⽇本⼤学競技スポーツ部で毎年開催している「キャプテン及び総務研修会」。年数回にわたる講習と実習を通じて、選⼿たちの競技⼒向上とチームビルディングに寄与するだけではなく、卒業後を⾒据えて社会に通ずる⼈としての⼒を⾝につけることも⽬的としている。2024 年2 ⽉9 ⽇(⾦)に⾏われた令和6 年度の第1 回は、年間約200 ⽇に及ぶ企業研修・セミナーなどでの講演や、企業・著名⼈のコンサルティングを⾏なっている志倉康之⽒(株式会社 巧コンサルティング)を講師に迎え、午前中にキャプテン研修、午後からは総務研修の⼆部制で開催。34 競技部のキャプテンと総務担当の学⽣が参加し、それぞれの⽴場において求められる⼼構えとスキル、そして社会⽣活における倫理観について学んだ。

チームビジョン達成に“リーダーシップ”は⽋かせない

午前9時から始まったキャプテン研修。その冒頭で講師の志倉⽒は1テーブル4〜5⼈のグループに分かれて着席した学⽣たちに、こう話しかけた。

 

「⼊社3年⽬までの若⼿社員の中で、約3割ぐらいの⼈はとても⽣き⽣きとしていて、“仕事が楽しい”と⾔っています。彼らに共通する特徴は、みんな強いリーダーシップを持っているということ。⼀⽅、経営者の⽅々の話を聞くと、どこの会社でも、欲しい⼈材は “リーダーシップがある⼈”だと⾔われます」

 

そして「キャプテンというのはまさに“リーダー・オブ・リーダー”。皆さんが今持っているリーダーシップをより明確化して⾔葉に出せるようになって、部活動においても、その先の社会でも活かしていきましょう」と続けた。


これまでのビジネスキャリアにおける経験談など織り交ぜながら軽快にレクチャーを展開していく志倉⽒の⾔葉に、学⽣たちも熱⼼に⽿を傾ける。テキストに沿った解説の後には必ず、そのテーマについて隣席のパートナー、またはグループのメンバー全員でディスカッションする時間が設けられる。時には、グループ内でリーダーを決め、メンバーから出された意⾒をまとめて発表したり、個々でワークシートに記された課題に対する考えを書き込んでいくなど、研修は多⾓的なアプローチにより進められていった。

「皆さんはどちらのタイプですか?」と志倉⽒が問いかけたのは、「⾏動先⾏型or感情先⾏型」というテーマ。まずは⾏動してしまえば、感情が後からついてくるという“⾏動先⾏型”に対し、感情が満たされたら⾏動するという“感情先⾏型”は、やる気が出たら何かをやるタイプのため「⾏動が遅くなって成果が出ない」と⾔う。「社会⼈でも、できる⼈は⾏動先⾏型が多い」という志倉⽒は、⽇頃関わりがあるアスリートたちの多くが⾏動先⾏型を意識していると話し、カーリング⼥⼦チームの有名選⼿との印象的な会話を披露した。
「いつも笑顔で癒されてますと彼⼥に⾔ったら、『楽しいから笑顔なんじゃなくて、笑顔でいるから楽しいんです。私たちは最初から楽しくなくても笑顔でいると決めていて、そうすると後から感情がついてきて、試合中に楽しくなってくる。それが私たちの強みなんです』と⾔われ、さすがだなと思いました」
それを聞いた学⽣たちの中には、納得したように何度もうなずいたり、メモを取る姿も多く⾒られた。


講義は次第に核⼼へと⼊っていき、「スポーツ倫理への取り組み」については、事前課題として個々が考えてきた意⾒をグループ内で共有して議論した。志倉⽒は、⼈として守り⾏うべき道、善悪の普遍的な判断基準となる「倫理」の中に「スポーツ倫理」があると述べ、「結果を出すのはもちろん⼤事ですが、その前に⽇⼤の学⽣です。この部分を守ることがキャプテンに求められており、部員にも徹底させるべきことです」と語った。
さらに、チームとして倫理を守り続けるポイントは「原点(⽬的や本質)に⽴ち返ること」だと⾔い、「チーム倫理の基準を作っておくべき。基準作りは⼤変ですが、それをやれるのもキャプテンの醍醐味だと思ってほしい」と⾔葉に⼒を込めた。


