークに入り、君島選手は3本目129kgのクリーンで膝を伸ばしきれずバーベルを落としてしまい、記録は2本目に成功した126kg。トータル220kgで5位となった。「試合中に脚がつることが多いので、対策をして臨んだのですが、今回もその症状が出てしまい、最後にミスをしていまいました」と反省した。
一方、久保選手は3本目で自己ベストタイとなる133kgを挙げて大会記録を樹立。優勝には惜しくも届かなかったが、トータル234kgで2位となり「満足のいく記録が残せました」と振り返った。「初日は良い流れづくりが重要だと思っているので、順位はもちろんですが、成功率も意識していました」との言葉通り、6本全ての試技を成功させた久保選手と、1年生ながら健闘した君島選手の合計で31点を獲得し、翌日以降に良い形でバトンをつないだ。

大会2日目、61kg級と67kg級に出場エントリーがない本学に対して、東京国際大が1位(92点)、中央大学が2位(72点)と得点を伸ばす。ここからの巻き返しが期待される73kg級には、インカレ2連覇中で、全日本学生個人選手権(2020年11月)でも優勝を飾った山根大地選手(スポーツ科学・4年)が出場した。
「コーチに言われた重量を、しっかり取ることだけを意識していました」と他校を意識することなく、他の選手がスナッチの試技を終えた129kgから登場すると、2本目135kg、3本目142kgも成功させ、別格の強さでトップに立つ。
クリーン&ジャークにおいても、ほとんどの選手が試技を終えた160kgから開始し、1本目をあっさりと決めて優勝を確定。3本目では大会記録となる175kgを挙げ、トータルでも大会新の317kgを記録する圧勝により、本学は24点を獲得した。
「ベスト記録(スナッチ145kg・クリーン&ジャーク180kg)の更新を狙うこともできましたが、それよりも6本確実に成功させて、後続の選手たちが良いイメージで試技に臨めればと思いました」と4年生としてチームを牽引するその姿勢を、プラットフォーム上で体現してみせた。

2日目の折返しとなる81kg級には、宍戸大輔選手(文理・4年)が出場。今シーズンは、全日本学生個人選手権と全日本選手権(2020年12月)で大学記録を更新して優勝するなど、好成績を収めており、「スナッチ、クリーン&ジャーク、トータルの全てで1位を取る」という目標を掲げて試合に臨んだ。スナッチは他校の選手が試技を終えた135kgから開始し、3本目で150kgを挙げて大会記録を更新しての1位。
さらに「練習ではジャークが安定しておらず、試合でもミスが多かった」と状態の悪さを口にしていたクリーン&ジャークも、スナッチ同様、他校の試技が終わった後の164kgからスタートし、これを確実にクリアして早々に優勝を決めた。続く180kgは差しきれず、「6本成功を目指していたので、もったいなかった」と悔しさを滲ませたが、「結構体が動いていたので」と3本目には自己ベストとなる185kgに挑み、これを見事に差し切る。トータル335kgの大学新記録を樹立する圧倒的勝利で、チームに24点をもたらした。

さらなる追撃を図りたい本学は、昨年2月の全日本ジュニア選手権で優勝を飾り、インカレ2年連続出場となる持田慶貴選手(経済・2年)が89kg級に登場。「前回大会はとにかく団体に貢献するという気持ちで臨んでいました。今回は団体に貢献しつつ、個人の順位も狙いにいきました」と自己ベスト更新を視野に入れていた。時間をたっぷり使いながら、1本目131kg、2本目136kgを成功。連続試技となった3本目では自己ベストを2kg上回る139kgを見事に挙げると、雄叫びを上げながらガッツポーズをし、喜びを爆発させた。大会新記録の142kgを挙げた九州国際大・山口選手、141kgの中央大・西村選手ら実力のある4年生と堂々と渡り合い、スナッチの順位を3位とした。
表彰台を目指して臨んだクリーン&ジャークでは、1本目160kgを決め、2本目164kgも持ちこたえて差し切る。3本目は自己ベスト更新を狙った169kgに挑み、粘りながらクリーンまで持っていったものの、ジャークで足を戻しきれず失敗し、天を仰いだ。しかし、トータルで303kgの3位に入り、15点を獲得した。

