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競泳 小堀 倭加選手

「2020年は、気持ち的にも技術的にもうまくいった1年だったと思います」とコロナ禍の日々を振り返った小堀選手。緊急事態宣言の間は練習もままならなかったが、「ウェイトトレーニングを増やしたり、陸上トレーニングをこなしたりすることでパワーがつき、うまく泳ぎにはまってスピードもついたと思うし、少しずつレースでも生きるようになってきました」。その言葉通り、2021年2月のジャパンオープンでは400m、800m、1500mの3種目で優勝し、「その期間の練習が良かったんだなと実感していました」。


だが、その後は調子が下降線をたどり、代表選考会を兼ねる日本選手権を前に苦しい日々を過ごしてきたという。「練習がうまくこなせず、泳ぎ的にも納得のいく動きができなくて…。自分が自分じゃないと思うくらいとても苦しかったですし、五輪を少しあきらめかけた時もありました」

小堀 倭加選手

800m自由形の決勝レース。目標の8分25秒台には届かなかったが、日本人女子では2008年北京大会の柴田亜衣さん以来、3大会ぶりの代表内定となる快挙となった。

それでも自分を信じて迎えた日本選手権2日目の400m自由形。会場入りする前は不安と緊張があったというが「会場に入ってからは、意外と落ち着いて自分を保てていたのかなと思います」。


予選を全体2位で通過し、臨んだ決勝レース。序盤はレースプラン通り近畿大・難波実夢選手についていく。350mの折り返しではまだ0秒6差あったが、最後にギアを入れた小堀選手は残り10mでついに逆転し、難波選手に0.02秒の僅差で先着。ラスト50mでただ一人30秒を切るスピードとスタミナを見せつけ、4分06秒34の学生新記録で優勝を飾ると共に、派遣標準記録もクリアして五輪代表内定を決めた。


レース後のインタビューでは「ラスト15mが勝負だと思っていたので、最後は力を振り絞って泳ぎました」と涙声で答えていた小堀選手。「レースの1週間位前まではどん底というか、不調すぎてそんなタイムが出るとは思っていなかったので…。苦しかったことを思い出したのと、少し安心した気持ちになってこみあげてきましたね(笑)」


大会7日目の女子800m決勝も難波選手とのマッチレースとなった。前半からレースを引っ張る難波選手に対し650mで初めて先行したが、「残り100mでもう少し上げたかった。最後に差されてしまい悔しい」と0.06秒差の2着。惜しくも2冠は逃したが、「お互い派遣標準を切ろう」と入場前に話していた通り、二人揃って派遣標準記録を3秒余り上回り、2種目めの代表権を獲得した。


大会後に行われた代表合宿に参加し、レース直後よりも「日本代表の実感がわいてきた」という小堀選手。「五輪は出るだけではダメだと思っています。しっかり決勝に進んで記録を残さないといけない」と語り、「そのためには上半身の強化とキャッチの技術をもう少し向上させたい。覚悟を決めて1日1日練習を乗り越えていきたいと思います」。


さらに、世界各国の代表選考会の結果などを見て、自分がどの位置にいるのかを確認しているという小堀選手が、水泳部の五輪壮行会で語った決意は、「日本の中長距離種目は世界のレベルと少し離れてしまっているので、私が日本の中長距離を引っ張っていき、世界と戦えるようにしたい」。その言葉に日本代表としての自覚が垣間見えた。

Profile

Waka KOBORI ​[こぼり・わか]

スポーツ科学部3年。2000年生まれ。奈良県出身。湘南工科大学附属高卒。高校3年で日本代表に選出され、'18年のジャカルタ・アジア大会では800m自由形と1500m自由形で銅メダルを獲得。本学入学後は'19年の日本選手権1500mで優勝、インカレでも'19年・'20年と800m・1500mで2年連続2冠に輝く。'21年2月のジャパンオープンでは400m・800m・1500mの3種目で優勝。4月の日本選手権は400m優勝、800m2位となり2種目で派遣標準記録を突破して五輪代表の座をつかんだ。