「キャプテンとしての期待役割を知る」というテーマに対しては、「キャプテンとはどのような存在か?」「キャプテンとは誰から、どのような期待をかけられているのか?」ということを掘り下げていく。また「キャプテンに求められるスキルを学ぶ」というテーマでは、個⼈の結論をグループの結論にまとめていくという演習にチャレンジ。最終的な1つの結論に対して、個⼈の合意度はどうだったか、合意度を⾼めるための⾏動や⾔葉はどうだったかなどの振り返りも⾏った。


「重要なのは、⽬的やビジョン(成し遂げたいこと、なりたい姿)を設定して⾏動すること。そこに向けてチームの合意形成を図るアプローチをしていくのが有効であって、⾃分⾃⾝を強⼒にリードしていくことがリーダーシップの第⼀歩です」と語った志倉⽒。リーダーシップを発揮するための2⼤ポイントとして、「切り拓く⼒:皆のために、はじめの⼀歩を踏み出す⼒」と「巻き込む⼒:ビジョンに向かって、共に歩み続ける⼒」を挙げ、チームでの“共創”によってチームビジョンを構築していくこと、対⽴を乗り越えるために“Win-Win”の状況を構築することが重要だと説き、加えて、“関係の質”から始まる「成功の循環モデル」について解説。チーム内での関係の質を⾼めることが、結果的にチームを成功に導くものになると語った。


最後は、⾏動⽬標「⽬指すべき結果や状態の具体化」と⾏動習慣「実⾏し続ける⾏動の具体化」をセットにした⽬標であるアクションプランについて解説がなされ、次回研修時までに、それぞれがスポーツ⾯、⽣活⾯でのアクションプランシートを作成することが課題として出された。
志倉⽒は「チームをまとめていく経験は社会に出てからも貴重な財産です。⾃分がなりたい姿の⼿段として、キャプテンという役割を⾃信を持って頑張っていきましょう」と締めくくり、キャプテン研修が終了した。

⼈間⼒の養成を⽀援し、部を健全に運営するために

午後から始まった総務研修でも、志倉⽒によるレクチャーとディスカッションが展開されたが、その内容はキャプテン研修とは異なり、「部を健全に運営する存在」としての視点からのアプローチだった。


「総務に必要な⼼構えとスキル」のテーマでは、志倉⽒は“セルフ・リーダーシップ”が重要であると⼒説。セルフ・リーダーシップとは、⾃分の描いた夢やイメージ(理想)に向かって最⼤限の努⼒をして実現するという、⾃分をモチベートする⼒を指す。その点において、⾏動のゴールを「部活を頑張らなきゃいけない」「勉強しなきゃいけない」といった“出来事”に置いている⼈はモチベーションが上がらず成果が出にくい。⼀⽅、⾃分が “ありたい姿”をゴールに置いている⼈は、それが⾃分のエネルギー源となり、⽬標達成の⼿段として「部活を頑張る」「勉強を頑張る」ためにモチベーションが下がらないという。そして「スポーツでも、社会でも、活躍している⼈は総じてこちらのタイプです」と、志倉⽒は⾃らの経験を語った。


また、部外関係者と接する機会が多い総務は、「⼤学の代表として相⼿に信頼感・安⼼感を与えるために、適切な“マナー”を体現することが⼤切」であり、仕事を受ける際に確認するべき項⽬「5W2H(⽬的、内容、期限、範囲、対象、⼿段、予算)」、仕事を進める上でのコミュニケーションの基本となる「ホウ・レン・ソウ(報告、連絡、相談)」については、ワークシートを使った演習やグループ内での共有を交えて詳細な解説が⾏われた。


