【牧野達樹主将】
今シーズン、新型コロナウイルス感染症が拡大しましたが、本学は幸いにも体育館と寮が併設されている環境にあったので、大きな影響を受けることなく、練習を積むことができました。コロナにめげず、万全の準備ができたことにより、本学の8連覇と個人優勝という結果につながったのだと思います。
4年間を振り返ると、毎年怪我に悩まされてきたというのが一番です。今大会も半月板が割れている状態で出場しましたが、コーチやスタッフ、治療院の方々にケアをしていただきながら、最後まで選手として活動できて、本当に感謝しています。
主将になってからは重量挙部をまとめていくために、しっかり意思表示をして、共感してくれる仲間を増やしていく一方で、間違いを指摘してくれる存在も大切にして務めてきました。来シーズン以降、後輩たちも団結して、王者日大としての誇りと9連覇への挑戦心を胸に、頑張ってもらいたいです。
第66回全日本大学対抗ウエイトリフティング選手権大会 総合優勝


新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、例年より遅い2021年3月5日(金)から3日間にわたり、無観客での開催となった第66回全日本大学対抗ウエイトリフティング選手権大会(1部)。昨年、7連覇を飾った本学は、全10階級のうち8階級に選手がエントリーし、優勝3名をはじめ7階級で表彰台に上がるなど、団体得点を着実に重ねて、見事8年連続※121回目※2の総合優勝を達成。重量挙部の伝統と誇りが、チーム1人ひとりに息づいていることを結果で証明した。
※2 大会最多記録。2位は法政大・18回、3位は日体大・11回。
※1 プラットフォームに置いているバーベルを一気に頭上まで持ち上げる動作。
※2 バーベルを肩のラインまで一度上げて静止(クリーン)、次いで一気に頭上へ持ち上げる(ジャーク)動作。
埼玉県上尾市・スポーツ総合センターで行われた初日の55kg級には、インカレ4年連続出場となる久保海斗選手(スポーツ科学・4年)と2月の全日本ジュニア選手権で2位となった君島一成選手(スポーツ科学・1年)の2名が出場。「いつもの試合と異なり団体戦なので、ミスをしてはいけないという緊張感がありました」と先陣を切った君島選手はスナッチ1本目88kg、2本目92kg、3本目では自己ベストまであと1kgに迫る94kgを成功させ、流れをつかむ。続いてプラットフォームに昇った久保選手は「緊張というより、楽しみのほうが強かったです」と経験に裏打ちされた自信を持って試技に臨み、1本目は95kgからスタートし、2本目98kg、そして3本目に自己ベストの101kgを挙げ、スナッチを終えて3位につけた。
クリーン&ジャークに入り、君島選手は3本目129kgのクリーンで膝を伸ばしきれずバーベルを落としてしまい、記録は2本目に成功した126kg。トータル220kgで5位となった。「試合中に脚がつることが多いので、対策をして臨んだのですが、今回もその症状が出てしまい、最後にミスをしていまいました」と反省した。
一方、久保選手は3本目で自己ベストタイとなる133kgを挙げて大会記録を樹立。優勝には惜しくも届かなかったが、トータル234kgで2位となり「満足のいく記録が残せました」と振り返った。「初日は良い流れづくりが重要だと思っているので、順位はもちろんですが、成功率も意識していました」との言葉通り、6本全ての試技を成功させた久保選手と、1年生ながら健闘した君島選手の合計で31点を獲得し、翌日以降に良い形でバトンをつないだ。

スナッチ3本目で94kgを挙げた君島選手。「久保先輩のように55kg級を引っ張っていく選手となり、来シーズンはもっと良い成績を残したいです」

クリーン&ジャーク3本目で133kgのバーベルを差し上げる久保選手。「今までのインカレでは同階級にチームメイトがいなかったので、君島の存在は刺激になりました」
メダルを掲げて笑顔の久保選手。「山あり谷ありの4年間を過ごしてきました。2年時と3年時のインカレは腰を痛めた状態での出場でしたが、最後に万全のコンディションで臨むことができ、2位という結果に結びついて良かったです」
メダルを掲げて笑顔の久保選手。「山あり谷ありの4年間を過ごしてきました。2年時と3年時のインカレは腰を痛めた状態での出場でしたが、最後に万全のコンディションで臨むことができ、2位という結果に結びついて良かったです」
「コーチに言われた重量を、しっかり取ることだけを意識していました」と他校を意識することなく、他の選手がスナッチの試技を終えた129kgから登場すると、2本目135kg、3本目142kgも成功させ、別格の強さでトップに立つ。
クリーン&ジャークにおいても、ほとんどの選手が試技を終えた160kgから開始し、1本目をあっさりと決めて優勝を確定。3本目では大会記録となる175kgを挙げ、トータルでも大会新の317kgを記録する圧勝により、本学は24点を獲得した。
「ベスト記録(スナッチ145kg・クリーン&ジャーク180kg)の更新を狙うこともできましたが、それよりも6本確実に成功させて、後続の選手たちが良いイメージで試技に臨めればと思いました」と4年生としてチームを牽引するその姿勢を、プラットフォーム上で体現してみせた。

