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競泳 長谷川 涼香選手

2020年はコロナ禍によりイレギュラーなシーズンとなったが、「そこまで大きな影響は受けずに、練習をしっかり積むことができました」と8月の東京都特別水泳大会ではその成果を遺憾なく発揮。100mバタフライ(57秒49)と200mバタフライ(2分5秒62)で優勝。共に自己ベストを更新し、200mにおいては、2019年の世界選手権優勝タイム2分6秒78を上回り、注目を集めた。


勢いそのままに、10月のインカレでも100mと200mで栄冠を手にした。「インカレでは初めての優勝。2冠も達成できたので、本当によかったという気持ちでした」と好調が続くかのように思われていたが、2021年2月のジャパンオープンで違和感を感じたという。200mで優勝したものの、「泳ぎが崩れてきていた」とタイムは伸び悩み2分8秒80、100mも自己ベストより1秒以上遅い58秒68で2位となった。

長谷川 涼香選手

200mバタフライ決勝では、終始リードする展開で強さを見せつけ、2大会連続となる五輪代表に内定した。

その後は合宿を行うなどして泳ぎの改善を図るも、「毎日泣いてしまうぐらいタイムが遅くて、日本選手権を棄権したいと思うほどでした」と追い込まれていた。しかし、日本選手権の1週間ほど前、コーチから「うねりの動作の中で、胸を丸めるタイミングが少し遅い」と指摘を受けたという。「ほんの0.1秒ほどの差なのですが、そこだけを意識して泳ぎを修正したら、前日練習で一気にタイムが上がって自分でも驚きました」


良い流れを掴みつつ迎えた大会本番では、初日の100mバタフライ予選を抑えた泳ぎで全体7位、準決勝はピッチを上げて1位で通過した。2日目の決勝では池江璃花子選手に次ぐ2位(58秒18)で惜しくも代表入りは逃したが、「合宿中の練習と比べると、良いタイムだったのでホッとした部分が大きかったです。泳ぎも安定していたので、200mはいけるかなと思えるレースでした」と本命種目へ向け、手応えを感じていた。


中1日空けての200m予選は2位、準決勝は1位で通過。「少しゆっくりのリズムで体重移動を確認しながらのレースでしたが、予想通りのタイムで泳げました」と話し、準決勝後のインタビューでは「2分7秒台前半を出せれば」と決勝の舞台へ意気込みを見せた。


翌日の決勝レース、「前半から仕掛けていく展開を崩さないようにしていた」と序盤から先頭に立つと、安定したラップを刻んで他の選手を寄せ付けず、そのまま2分7秒24の好タイムでフィニッシュ。「準決勝後に7秒台前半を出すと言いましたが、そのタイムを出せるかどうか瀬戸際だと感じていたので、あまり期待しないようにしていました」と自分を追い込みすぎずに臨んだ結果であったことを明かした。


「残りの期間で、スタートから15mまでの通過を速くすることに注力したいです」と、これからの課題としてドルフィンキックを挙げた長谷川選手。2大会連続となる五輪出場については「リオ大会の選考会ではチャレンジャーの気持ちで臨み、五輪に出場できるという喜びがとても大きかったのですが、今回は出場を決めなければいけないというプレッシャーを感じていました。五輪での結果に対しても前回より思いは強く、メダルを獲ることはもちろんですが、日本記録の更新も視野に入れています」。


本学水泳部の新入生入部式では「女子キャプテンとして、結果で日大を引っ張って行けるよう頑張ります」と頼もしい発言もあった長谷川選手。その経験値を活かして日本代表も牽引する存在となるに違いない。

Profile

Suzuka HASEGAWA ​[はせがわ・すずか]

スポーツ科学部4年。2000年生まれ。東京都出身。淑徳巣鴨高卒。高校2年時に出場した'16年のリオ五輪200mバタフライで9位。'17年の日本選手権200mで初優勝を果たすと、本学入学後の'18年、ジャカルタ・アジア大会では200mバタフライで銅メダルを獲得。'20年のインカレでは100mと200mの2冠を達成し、'21年2月のジャパンオープンでも200m優勝。4月の日本選手権200mでは3連覇を飾ると共に派遣標準記録を突破し、2大会連続となる五輪代表に内定した。