すっかり日が傾いた頃、2日目の最終競技96kg級が始まった。この階級には、高校3年時に選抜大会、総合体育大会、国民体育大会の3冠、本学入学後も全日本学生個人選手権で優勝し、5月の世界ジュニア選手権(サウジアラビア)への出場を決めた注目の1年生、不破翔大選手(文理)が出場。「試合前はずっと手が震えていました」と話しながらも、いざ本番になると堂々とした姿でプラットフォームに昇り、1本目130kg、2本目136kgをきれいに挙げた。3本目は自己ベストとなる141kgを成功させて、見守るチームメイトに向かいガッツポーズ。「3本目を決めたときに乗ってきました。クリーン&ジャークも見ていろよという気持ちでした」と、スナッチを4位の好位置で終えた。
表彰台を射程圏内として臨んだクリーン&ジャークは、2本目で171kgに成功して3位以上を確定させると、3本目は自己ベストとなる182kgに挑戦。クリーンに入る際、沈み込んだところで地面に臀部が触れそうになるも、しっかりと粘り、ジャークで持ちこたえて見事に成功。クリーン&ジャークの順位を2位、トータルでも323kgの2位(19点)となる活躍を見せた。

2日目を終えた時点で、出場した全階級で表彰台に上がり、団体得点は113。1位・中央大129点、2位・東京国際大117点に次ぐ3位ではあるが、翌日出場の4選手の活躍によって、逆転での優勝が大いに期待された。

前日から気温が10℃近く下がり、冬の寒さを取り戻した大会最終日。全日本学生個人選手権で優勝、全日本選手権で表彰台に上がるなど、好調を維持してきた福居尚弥選手(スポーツ科学・4年)が102kg級に出場した。「絶対優勝するぞという気持ちでした」と今大会に対する思いは強く、1本目132kg、2本目136kgともに20秒ほどで成功。3本目141kgは頭上まで挙げたバーベルを静止できず、後方に落としてしまったが、2本目の記録で2位につけた。
逆転を狙ったクリーン&ジャークでは、2本目に大会新記録となる176kgを挙げたものの、続く法政大・田宮選手が177kg、九州国際大・松本選手が178kgとさらに記録を更新し、ハイレベルな争いが繰り広げられた。勝負を賭けた最終試技、福居選手は185kgを申告し、大きく息を吐き出してバーベルを持ち上げたが、膝を伸ばしきれず前方へ落下させてしまう。首を傾げ、悔しそうな表情を浮かべながら、プラットフォームを後にした福居選手だが、トータル312kgで3位に入り、19点を獲得。「初めてインカレに出る選手もいますが、練習してきたことをこの会場で発揮してほしい」と後に続く選手に思いを託した。

全階級のうち、出場選手数が最多の12名となった109kg級には、前回大会で96kg級2位の主将・牧野達樹選手(生物資源科学部・4年)と、全日本ジュニア選手権102kg級2位の佐久間武文選手(スポーツ科学・2年)が出場。階級を大きく上げての挑戦となった牧野選手は、「体重を増やして維持すること、なおかつ動ける体に仕上げることにとても苦労しました」と話した。
試合後に「1週間前ぐらいからずっと緊張していました」と明かした佐久間選手だが、1本目126kg、2本目130kgを落ち着いて決めて、3本目は134kgを申告。バーベルに手をかけて一呼吸置き、一気に頭上まで挙げて成功のブザーが鳴ると雄叫びを上げた。また、緊張感のある面持ちで登場した牧野選手も、1本目128kg、2本目133kgを成功させ、3本目の136kgもきれいに決めると、晴れやかな表情を見せた。スナッチの試技を終えて、1位・早稲田大・柏木選手(140kg)に続き、2位・牧野選手(136kg)、3位・佐久間選手(134kg)、その他に130kg台を記録した選手が3名おり、接戦の様相を呈していた。
クリーン&ジャークで先に登場した佐久間選手は、157kgを手堅く決めると、2本目はジャークで少し体がぶれながらも、自己ベストタイの162kgを見事に差し切る。さらなる記録更新を狙った167kgの試技では、見守るチームメイトから「頼む」と祈るような声が漏れる中、バーベルに手をかけた佐久間選手は心を落ち着かせるように静止。次いで、一気にクリーンへ入り、そのまま乱れることなく差し切ると、本学陣営から大きな拍手が巻き起こった。他校の選手がクリーン&ジャークの試技を終える中、牧野選手は優勝を確定させる2本目176kgに挑み、きっちりと成功を収めると、コーチ陣も手を叩いてその貢献を称えた。さらに連続試技となった3本目は自己新かつ大会新記録となる187kgに挑戦。しっかり時間をとってのクリーンから、気合いと共にバーベルを頭上に持ち上げると、足の戻しの際に体がぶれるも何とか踏ん張って差し切った。バーベルを下ろした牧野選手は、拳を突き上げて喜びを表し、ホッとしたような表情を見せた。
1位・牧野選手と4位・佐久間選手で合わせて38点を獲得し、団体得点は合計170点。あと1種目を残した時点で、後を追う大学の逆転は不可能となり、本学の団体優勝が決まった。