その中で志倉⽒は、「相⼿に⾔われたことだけを聞くのではなく、相⼿が意識していないところまでを考えて⾃分から聞いて深掘りしていくことが、相⼿に感動を与え、期待に応えることにつながります」とポイントを提⽰。さらに、「例えば、不⼗分な指⽰を相⼿のせいにする“他責”ではなく、不⼗分な部分をどう補えばいいのか“⾃責”で考えていくこと。それが総務の役割を果たしていく上での成⻑につながります」とアドバイスを送った。
その後は、アクションプランシートの記⼊と事後課題について説明があり、⼤きな拍⼿と共に総務研修は終了となった。

講師を務めた志倉康之⽒

講師を務めた志倉⽒に研修を終えての感想を尋ねると、「ご⾃⾝の役割の重さに重圧を感じられている⽅もいらっしゃるようでしたが、最終的には⾃⾝の成⻑の機会として前向きに捉えている⽅が多いように感じました」。

さらに「キャプテン研修も総務研修も、共通していたのは同じ班の仲間をリスペクトしていたこと。互いに励ましあう様⼦も⾒られるなど、しっかり対話されていましたね」と話し、「体育会×役職(キャプテン・総務)という経験は、社会⼈になってから⾮常に役⽴つ要素を早期に⾝に付けることが可能です。

⼤変なことも多いですが、それ以上に誇りを持っていただき、後悔のない学⽣⽣活を過ごしていただきたいと思います」とエールを贈っていただいた。

研修を通じて、⾃⼰成⻑のための学びを得る

3時間半におよぶ研修を通じて、受講した学⽣たちは何を思い、何を感じたのか。

サッカー部・熊倉弘貴主将

「ふだん接する機会がない他部のキャプテンたちと話をすることができ、悩みだったり考えていることが⾃分と近いものがあるなと思いましたし、いい刺激になりました」と振り返ったのはサッカー部の熊倉弘貴主将(法・4年)。「昨年から私たちの代では『4年⽣になってからリーダーシップを発揮しようというのでは遅い』という考えで、3年⽣の時から練習でも私⽣活でもリーダーシップを取るような⾏動を⼼がけてきました。そのリーダーシップを取れる層に今⽇の研修で学んだことを伝えて、そこからまた下の層に広げていければ、チームとしての⽬標もぶれずに保てるのではないかと思います」

⼥⼦ゴルフ部・⽊村彩夏主将

「キャプテンを務める⾃信が⾜りない」と話していた⼥⼦ゴルフ部の⽊村彩夏主将(国際関係・4年)も、「トップアスリートの考え⽅など、参考になった話がたくさんありました。まずは私ができることを⾏動としてやっていき、そこから⾃分⾃⾝が成⻑し、部をいい形に持っていきたい」と決意を新たにした様⼦。「ミーティングを開いて、最終的にみんなで向かうゴールを明確に決め、そこに向けて何をしていくべきかを考えていきたいと思います」と語った。

⽔泳部・総務 髙木琉唯選⼿

昨年度に続いて2度⽬の総務研修受講となった⽔泳部の髙木琉唯選⼿(文理・4年)は、「昨年学んだことを、1年間を通じて実際にできたかどうかを確認できました」と話す。「地域社会との関わりにおいて問題にも直⾯してきましたが、学⽣主体の⾏動で地域の⽅々との関係を深めていくことで解決することができました。今後も研修で学んだことをチーム運営に活かせるように、頑張っていきたいと思います」

フェンシング部・総務 弓場麗愛選⼿

「これまで⾃分では考えていなかったことを吸収することができました」と話すのは、3年⽣が総務を担当するシステムを取っているフェンシング部から参加した弓場麗愛選⼿(商・3年)。これからも続く研修に、「アスリートとしてはもちろん、⼀⼈の⼈間としても成⻑できると思います」と期待を寄せると共に、グループ内での会話を通じて各々のチームが意識したり志していることを知ることができ、「その⽬標に向かって、⽇本⼤学全員で頑張っていこうという感じになりました」と笑顔を⾒せた。

話を聞いた学⽣たちからは、それぞれの役職に真摯に取り組み、チームをまとめながら、⾃らも成⻑していこうという意欲が強く感じられた。第2回、第3回と続いていくキャプテン研修・総務研修を経て、⽇本⼤学競技スポーツ部の学⽣たちと各チームは、これからどんな進化と成果を⾒せてくれるだろうか。

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