松虫号いませんか
庄野英二作の童話『やさしい木曽駒』を読んだ著者が、そこに出てくる木曽駒〝松虫号〟の姿を求めて妻と共に出掛けた中国旅行記。童話は、軍に徴発された松虫号が、あとから召集された持ち主と中国で出会うという物語。もちろん松虫号がいるわけもないのだが、その地、石家荘を訪ねてみたい思いに駆られた。
個人で中国に旅行するのが難しかった一九八〇年代。香港でビザを取り、石家荘を目指したのは八三年十二月。気温マイナス二四度。カメラのフィルムが巻き取れない冷え込みの日々。行く先々での人々との出会いや町の様子がつづられる。
石家荘は、すれ違う馬車も多い。畑の中などを散策し「風に〝松虫号〟きましたかと聞いてみた」。夜、ホテルの窓を開け『やさしい木曽駒』の一節を朗読する―。人民服があふれていたころの中国が、著者の温かい目を通して描かれている。
書籍名 | 松虫号いませんか |
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著者名 | 元山形高校校長 あいがわたけし(橋本武)・著 |
月号 | 2007年春季号 No.111 |
価格 | 1,200円(税別) |
出版社情報 | 東京都港区南青山2-22-17、新風社 |