CLUB REPORT:ラグビー部 「飛躍への変革 −ハリケーンズの現在地−」

昨年の大学選手権で3年連続ベスト8に入り、かつての輝きを取り戻しつつある本学ラグビー部。だがそれは、ベスト4の壁を越えることができずにいるという現実でもある。創部100周年まであと6年となった今シーズン、もう一段高いステージに立つための新たな“戦力”として、元日本代表主将の菊谷崇氏をヘッドコーチとして迎え入れた。新体制での始動から約3ヶ月、チームはこれまでと何を変え、学生たちにはどんな変化が現れているのだろうか。
※2022年6月取材。
2022年2月下旬、都内で行われた菊谷崇氏のヘッドコーチ(HC)就任記者会見には、多くの報道陣が集まった。かつて日本代表主将としてW杯出場も経験するなど輝かしいキャリアを持ち、スポーツアカデミー事業を展開する実業家でもある菊谷氏が、初めて大学生チームの指導者となることに、大きな関心が集まっていた。これまで各所から届いていた様々なオファーをすべて断っていたという菊谷氏だが、「チームがさらに上を目指すためには“主体性”が必要。菊谷さんの経験とコーチングスキルによって、チームのレベルアップを図りたい」という中野監督の熱い思いに応えてHC就任を決断。「学生たちとしっかりコミュニケーションをとって、彼らが主体的に行動できる環境づくりをしていきたい」と決意を述べた菊谷HCは、「一方的に『やれ』と言うのではなく、学生から『こうしたらどうだろうか』と発言できるような空気をつくっていきたい」と、指導者と学生の新たな関係性を構築する方向性を提示していた。それから3ヶ月が経った6月上旬、ラグビー部の活動拠点・アスレティックパーク稲城で、中野克己監督と菊谷ヘッドコーチにチームの “今”を聞いた。

少しずつ見えて来た変化の兆し。

 3ヶ月ほど経ちましたが、実際に学生たちの様子を見て、どんな印象を持ちましたか?
菊谷 私が大学生の時に比べたら、みんなピュアですね。新しいシステムをやろうとすると、戸惑うところも多いと思いますが、真摯に向き合ってくれているというイメージはあります。
中野 スタートはお互いにどうなんだろうっていうような感じでしたが、3ヶ月経ってようやくこちらの意図や考えていることが、スムーズに学生に伝わるようになってきたかなという感じですね。

新しい取り組みは何から始めたのでしょう?
菊谷 130人いるので全員とはできませんでしたが、スタッフを含む何人かの学生にインタビューをしました。今はメンバー選考の時期でもあるので、質問があればいつでも受け付けると言っていますが、質問に来る学生はまだ少ないですね。思ったことをちゃんと発言できなかったりというのもありますが、それも練習だと思います。あとは心理的安全性が確保されているかというのもすごく大きい。その両方が、コミュニケーションを難しくする要因かなと思うので、徐々にしゃべるトレーニングをしないといけないですし、私との間で発生する心理的安全性も確保しないといけないと思っています。一方、学生スタッフとはコミュニケーションがよくとれています。なるべくスムーズに仕事ができるような環境を作ってあげたいと思っていますし、私自身、彼らがいてくれてとても助かるので、同じ目線で見られるように工夫してやっています。

─ ミーティングでは選手たちに何を伝えよう、やらせようとしているのでしょう?
菊谷 今は春のシーズン中なので、普段やっているラグビーの戦術に対して「できている・できていない」というのを提示しています。それに対する理解が深まった時に、自分で「できている・できていない」というのを判断してもらいたい。そういう主体的な部分を徐々にサポートできればと思っています。特に4年生は自分たちのチームだという思いがあるでしょうから、「意義目標」に対して「自分たちはどういうチームを作りたいか」というところから、私や監督が動き出しているので、学生たちも動かなければいけないということで、ちょっとずつアクションが始まっているかなと思います。

