物質制御の概念確立で英国学術雑誌に掲載
圧力により磁性物質の量子性を引き出す

文理学部物理学科 山本大輔 准教授

研究
2021年10月08日

文理学部物理学科・山本大輔准教授の研究成果が、2021年7月12日に英国学術雑誌「Nature Communications」に掲載された。「Nature Communications」は生物学、物理学などのあらゆる分野を扱い、高品質な研究を出版するオープンアクセスジャーナル。掲載には非常に高いレベルの学術的価値が求められる。

掲載された研究は、神戸大、東京工業大、東京大の研究者らと協力し、鎖状の構造を持つ磁性物質の量子性の強さを圧力によって制御できる概念を構築。量子力学的ではなく普通の振る舞いをする物質であっても圧力を印加することで量子力学的な性質を引き出せることを示しており、すでに発見または合成されているさまざまな鎖状の物質を用いて難解な量子物質の特性を解明するための新たな研究手法を提示するもの。

私たちの身の回りにある物質の性質は、それを構成するミクロな要素の集団的な振る舞いによって決まる。例えばパソコンのハードディスクドライブから、電気自動車のモーターにまで用いられている磁石(磁性体)では、量子力学に従う「スピン」と呼ばれる“極小の磁石”が1立方センチ当たり1兆の百億倍くらいの個数が存在。それらが集まって物質全体の磁気的性質を生み出している。その集団的な振る舞いを外圧によって能動的にコントロールしようというのが、本研究の趣旨だ。

山本准教授の研究分野である「量子力学のコントロール」は、将来の量子コンピューター開発などにも基礎的な知見を与える。量子コンピューターは、「富岳」や「京」で知られるスーパーコンピューターを上回るスピードで計算処理できる可能性があると、いま話題の研究だ。今回示された新しい研究方法は社会生活に身近な機能性材料である磁性体の中で「量子力学のコントロール」を行うという提案であり、今後の物性研究に大きな役割を果たすことが期待される。