1万6378人が桜門巣立つ
映像と歌のサプライズも

令和4年度卒業式

取り組み・活動
2023年04月03日

令和4年度の日本大学卒業式が3月25日、東京・北の丸公園の日本武道館で行われた。1万6378人が桜門を巣立ち、卒業生総数は約125万人となった。

大学院、学部・短期大学部を2部に分け、午前と午後に実施。「学生ファースト」の観点から今回は芸術学部の学生2人が司会を務めた。それぞれ前半では酒井健夫学長が式辞を、林真理子理事長が祝辞を述べ、続いて学位記と学長賞・優秀賞の授与が行われた。

後半ではサプライズ企画として、全学部、通信教育部、短期大学部から名乗り出た在学生と、映像制作会社 BABEL LABEL(代表・山田久人=芸術学部卒)とのコラボレーションによる映像が大スクリーンに映し出された。

続いて、劇団四季の木村智秋さん(芸術学研究科修了)が有名なミュージカルナンバーを披露し、歌で卒業生を祝った。

酒井学長は式辞で「ご卒業おめでとうございます。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う苦境にあってこの日の卒業や修了を迎えられた皆さんに敬意を表します。高い志を持ち、日本大学で体現した『自主創造』を誇りとし、自信を持って大いに社会で活躍し、社会に貢献してください」とあいさつ。

林理事長は「皆さんは『新生日本大学』が送り出す第1期生です。一つの組織が大きく変わり、よみがえろうとしているありさまを身近で見たということを、いつの日か誇らしく思い出していただきたい。教養を友人として、いい人生を歩んでください。またお会いしましょう」と祝辞を述べた。

学業やスポーツで優秀な成績を上げた卒業生には学長賞が授与された。午前の部ではスポーツ科学部の池江璃花子選手(水泳部)らが代表して受賞した。

式のエンディングでは多数のメタルテープが大きな音とともに勢いよく噴射された。ピンクのテープが桜吹雪のように舞い、お祝いムードを盛り上げた。

令和四年度日本大学卒業式  酒井健夫学長式辞 全文

本日ここに、令和四年度日本大学の卒業式が盛大に挙行されるに当たり、日本大学を代表して式辞を申し上げます。

皆さん、御卒業おめでとうございます。皆さんは、御自身のたゆまぬ努力によって、本日、日本大学並びに同短期大学部を卒業され、また大学院の皆さんは、研究科を修了されました。

皆さん方は、在学中、令和元年から始まった世界的な新型コロナウイルス感染症の大きな影響を受けました。本学においても、講義や実習、研究活動に大きな制約を受け、そのためオンライン授業も実施し、皆さん方に負担をお掛けしました。同級生や先輩、後輩と対面での交流が少なく、「学ぶ」モチベーションが下がることも多かったと思います。

このような苦境にあっても、たゆまぬ努力と頑張りによって、本日、卒業や修了を迎えられた皆さんに敬意を表します。本学としましても、教職員が一体となって全力で教育・研究環境の確保に当たりました。御理解いただければ幸いです。過去にはなかったこの貴重な経験を、皆さん方の今後の人生に役立ててください。また、皆さん方を支援し、励ましてこられた御家族をはじめ多くの関係の皆様方に、感謝を申し上げます。

一方、日本大学では、メディアの報道や記者会見を通して御存じのとおり、ここ数年にわたり不祥事が生じ、卒業生の皆さんや御家族の方々に、大変な御心配と御迷惑をお掛けいたしました。一部の役員等が過去に行ったこととはいえ、学長として、おわびを申し上げます。

昨年七月一日に、林真理子理事長と共に、私は学長に就任し、日本大学の新体制が発足いたしました。現在、本学では信頼回復に向け、学内外の声に耳を傾け、「教学優先」の再生・復興のため、「日本大学ルネサンス計画」を、スピード感をもって取り組んでおります。必ず皆さんの誇りとなる日本大学になることをお約束いたします。

さて、今日の社会は、気候変動、環境汚染、地域紛争、不安定な国際情勢、景気の低迷、さらには感染症の流行等、多くの課題が山積し、しかも多様な考え方や価値観が複雑に絡み合っています。そうした中で、「自主創造」を体現し、幅広い教養と「総合知」を持った人材、すなわち日本大学の卒業生が、社会の持続的発展のために必要とされています。

皆さんは、本日、日本大学の学び舎を巣立って行かれます。大空に向かって大きく、強く、羽ばたいてください。皆さん方が活躍できる場所が必ず待っています。その場所で実力を発揮してください。更なるスキルアップを望むなら、卒後教育や生涯教育ができる場所を見つけてください。日本大学は、ホームページを介して役立つニュースや学術情報を、公開講座や講演を通して、卒業生の皆さんを応援する役割を果たして参ります。

社会情勢が厳しいことは現実であり、こうした厳しい状況下でも、いや厳しい状況であるからこそ、皆さんは、自分を見つめ、自身がやりたいこと、出来ること、足りないことを明確にしなければなりません。是非、卒業を機に、改めて自身の志を確認してください。その一方で、自分を受け入れてくれる社会の実情や動向、仕組みを十分に知ってください。