学生たちの反応や様子は変わってきましたか?
菊谷 知らない人同士がお互いにわかり合うというプロセスから始めなければいけないので、そこでお互いに解決しなければいけない問題が現れています。コミュニケーションしていく中で、主体的かどうかという点では、意義目標に対してのプロセスだったり、あるいは寮生活や上下関係だったりなどはまだこれからでしょうね。
中野 かっこよく言えば「やらされる」から「自らやる」ということに変わってきましたが、まだ目に見えてというレベルではなく少しずつ…。私自身はいい手応えはあるので、このやり方で進んでいって、学生が持っている既成概念が少しずつ壊れていき、もう少し上手くコミュニケーションがとれるようになれば加速度も上がるんじゃないかと思いますが、主体性というところはもっと出してほしいですね。
菊谷 練習は午後5時半に始まりますが、例えば4年後くらいに、授業が早く終わった人や授業のない4年生らが何人かここ(パフォーマンスセンター)で1時間前から自主練していて、ある程度仕上げた状態でグラウンドに出て来るようになっていれば、良いチームになったなって(笑)。4年生は半年も過ぎれば社会人として世間に出るし、プロになる子もいますから、時間の使い方とか、今自分をどう鍛えるのか、練習前に何をしないといけないかとか考えてもいい。グラウンドに30分前、15分前に来て、パスをしたりワチャワチャしてから練習しましょうっていうのではまだまだ…。

練習にもメリハリをつけているとのことですが?
菊谷 怪我人を除いて100人余りのメンバーを見るので、時間が限られている中でいかに落とし込みをして、いかにテスト時間・稼働時間をつくるかを計算しながら、練習の強度にメリハリをつけるのが重要なポイントだと考えています。練習は長くても2時間で終わりますが、強度が高い2時間というのは本当にしんどいと思います。ウエイトトレーニングもありますが、24時間のうちの2時間しか練習していないので、学業以外にどう積極的に時間を使うのか。そういうところを見せてあげることによって、今週はハードウィークだから今日はウエイトをやめておこうとか、ミドルウィーク・ローウィークなので下半身を鍛えてもいいかなとか、学生が自分でトレーニングするための目安になると思うので、そこは提示してあげるようにしています。

主体性を引き出すためのアプローチは?
菊谷 その都度でいろいろなアプローチをしていきたいと考えていますが、授業や寮生活といった内側のベクトルにあるものに対してもう少し主体的に動いてほしい。単位が足りず、授業のために練習に出られませんてことにならないよう、1・2年生の時から自分をプランニングして単位を取らないといけない。そういう配分も見ながら話をしていますし、学生にとっては厳しいかもしれないですが取り組むべき大きなポイントです。順調には行かないところもありますが、学生が育っていくという意味ではそれもまた1つの良い壁なのかなと思いますね。

中野 練習の最後に輪になってクロージングする時、今までだと私たちが話をして「明日からこうして頑張ろう」で終わっていたんですが、今は必ず学生たちに「今日どうだった?」と尋ねて答えさせます。そして、今日はこうでここが上手くいかなかった、じゃ次は?っていう会話をして、「次はこうしようと思います」っていうのを引き出してから終わります。何回かやっていくうちに、彼らのしゃべり方もだんだん良くなってきて、クロージングの考え方ができてきたと思うので、その点は去年と大きく変わってきました。ただ、まだ質問を当てられたくないからと、明らかに人の陰に隠れるような子もいますが、繰り返しやっていく中でいずれは彼らにもマインドセットができていくんじゃないかなと思いますね。

コミュニケーションする上でのポイントは?
菊谷 生活面のところは中野監督にお任せして、僕はラグビーのところで疑問に答えるというのが1つあります。そして心理的安全性を確保してあげることも必要かなと。システムを遂行できているかできていないかというところに対して、コーチとしてのその日の目標設定があるので、たとえクリアできていなくても私の中で問題がないと捉えられれば良くて、そこでミスが起こったからこうしないでおこうとかとネガティブなマインドにならないように、フォローする感じで問いかけするようにしています。

これまでの指導経験を踏まえた上でのやり方ということでしょうか?
菊谷 そうですね。学生がついてくるというエビデンスはないですけど、「主体的に取り組んでいくための環境をデザインする」というのが世界的な流れですし、日本スポーツ協会としてもそこを打ち出しています。要は人が育たないで関係が逆転してしまうと「やらされる」ということになってしまい、そうなると強い言葉や体罰だったり、「やらない」ことに対して何かしら課さないといけない。そうならないように目先のことをやるとした場合、強化としては今年1年の優勝を目指すといった一時的なものと、学生の今後の人生も含めてサポートしてあげるという考えでは大きな差が生まれてきます。そういう意味では、しっかりと主体性を持って動ける人材、「人として活動できる人」を育てるっていうことをやっていきたいし、そのプロセスの通過点に大学があり、大学の優勝があると思っています。そういう部分が今までとはアプローチが違いますね。

