日大アスリートの挑戦 ~明日の覇者へ

重量挙部

スポーツ
2022年01月11日

目指すは全日本インカレ9連覇
東日本インカレの雪辱に燃える

全日本大学対抗ウエイトリフティング選手権大会(1部)で8年連続21回目の総合優勝を果たすなど、大学ウエイトリフティング界の絶対王者として君臨する重量挙部。今年は創部60年という記念すべき年。前人未踏のインカレ9連覇でメモリアルイヤーに花を添えるため、選手たちは今日もトレーニングに励んでいる。

強さの秘密

新型コロナウイルスの影響で第66回全日本対抗ウエイトリフティング選手権大会(全日本インカレ)は例年より遅い2021年3月5~7日に開催された。

プラットフォーム(試技台)に置かれたバーベルを一気に頭上まで持ち上げる『スナッチ』とバーベルを肩のラインに一度上げて静止してから、頭上に持ち上げる『クリーン&ジャーク』の2種目で3本ずつ試技を行い得点を争う同大会に、本学は全10階級中8階級に10人がエントリー。3人がチャンピオンになるなど、着実にポイントを稼いで8年連続21回目の総合優勝を果たした。

その強さは選手の自主性を重んじるスタイルにあり、その教えを受けた卒業生の糸数陽一選手(警視庁)、近内三孝選手(本学職員)は東京五輪に出場。この2選手の他にもパリ五輪を見据える宍戸大輔選手(本学職員)、村上英士朗選手(いちご株式会社)、持田龍之輔選手(ALSOKA)など、数多くの世界的な選手を輩出してきた。

部全体に新しいことにチャレンジする大切さを伝え、温かく見守る難波監督

部全体に新しいことにチャレンジする大切さを伝え、温かく見守る難波監督

「選手に求めているのは情熱です。つまりウエイトリフティングが好きという気持ちですね。他人に言われたからではなく、自分自身で本学に進むことを決意した学生に来てもらっています」

そう語るのは、日大を絶対王者へと導いた難波謙二監督だ。前監督に声を掛けられ、コーチとして重量挙部に戻ったのは難波監督が26歳の時。現場を任され、2年目に東日本インカレと全日本インカレの総合優勝を果たし、そこから4連覇を達成した。

その当時は徹底した管理指導で、何よりも競技結果を重んじるスタイルだった。しかし学生の生活態度、進路後の姿などを見て少しずつ考え方が変わった。

「重量挙げは人生の一部で、社会に出てからの方が長い時間を生きる。ならば卒業後の彼らの人生が有意義になるように学べる環境を整え、指導をしなければならないと気付いたのです」

監督に就任した2000年ごろからは選手の自主性を重んじる指導スタイルに変わった。以降も社会の風潮やその時代の選手に合った形で指導をしている。変化を恐れずにトライ&エラーを繰り返していくことが、本学重量挙部の伝統なのだ。

選手に求められること

全国から有望な選手が集まる本学重量挙部には現在49人が在籍している。先に挙げたように、情熱を持ってウエイトリフティングに取り組むことが入部の第一条件だが、選手にはしっかりとした学生生活を送ることも求めている。

部訓は『社会に有益な人物を育てる』だ。そのためには学校へ行き、単位を取得するという、大学生として当然のことができなければならない。どんなに競技力が高くても、当たり前の学生生活を送れない選手は試合に出場させない方針で、その旨を全選手に入学前に伝えている。
 

練習風景。

練習風景。いい緊張感の中で部員たちは絶え間なく声を掛け合っている

「部員は全員、八幡山で寮生活を送っています。重量挙げは個人競技ではありますが、インカレには団体戦があり、一致団結する必要があります。寮生活をすることで、団結力が身に付き、先輩方は素晴らしい結果を残すことができたのだと思います」

そう語るのは主将を務める荒川大輝選手(生物資源科4年)。憧れの先輩と寝食を共にし、切磋琢磨することで、飛躍的に競技力が向上した1人だ。競技レベルの高い選手同士が刺激し合うことで、自分に足りないものを見つける。その毎日を繰り返すことで、考える力と責任感が養われていくのだ。

「競技でも生活でもうまくいかないことはもちろんあるでしょう。でも失敗をしてもいい。ここで勝つために考え、努力することが大切なのです。それができたと胸を張って言えるのならば『日大に来てよかった』と思えるでしょうし、最悪負けてしまっても仕方がないと私は考えています」(難波監督)

重量挙げはあくまでも人間形成のための一つの手段と難波監督は考えている。現在は監督が現場に出ることほとんどないが、伝統のトライ&エラーを続けることを10人いるコーチと全選手に伝えている。

9連覇を目指して

出場できない選手のためにも9連覇を達成すると誓う荒川主将

出場できない選手のためにも9連覇を達成すると誓う荒川主将

7月2~4日に第49回東日本大学対抗ウエイトリフティング選手権大会(東日本インカレ)が行われた。全日本インカレ同様に8連覇中の本学だったが、法政大に22点差をつけられ、2位という結果に終わり、9連覇の夢は潰えた。大会終了後に行った全体ミーティングで選手の口から出た言葉は『驕り』だった。

「チーム全員が最終的には勝てると考えていました。コロナウイルスの影響で大会も少ない状況なのに、緊張感が足りなかった。今は一人ひとりができることをしっかりとこなし、日本一に挑戦するために日本大学全員で戦うことを意識しています」(荒川主将)

団体戦のメンバーは大会の1カ月前にエントリーする。そして勝つためにはエントリー前の情報戦がカギになる。ここで力を貸してくれるのが、OBたちだ。

「全国各地にいるOBたちが地方の大会を視察したり、ライバル校や選手の動向を伝えたりしてくれます。その情報をコーチ陣と精査し、選手の意向も踏まえて出場選手を決めるのです」(難波監督)

10階級あり、出場選手は10人だが、1つの階級に複数人出場させることが可能だ。つまりポイントを稼ぐための戦略が勝敗を左右するのだ。

全日本インカレは12月7~9日に埼玉県さいたま市で開催される。9連覇を目指す彼らをぜひ応援していただきたい。