山根選手はスナッチ3本目で142kgを挙げ、2位の選手とは14kgの差をつけた。

表彰台に上がった山根選手(中央)。「1年時からさまざまな大会で成績を残してきましたが、それで満足せず、しっかり記録を伸ばしてきました。『やはり山根は強いな』と思わせることができたと思います」
さらに「練習ではジャークが安定しておらず、試合でもミスが多かった」と状態の悪さを口にしていたクリーン&ジャークも、スナッチ同様、他校の試技が終わった後の164kgからスタートし、これを確実にクリアして早々に優勝を決めた。続く180kgは差しきれず、「6本成功を目指していたので、もったいなかった」と悔しさを滲ませたが、「結構体が動いていたので」と3本目には自己ベストとなる185kgに挑み、これを見事に差し切る。トータル335kgの大学新記録を樹立する圧倒的勝利で、チームに24点をもたらした。

「調子が悪かった」というクリーン&ジャークの3本目を成功させた宍戸選手。

2位と46kg差をつけて優勝した宍戸選手(中央)。「インカレには1年時から出場していましたが、ずっと優勝できず悔しい思いをしてきました。だからこそ、奮い立って、ここまで記録を伸ばせたのだと思います」
表彰台を目指して臨んだクリーン&ジャークでは、1本目160kgを決め、2本目164kgも持ちこたえて差し切る。3本目は自己ベスト更新を狙った169kgに挑み、粘りながらクリーンまで持っていったものの、ジャークで足を戻しきれず失敗し、天を仰いだ。しかし、トータルで303kgの3位に入り、15点を獲得した。

気合いの一声を上げて挑んだ、持田選手のスナッチ3本目。

2度目のインカレで初の表彰台入りを果たした持田選手。「昨年は記録が伸び悩み、苦しい時期を過ごしてきました。今大会でやっと少し抜け出せたかなと思います。来年はもっと力を付けて、日大のエースと言われるような選手になりたいです」
表彰台を射程圏内として臨んだクリーン&ジャークは、2本目で171kgに成功して3位以上を確定させると、3本目は自己ベストとなる182kgに挑戦。クリーンに入る際、沈み込んだところで地面に臀部が触れそうになるも、しっかりと粘り、ジャークで持ちこたえて見事に成功。クリーン&ジャークの順位を2位、トータルでも323kgの2位(19点)となる活躍を見せた。

スナッチ3本目を決めて、チームメイトの大きな拍手に応じる不破選手。

日本大学藤沢高校出身の不破選手。高校時代のコーチからは「インカレに臨む日大の雰囲気はピリピリしていてすごいぞ」と聞いていたという。「日大特有の環境の中で、良い1年を過ごすことができました。先輩方のような格好良い選手になって、日大を盛り上げていきたいです」
前日から気温が10℃近く下がり、冬の寒さを取り戻した大会最終日。全日本学生個人選手権で優勝、全日本選手権で表彰台に上がるなど、好調を維持してきた福居尚弥選手(スポーツ科学・4年)が102kg級に出場した。「絶対優勝するぞという気持ちでした」と今大会に対する思いは強く、1本目132kg、2本目136kgともに20秒ほどで成功。3本目141kgは頭上まで挙げたバーベルを静止できず、後方に落としてしまったが、2本目の記録で2位につけた。
逆転を狙ったクリーン&ジャークでは、2本目に大会新記録となる176kgを挙げたものの、続く法政大・田宮選手が177kg、九州国際大・松本選手が178kgとさらに記録を更新し、ハイレベルな争いが繰り広げられた。勝負を賭けた最終試技、福居選手は185kgを申告し、大きく息を吐き出してバーベルを持ち上げたが、膝を伸ばしきれず前方へ落下させてしまう。首を傾げ、悔しそうな表情を浮かべながら、プラットフォームを後にした福居選手だが、トータル312kgで3位に入り、19点を獲得。「初めてインカレに出る選手もいますが、練習してきたことをこの会場で発揮してほしい」と後に続く選手に思いを託した。

