日本大が、2016年以来のアレに王手! 秋季東都大学野球リーグ第4週は、中央大との3回戦をモノにした日本大が唯一勝ち点3で抜け出した。最終週の青山学院大戦に、久々の優勝がかかる。

 

 

 これが東都だよ——中大との1回戦で西舘勇陽(中大)に13三振を喫し、0対2で完敗したあと。日大・片岡昭吾監督は、そう言って選手たちの士気を鼓舞した。第3週を終えた時点で、勝ち点2で4チームが並ぶ大混戦。優勝もあれば入れ替え戦もありうるから、どのチームにとっても1試合の持つ意味が大きい。
「一戦必勝、毎日がトーナメント」(片岡監督)の戦い、ひとつ勝ち点を落とすと、優勝どころか入れ替え戦さえありうる。その危機に選手が応えたのが、中大とのまず2回戦だ。先発の坂尾浩汰(危機管理学部3年・龍谷大平安)が変化球を丁寧に低めに集め、打たせて取る。9回の先頭打者を四球で出すまで、なんと14ものフライアウトを重ね、小濃塁(経済学部4年・仙台育英)ら、バックも好守備でそれに応えた。

「昨日負けたあと、選手たちのミーティングで"優勝するには、今日勝たないと"と確認し合いました。調子はさほどよくなかったんですが、守備に助けられた」
 と坂尾がいえば、打のヒーローは先制タイムリーの上加世田頼希(スポーツ科学部1年・敦賀気比)だ。中学時代にはU15日本代表に選ばれ、高校でも甲子園を3度経験しているが、初スタメンに「最初は緊張した」という。高校までの金属バットから木に慣れるのにも、ちょっと手こずった。それでも、
「ケガをした太田(翔梧/法学部4年・木更津総合)先輩から"オレの分まで振ってこい"といわれ、思い切って振ったら運よく野手の前に落ちてくれました」
 と、2回無死二塁からの詰まった中前打が、貴重な決勝点となった。また、林拓馬(法学部4年・大垣日大)のアドバイスで「センターにバットを投げ出すようなイメージで」振ったと先輩からのアドバイスを結果につなげ、チームの雰囲気も良さそうだ。2対0の9回無死一塁のピンチも、山内翔太(スポーツ科学部3年・習志野)がピシャリと締めて2対0。勝ち点争いは3回戦にもつれた。

 そこまでの状況を整理しておく。第4週は、連敗した東洋大と青山学院大が勝ち点2のまま。日大と中大も勝ち点2だから、勝てば勝ち点3となってV争いを一歩リードし、負ければ2のままで入れ替え戦圏内から抜け出せない。つまり3回戦の結果次第で、天と地の差。この大一番を、中大も日大も中1日の西舘と市川祐(法学部2年・関東一)、両エースに託した。
 ドラフト上位候補の投手がずらりとそろう東都。この日までの全30試合中、13試合の勝ちチームが零封で、当然ながら先取点がきわめて貴重になる。この日の3回戦も両エースが好調で、5回までスコアレス。胃の痛くなる展開から、先制点をもぎ取ったのは日大だった。6回に死球、ヒット、暴投などでつかんだ1死満塁の好機に、四番に座る友田佑卓(法学部4年・九州学院)がしぶとく左前に落とす。その裏には、市川も1死一、三塁のピンチを招くが、2死からリリーフした山内翔がここをしのぎ、8回からは連投の坂尾が気迫の投球で中大打線に決定打を許さなかった。1対0。第3週の亜細亜大戦から四番に座り、殊勲の友田はいう。
「あまりヒットが出ていないのに、監督さんが打順で大事なところで使ってくれている。なんとか期待に応えたいと思っていた」
 その友田の一打が、西舘の初球をとらえたように、この日目立ったのは日大打線の積極性だ。ヒットは4本にすぎないが、その3本の打席はファーストストライクを振りにいっている。片岡監督はいう。
「好投手を相手にしたら、とにかく食らいついて球数を投げさせることが攻略の常道です。ただ、いかに西舘君といっても、中1日ではさすがに1回戦ほどのデキではない。だから今日は"追い込まれる前に、積極的にどんどん振っていこう"と」

 なるほど。確かに、1回戦の西舘には、5回までで75球を投げさせているが、この日は5回まで48球。安打数はどちらも2だが、いかに積極的だったかがわかる。そして投げては市川、山内翔、坂尾の総力戦で完封リレー。この勝ち点で優勝に王手をかけ、入れ替え戦回避も決定した。

 繰り返すが、ドラフト1位指名候補のエースがずらりの戦国東都。ただ日大の投手陣は下級生が中心で、やや蚊帳の外という感がある。また、チーム平均打率と防御率は全チーム中の最下位だ。それでも日大はチーム力を武器に7年ぶりの優勝に向け、最終週に臨む。

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