学生たちの態度・行動に対して叱ることは?
菊谷 人はミスをするものだと思っているので、掃除を忘れたり、遅刻したりというのはあると思います。だから私は、練習に遅れてきてもそれを特に咎めたりはしません。遅れることが悪いことは本人が一番感じていると思うし、遅刻が多ければ試合に出さないだけなので…。逆に授業があって遅れて来た時にわざわざ「すみません」と言ってくる子もいますが、謝る必要はまったくなくて、そういう時こそ自分がやるべきことをちゃんとやり、どのようにグラウンドで表現するのかっていうところが一番重要なので。学生たちもそういう部分では私が怒っていない、怒らないっていうのを徐々に感じてくれているかなと思います。ただ、グラウンドでチームメイトが一生懸命やっている時にサポートできなかったり、チームとして活動することができていなかったりした時には喝を入れました(笑)。

新しい取り組みによって、意外な一面を発見したことなどはありますか?
中野 けっこう意外な子が前向きに取り組んでいたりというのがあります。学生たちは疑問があればグラウンドでも菊谷HCに質問していますが、それが試合に出ているメンバーばかりではなく、意外にも入部してきたばかりの1年生の子も「菊谷さん」って寄ってきたりします。そういう姿を見ていると、来年以降にどういうことが起きるのかっていうのがすごく楽しみになる。大学での練習は短いのでそれも新鮮に感じていると思うし、菊谷HCのようなキャリアを持つ人が教えていることの価値をそれぞれが感じていると勝手に想像していますが(笑)。これが良い方向に進んで行って、自分たちで取り組む主体性っていうものを本当に身に付けた時、どういう変化が起きるのか。まだまだこれからですが、そこは期待しています。
菊谷 昨年までと違って、1年生も最初から練習に入ってもらっていますし、良い意味では打ち解ける時間も早い。私としては名前を覚えるのが大変ですが、どういう選手だというのは理解しています。反面、どうしても1年生はやらなければならないことが多いので、ふんわりしているという感じも出てきている。そういう中で主体的に動くっていうことを教えてチームを作っていき、新しい日大ラグビー部としての道を拓いていこうとしています。ただ、丁度3ヶ月経っていろいろな問題も出てきたし、慣れも出てきた。授業も本格的に始まったし、ラグビーも試合が続いてと盛りだくさんになっているので、今が一番大変な時期かなと思います。だからあまり環境をガラッと変えていくことをせず、夏の合宿辺りまでに何回かアクションを起こしていければと考えています。

長期間のスパンで考える中で、最初の1年のテーマは?
菊谷 私の契約期間内でということを前提として、主体性という面で言えば、リーダーとなる学生たちを含め今年1年でどこまでアプローチできるかというところです。現状、ポジションによっては3年生にアプローチしていて、この1年間で来年の上級生たちがどこまで成長するかっていうところが重要だと思います。それによって、その次をどうアプローチしていくかというところも考えたいと思います。また、今年の目標の1つとしては、外部に向けて日大ラグビー部として何かできる環境をつくることにチャレンジしようかと思っています。

菊谷HCについて「気さくで話しやすい人」と話す平坂桃一主将(スポーツ科・4年)と、「指導者と学生の枠を越えて話をしてくれる」と言う石田稜太郎マネージャー(文理・4年)。この3ヶ月を振り返り、「練習でも、練習以外でも前向きに取り組む学生が増えました。練習の中では自分たちで考える場面が多くなり、目標を提示してもらえるのでどういう姿勢で取り組めばいいのかがわかりやすい。学生同士で話し合って、コーチが気づかないところを提案することもあります」(平坂)、「アナリスト担当の学生がプロチームの仕事を見せてもらうなど、スタッフ陣も学ばせてもらっています。目標が常に更新されるので、現状に満足することなくモチベーションを保って取り組んでいます」(石田)と、チーム内の確かな変化を実感していた。

