9月2日に愛媛・坊ちゃんスタジアムで開幕した東都大学野球秋季リーグ戦。日本大学は、國學院大に連勝して同率首位と、2016年秋以来の優勝に向け、好スタートを切った。

 ヒットの数、初戦が5安打対11安打。2戦目が3安打対9安打。だが勝ったのは、いずれもヒット数で劣る日大だった。
「東都のチームには、どこもドラフト候補の好投手がいて、そうそう点は取れない。ですから夏の間は基本に戻り、バッテリーを中心に守って勝つ野球を突き詰めました」
 と日大・片岡昭吾監督が語るように、少ないチャンスをモノにして國學院大に守り勝ったスコアは、3対1と1対0である。
 侍ジャパンに名を連ねる國學院大・武内夏暉と対戦した初戦は3回、2死二、三塁のチャンスに「打つことに関してはチームで一、二」と片岡監督の言う小濃塁(経済学部4年・仙台育英)が、しぶとく先制タイムリー。8回には、「土のグラウンドだから、低い打球を」(片岡監督)徹底したことが相手のゴロ処理ミスを誘い、1点を追加した。これを、春の4勝でエースにのし上がった市川祐(法学部2年・関東一)、山内翔太(スポーツ科学部3年・習志野)のリレーで守り切る。
 武内対策としてバットを短く持ち、コンパクトに振り抜いて殊勲の小濃は言う。
「第1打席の空振り三振がとても悔しかったので、もう1回チャンスが来たら絶対に打とうと思っていた」

 先発の市川について片岡監督は、「春が終わってから自覚を持って練習に取り組んでくれた」と評価する。春季リーグ途中から1戦目の先発に定着し、「チームの中心として、練習からちゃんとやらないといけない」と、この夏は走り込みやトレーニング、投げ込みに汗を流した。この試合では毎回得点圏に走者を背負うなど本調子を欠いたが、それでもピンチにはスプリットを低めに制球。打たせて取る投球で7回途中までを1失点にまとめている。

2戦目のヒーローは急造外野手

 2戦目の主役は、投では坂尾浩汰(危機管理学部3年・龍谷大平安)、打では谷端将伍(経済学部2年・星稜)だ。坊ちゃんスタジアムのある松山市出身の坂尾は、小・中学時代に何度もプレーした球場で、6回途中まで7安打されながら無失点の好投。161センチと小柄な左腕だが、春季リーグでは駒澤大相手に完封勝利を収めており、「友だちも多く見にきてくれたので、結果を出せてよかったです」と白い歯を見せる。
 そして2回、2死三塁から虎の子の1点をたたき出したのが谷端だ。本来内野手だが、「他選手との兼ね合いで守るところがなく、それでも左腕対策としては貴重な右打者。開幕の10日前に"外野、できるか?"と打診したら"できます"と答えたので、オープン戦で外野を試してみたんです。上手にこなしたので」(片岡監督)と抜擢されたスタメンで、いい働きを見せた。

 頼もしいのは、2試合で5回3分の2を無失点と、きっちりクローザー役を果たした山内翔だ。春は先発すると立ち上がりが不安定で、途中からリリーフに回ったが、「マウンド度胸があるので、大事なところでも力を発揮してくれる。彼がいてくれると、ベンチとしては戦いやすいですね」と、片岡監督の信頼も大きい。
 かくして、ノーエラーで守り勝った2試合。象徴は2戦目の9回、菊地弘樹(法学部1年・木更津総合)の守備だろう。先頭打者が三遊間に飛ばしたヒット性の当たりを好捕し、落ち着いて一塁に刺す。リードはわずか1点だから、塁に出していたら試合はまだわからなかった。春のリーグ戦からフル出場していたが、11試合で4失策と、危なっかしい場面の多かった菊地。だから夏はもちろん、「リーグ戦が始まる直前まで」(片岡監督)、泥だらけで早出や居残りの特守に取り組んできた。その成果が実戦で出たというわけだ。

 片岡監督はナインに、この秋季リーグを「トーナメントのつもりで戦うぞ」と話したという。つまり、ひとつ負けたら終わりくらいの覚悟、ということだ。次節の相手・東洋大にも、細野晴希というドラフト候補左腕がいる。だが、ワンチャンスをモノにすれば、守り勝つことはできる。それを証明する、開幕2連勝だった。
次戦は9月18日(月)神宮球場で行われる。

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