迎えた最終種目109kg超級には、「チームがここまで良い流れで来ていたので、あとはしっかり締めようと思いました」と意気込んだ渡邉将太選手(文理・2年)が出場。スナッチ1本目は124kgを申告し、プラットフォームに昇ると、両肩と両足首をほぐすように動かしてからバーベルをつかみ、スムーズに頭上まで挙げ切った。2本目も成功させた後、3本目には自己ベストタイの130kgに挑み成功すると、雄叫びを上げて、出迎えたコーチに会心の笑みを見せた。
クリーン&ジャークでは1本目165kgを成功すると、大きく重量を上げた2本目172kgではバーベルを持ち上げて沈み込んだ際、後ろによろけてしまい失敗。「2本目を成功させて3本目で上を狙いたかったので、もったいないミスでした」と悔しさを滲ませた。チームメイトからの大きな拍手で迎えられた最終試技では、再度172kgに挑戦。今度は肩の位置まで問題なく持ち上げて、まっすぐ差し切ると、成功を示す白いランプが灯った。重量が表示された電光掲示板を振り返りながら小さくうなずき、「ありがとうございました」と一礼。トータルで302kgの4位と健闘し、13点を獲得した。

本学は出場した8階級10選手がいずれも期待に違わぬ好成績を残し、合計183点を獲得。最終種目で追い上げを見せた2位・九州国際大学(150点)に大きく差を付けて、見事8年連続21回目の総合優勝を達成した。上級生のみならず、下級生を含めた選手全員が輝きを放った今大会は、本学の伝統が着実に下の世代へ継承されていることを感じさせ、来シーズン以降の連覇を予感させるものとなった。

【牧野達樹主将】
今シーズン、新型コロナウイルス感染症が拡大しましたが、本学は幸いにも体育館と寮が併設されている環境にあったので、大きな影響を受けることなく、練習を積むことができました。コロナにめげず、万全の準備ができたことにより、本学の8連覇と個人優勝という結果につながったのだと思います。
4年間を振り返ると、毎年怪我に悩まされてきたというのが一番です。今大会も半月板が割れている状態で出場しましたが、コーチやスタッフ、治療院の方々にケアをしていただきながら、最後まで選手として活動できて、本当に感謝しています。
主将になってからは重量挙部をまとめていくために、しっかり意思表示をして、共感してくれる仲間を増やしていく一方で、間違いを指摘してくれる存在も大切にして務めてきました。来シーズン以降、後輩たちも団結して、王者日大としての誇りと9連覇への挑戦心を胸に、頑張ってもらいたいです。

【難波謙二監督】
団体戦は、出場する10名の選手がひとつになることが大切で、1人でも崩れてしまえば、勝利につながらないという難しさがあります。そうした中で、選手はもちろんですが、コーチ・スタッフも含めて一丸となって、優勝に向かい意識を集中させた結果、皆が遺憾なく力を発揮して、8連覇を達成することができました。
今季はコロナ禍でも、選手たちが主体的に対策を考えて活動してくれたので、頼もしく感じました。他の大会が中止になっても、今できることは何か、自ら考えながら練習を積んでこられたので、結果に結びついたのだと思います。
また、学生スポーツである以上、今までと変わらず勉強にも力を入れたうえで、重量挙部の活動に取り組み、1人の人間としてちゃんと評価されるようになってほしいので、そのためにも我々が環境をしっかり整えて、学生それぞれの成長、そして、来年以降の連覇へとつなげていきたいと思います。

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