菊谷HCについて「気さくで話しやすい人」と話す平坂桃一主将(スポーツ科・4年)と、「指導者と学生の枠を越えて話をしてくれる」と言う石田稜太郎マネージャー(文理・4年)。この3ヶ月を振り返り、「練習でも、練習以外でも前向きに取り組む学生が増えました。練習の中では自分たちで考える場面が多くなり、目標を提示してもらえるのでどういう姿勢で取り組めばいいのかがわかりやすい。学生同士で話し合って、コーチが気づかないところを提案することもあります」(平坂)、「アナリスト担当の学生がプロチームの仕事を見せてもらうなど、スタッフ陣も学ばせてもらっています。目標が常に更新されるので、現状に満足することなくモチベーションを保って取り組んでいます」(石田)と、チーム内の確かな変化を実感していた。

“人間力”も主体性の先にある。

競技スポーツ部では今、「インテグリティ」が1つのキーワードとなっていますが、ラグビー部として“人間力”というものをどう捉えているでしょうか?
菊谷 ひと口に“人間力”と言っても、人それぞれによって捉え方が違うと思いますが、「主体性を持つ」ということが日大としての人間力のポイントなのかなと考えています。ラグビーをして上手くなっていくと同時に、物事に対して自分で考えて行動するということ、例えば話すということも実際にしゃべらないと上手くならないし、そういうところをこちらからアプローチし続けてあげるっていうのが重要だと思います。アクティブラーニング的に見れば、講義は大体5%くらいしか頭に残らず、あとの95%は忘れてしまうので、そういうのを繰り返しながら徐々に学生にインプットしていくのが、主体的に伸ばすための1つの方法だと思います。
中野 私としては“人間力”とは「何か1つのことに真摯に真正面からぶつかっていく姿勢」だと捉えていて、学生たちにそういうものを育てたいと思いますし、そういうものを持っている人が、いわゆるトップアスリートになるんだろうなと。でも、それだけでは社会で生きていけないし、アスリートだって50・60歳までできるわけじゃないので、日常の生活と競技のはざまで、それぞれに主体性を持って真摯に向き合うことができれば、すごく良い人生を過ごせるんじゃないかなと思っています。

SDGsの視点からの取り組みとして考えていることはありますか?
中野 以前からラグビースクールへのグラウンド貸し出しをやっていましたが、今年の4月からようやくスクールの活動が再開しました。今はまだ施設の利用だけですが、いずれは学生にスクール生を指導させるというのをぜひやりたいと思っていますし、そういうところがすごく求められると思うので、コロナの状況とにらめっこしながら、少しずつ活動を広げていきたいですね。
菊谷 ゴールデンウィーク中には、私の会社のアカデミーが主催した中学生向けのラグビーイベントを学生スタッフのメンバーが手伝ってくれました。せっかくならスタッフとして参加するよりも、ふれあった方が楽しいからと一緒にプレーしてくれて、「中学生、こんなに上手いんですか?」って。分析チームは、ドローンで撮った練習風景を編集して、子どもたちのハイライトなどをまとめた動画を作ってくれました。コロナ禍で保護者の見学を禁止にしていたので、「こんな練習をした合宿でした」と動画を保護者に見てもらえたし、学生たちも中学生とチームトークをすることで、しゃべることの大切さをお互いに学べたと思います。それらはみんな学生たちが主体的にやっていることだったので、本当に良い経験だったなと思います。

グラウンドの選手だけでなく、学生スタッフにも学びの機会を設けているそうですね?
菊谷 分析チームの学生3人ほど、リーグワンの横浜キヤノンイーグルスに行って、プロのアナリストがどんな仕事をしているのかを見てもらいました。その上で今年、自分たちでどういう分析の情報を出せるかというのを僕も入って話し合いました。たぶん選手よりも学生スタッフの方が、私と多く話をしていて、何かをシェアできているように思います。試合ごとにタックル成功率をパパッと出してもらったり、そういうことができるようになったので、本当に助かっています。

中野 そういうところのリソースを菊谷HCが持ってきてくれました。選手だけにスポットが当たるようなチームよりは、選手を支える人たちの仕事にもスポットが当たるようなチームになってほしいし、そういう部分の価値についての意識は、むしろ選手たちよりもはるかに上がってきました。サポートする側を志す学生がもっと増えてほしいという思いもあります。