では、自身を知るにはどうしたら良いのでしょうか。常に自身を知る努力や社会の仕組みや状況を知る努力が必要です。また、生涯に渡り自己研鑽に励む努力が求められます。それは、社会における自身の役割やこれから進むべき道を知ることにもなります。私は皆さんに、激しく変化するこの日本の現状を強い関心を持って見つめ、考え、そして日本の将来をどのように導くべきかを真剣に考えていただきたいと思います。

私の好きな禅語に、「東山、水上を行く」があります。スピーディーに社会が変化する中で、山が水の上を動いていくような、常識では考えられないことが生じても、その変化に対して柔軟に対応することと、その一方で考えや信念に基づいて不動なことを併せ持つ必要があるということです。本学で学んだ皆さんなら、動と静を併せ持つことができると確信しています。 

それは、皆さんが、本学の教育の理念である「自主創造」を体現したからです。「自ら学び、自ら物事に取り組み、自ら道をひらく」は、まさに危機の時代に立ち向かう自律の精神であります。学祖山田顕義先生が創立された日本大学は、明治二十二年、わが国を取り巻く環境が厳しい時代、将来を担う人材を育成することを目指して創立され、本年は創立百三十三年を迎えております。

本学の創立時代と同様に、厳しい今日、皆さんは高い志を持ち、日本大学で体現した「自主創造」を誇りとし、自信を持って社会で大いに活躍され、社会に貢献してください。
日本大学は卒業後も、修了後も、皆さん方を応援して参ります。皆さんの益々の御活躍、御発展を期待して令和四年度日本大学卒業式の式辞といたします。

令和五年三月二十五日

日本大学学長
日本大学短期大学部学長
酒井 健夫

令和四年度日本大学卒業式  林真理子理事長祝辞 全文

卒業を迎えた皆さん、そして御両親並びに保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。学校法人日本大学理事長として、祝辞を述べさせていただきます。

思い返してみますと、今年度卒業する皆さんは、大変な試練に遭われました。新型コロナウイルスのパンデミックが始まりましたのは、皆さんの多くが一年生の時です。昨年、ロシアがウクライナへ侵攻したことには、さぞかし心を揺さぶられたことでしょう。また、本学においては、法人役員による不祥事も次々と明らかにされました。

皆さんがどれほど辛い思いをされたかは、想像に難くありません。ここに日本大学理事長として深くおわび申し上げます。

しかし、皆さんに言いたいことがあります。例年どおりの学生生活ではなく、歴史的な場面に立ち合ったということは、将来、皆さんにとって大きな糧になるはずです。いいえ、そうしなくてはならないのです。

今から四十七年前、私は一人の日本大学卒業生として芸術学部の卒業式に参加しておりました。その時の私は貧しく、そしてどうしようもない不安に駆られていました。四十数社の入社試験に落ち、全く行き先が決まっていなかったのです。その私が、半世紀近く経ち、こうして日本大学の理事長として皆さんの前に立っています。これはまさに奇跡のような出来事ではないでしょうか。

今、ここで皆さんに私の成功譚を語るつもりはまるでありません。ただ申し上げたいのは、当時の私は想像力を持っていたということです。想像力、それは俯瞰する力とも言えます。高いところに心を浮かせ、遥か遠くのことを思い浮かべるということです。

二十二歳の私は、こんなことを考えていました。二十年後の私はきっと笑って賑やかに、今日の卒業式のことを語っているだろうということをです。あの時は、たったの一社も、私を雇ってくれるところがなかった。私は社会の片隅に、ちっぽけな場所も与えられず本当に大変だったと、このことを笑い話にしているだろうと信じていました。

どうか皆さん、二十年後、三十年後に、この苦難の学生時代を、笑って仲間や愛する人に語る日のことを想像してください。そのためには、未来のあなた方が強く幸せになっていなくてはならないのです。

しかし、私は何の心配もしておりません。皆さんは晴れやかな顔でここに座っておられます。未来を信じているからこそ、こうしたセレモニーに参加しておられるのです。

昨年の七月に、母校の理事長に就任してから、酒井学長とともに全身全霊をささげて日本大学の再生に向けて取り組んで参りました。全てが解決した素晴らしい状態で、皆さんに卒業していただきたいと願っておりましたが、まだそれは完全とは言えないかもしれません。

しかしながら、こう胸を張って申し上げます。皆さんは、新生日本大学が送り出す第一期生です。一つの組織が大きく変わり、甦えろうとしているありさまを、身近で見ていたということを、いつの日か誇らしく思い出していただきたいと思います。

最後に皆さんにお願いがあります。社会に出てからも教養というものを友人にしていただきたい。学生時代が終わっても、本を読み、音楽や芝居、たくさんの芸術に触れてください。教養は人間に深みと魅力を与えてくれます。そういう人にはまたたくさんの人が寄ってきて、更に教養というものを教えてくれます。日本大学は皆さんに、教養を身に付けるための基礎体力をつけました。後は皆さんが、自分なりのやり方で磨きをかけることです。

皆さん、どうかいい人生を歩んでください。またお会いしましょう。そして今日の卒業式のことを楽しく語り合おうではありませんか。

令和五年三月二十五日

学校法人日本大学理事長
林 真理子