クリーン&ジャーク2本目、バーベルをキャッチする福居選手。

「自己ベストの更新と優勝を目指していたので、とても悔しいです」と話した福居選手。「試合前から気持ちが昂りすぎて、集中できていない部分もありました。しかし、団体のことを考えて得点を獲得できて良かったです」
試合後に「1週間前ぐらいからずっと緊張していました」と明かした佐久間選手だが、1本目126kg、2本目130kgを落ち着いて決めて、3本目は134kgを申告。バーベルに手をかけて一呼吸置き、一気に頭上まで挙げて成功のブザーが鳴ると雄叫びを上げた。また、緊張感のある面持ちで登場した牧野選手も、1本目128kg、2本目133kgを成功させ、3本目の136kgもきれいに決めると、晴れやかな表情を見せた。スナッチの試技を終えて、1位・早稲田大・柏木選手(140kg)に続き、2位・牧野選手(136kg)、3位・佐久間選手(134kg)、その他に130kg台を記録した選手が3名おり、接戦の様相を呈していた。
クリーン&ジャークで先に登場した佐久間選手は、157kgを手堅く決めると、2本目はジャークで少し体がぶれながらも、自己ベストタイの162kgを見事に差し切る。さらなる記録更新を狙った167kgの試技では、見守るチームメイトから「頼む」と祈るような声が漏れる中、バーベルに手をかけた佐久間選手は心を落ち着かせるように静止。次いで、一気にクリーンへ入り、そのまま乱れることなく差し切ると、本学陣営から大きな拍手が巻き起こった。他校の選手がクリーン&ジャークの試技を終える中、牧野選手は優勝を確定させる2本目176kgに挑み、きっちりと成功を収めると、コーチ陣も手を叩いてその貢献を称えた。さらに連続試技となった3本目は自己新かつ大会新記録となる187kgに挑戦。しっかり時間をとってのクリーンから、気合いと共にバーベルを頭上に持ち上げると、足の戻しの際に体がぶれるも何とか踏ん張って差し切った。バーベルを下ろした牧野選手は、拳を突き上げて喜びを表し、ホッとしたような表情を見せた。
1位・牧野選手と4位・佐久間選手で合わせて38点を獲得し、団体得点は合計170点。あと1種目を残した時点で、後を追う大学の逆転は不可能となり、本学の団体優勝が決まった。

スナッチ3本目の試技に挑む佐久間選手。

クリーン&ジャーク3本目を決めて、感情を爆発させた佐久間選手。「試合前から右足のハムストリングが肉離れしていたのですが、チームのサポートもあり、良い結果を出せました。日大は自分を高められる環境です」


クリーン&ジャーク3本目で粘りを見せて成功した牧野選手。「もう言うことなしです」と結果を振り返り、「最後に大きな花を咲かせて、後輩に良い姿を見せられたかなと思います」と笑みをたたえた。
クリーン&ジャーク3本目で粘りを見せて成功した牧野選手。「もう言うことなしです」と結果を振り返り、「最後に大きな花を咲かせて、後輩に良い姿を見せられたかなと思います」と笑みをたたえた。
クリーン&ジャークでは1本目165kgを成功すると、大きく重量を上げた2本目172kgではバーベルを持ち上げて沈み込んだ際、後ろによろけてしまい失敗。「2本目を成功させて3本目で上を狙いたかったので、もったいないミスでした」と悔しさを滲ませた。チームメイトからの大きな拍手で迎えられた最終試技では、再度172kgに挑戦。今度は肩の位置まで問題なく持ち上げて、まっすぐ差し切ると、成功を示す白いランプが灯った。重量が表示された電光掲示板を振り返りながら小さくうなずき、「ありがとうございました」と一礼。トータルで302kgの4位と健闘し、13点を獲得した。
クリーン&ジャーク3本目を差し切る渡邉選手。「クリーンの引きとキャッチが課題として残りました」と反省し、「今後は階級を1つ下げて109kg級でインカレ優勝、そして、9連覇に貢献したいです」と次を見据えていた。
クリーン&ジャーク3本目を差し切る渡邉選手。「クリーンの引きとキャッチが課題として残りました」と反省し、「今後は階級を1つ下げて109kg級でインカレ優勝、そして、9連覇に貢献したいです」と次を見据えていた。

表彰式で優勝旗を受け取る山根選手。

優勝カップを受け取る牧野主将。
表彰式後、8連覇ポーズで記念撮影。
表彰式後、8連覇ポーズで記念撮影。


【難波謙二監督】
団体戦は、出場する10名の選手がひとつになることが大切で、1人でも崩れてしまえば、勝利につながらないという難しさがあります。そうした中で、選手はもちろんですが、コーチ・スタッフも含めて一丸となって、優勝に向かい意識を集中させた結果、皆が遺憾なく力を発揮して、8連覇を達成することができました。
今季はコロナ禍でも、選手たちが主体的に対策を考えて活動してくれたので、頼もしく感じました。他の大会が中止になっても、今できることは何か、自ら考えながら練習を積んでこられたので、結果に結びついたのだと思います。
また、学生スポーツである以上、今までと変わらず勉強にも力を入れたうえで、重量挙部の活動に取り組み、1人の人間としてちゃんと評価されるようになってほしいので、そのためにも我々が環境をしっかり整えて、学生それぞれの成長、そして、来年以降の連覇へとつなげていきたいと思います。