まだまだ、これから。
それでも結果はついてくる。

日本一のディフェンスをつくりたい。

5月の終わりに、東海大と試合をして敗れはしましたが、手応えとしてはどうだったのでしょうか?
菊谷 今シーズン最初の公式戦で、点差がついて負けるっていうことはまだまだなんですが、自分たちの取り組みを試合の中でやろうとしているということが重要で、その部分では手応えを感じました。試合だけじゃなく、練習からですが、そこに対して真摯に向き合ってくれている、活動してくれているっていうことは、成果として現れているんじゃないかと思います。相手の調子が良い悪いに関わらず、日大ラグビー部としての目標設定を変えるわけではなく、僕らが積み重ねていくものも変わらないので、そういう意味で良い試合だったなと思います。

試合が続く中で、何かテーマを設けていたりするのですか?
菊谷 今はシステムというか、武器を作りたいなと思っています。昨年はモールという強い武器を持っていましたが、フォワードの中心だった4年生たちが抜けたので、今年はボールをしっかり動かそうというアタックのラグビーでいこうと。しっかり前に出てプレッシャーをかけるためのアタックのディフェンスをやりましょうということで、まずは “日本一のディフェンス”をつくりたいという話を学生たちにもしています。「日本で一番強いディフェンス」「日本で一番前に出るディフェンス」というテーマに対して、8月までにどこまで近づけるかっていうチャレンジですね。例えば、東海大戦のデータを見ると、試合より練習の方がよく頑張れていました。毎週水曜日は最もハードな練習をする日なんですが、練習の強度が高いから走る量・ボールを奪う量は高いけれど試合の方が楽にできたことで、力を出し切れなかったというところもあります。そういう部分をこれからの試合に向けてどこまで埋められるかっていうのが、私にとっても選手にとってもチャレンジかなと思います。まずは自分たちの強みに自信を持つこと。夏の菅平合宿に行く前に学生がインタビューされた時、「俺たちのディフェンスは日本一なんだ」と答えられるようになっていたら、秋のシーズン前の目標はクリアかなと思いますね。

改めてHCとしての役割をどう考えていますか?
菊谷 私は、いかに学生を大きな意味で楽しくさせてあげられるかっていうのが役割だと思っています。そのために、コーチ全員が一緒になってどう取り組んでいけるかということもありますし、そういう意味でも環境づくりの大切さを改めて感じているところです。学生個々へのアプローチだけではなく、日大ラグビー部に関わっている全員、学生スタッフやコーチ、選手にどういう環境をどうやって作るのかというチャレンジは、想定していたイメージ通りに来ていますが、これからも一歩一歩前に進んでいきたいと思っています。
中野 私たちは昭和の時代に生きてきて、どちらかというと高圧的な指導をされることが多かったのですが、指導する側になった時になんとなくそこを引きずってしまっていました。しかし、菊谷HCはそういうところがない。心理的安全性とか、学生とフェアであるとか。私自身、一番最初に話した時からそうしたところにものすごく興味があって、それをぜひうちの学生にやってほしかったというのがあるので、現状の形にすごく満足しています。マイルストーンだけはちゃんとできているので、そこはきちっと計画通りに進んでいますし、学生がコミュニケーションをとってついてきてくれる環境ができつつあるので、必ず結果がついてくると。今はそう信じて日々取り組んでいます。
新たな挑戦が始まって3ヶ月、中野監督と菊谷HCは同じ言葉を何度も口にした─「まだまだ、これから」。それはチームの伸びしろを感じ、その可能性に期待を込めたラグビー部員たちへのエールでもあるように聞こえた。
 

Profile

中野 克己[なかの・かつみ]
京都府出身。1987年法学部卒。’85年のリーグ戦制覇時に選手として活躍。2016年にヘッドコーチ、 ’17年に監督に就任。’19年に関東大学ラグビーリーグ戦グループで2位に入り、6年ぶりに大学選手権へ出場。以降、3年連続で大学選手権ベスト8に導く。

菊谷 崇 ​[きくたに・たかし]
1980年生まれ。奈良県出身。大阪体育大学からトヨタ自動車ヴェルブリッツに入団。’05年に7人制日本代表としてW杯に出場し、15人制の日本代表にも初選出。’08年からは代表主将を務め、’11年にW杯ニュージーランド大会に出場(通算代表キャップ数68)。キヤノンイーグルス、イングランド・プレミアシップのサラセンズでもプレーした。’18年の引退後、スポーツアカデミーを運営する株式会社Bring Up Athletic Societyを起ち上げ、代表取締役を務めている。