学生の理解向上を目指して
-教員の教え方公開-

歯学部・歯学科 解剖学第2講座 山崎 洋介 准教授
「歯の解剖学実習」

学び・教育
2023年02月15日

近年、授業の在り方が問われている。現場では、各教員が自身の科目に合った教育方法を創意工夫し、学生の理解向上を目指して日々努めている。それぞれの科目ではどのように学生と向き合い授業を進めているのか。その手法と実践にフォーカスする「教員の教えるテクニック公開」。
今回は、歯学部・歯学科、解剖学第2講座の山崎洋介准教授の授業を紹介する。

3Dプリンターで作った歯の模型に触れさせ、歯科医の未来形も伝える

山崎洋介准教授は2019年度から、3Dプリンターで作成した歯の模型を実習授業に取り入れている。

「歯の解剖学」の授業は2年生の必修科目。32本ある人の歯の模型や教科書を見て、一本ずつ違う歯の形をスケッチしながら特徴を捉える学習を行っている。その授業中の教壇には3Dプリンターで作った歯の模型などが展示され、学生は代わる代わるそれらを見たり、手で触れたりしている。そして3Dプリンターの仕組みや可能性について山崎准教授から説明を受ける。

「教科書や市販の模型だけでなく、3Dプリンターで作った物を手に取って見ると、学生の食いつきが違います。見て楽しむ実習にしたいと考えて取り入れています」

黒板に絵を描くことも

模型歯のスケッチで構造を理解する

模型歯のスケッチで構造を理解する

同じ位置の歯でも人によって大きさや形状はさまざまだが、授業が進むと、抜去歯という歯の実物を見てどの歯か鑑別するという学習も行う。その段階では、CTと3Dプリンターを使って特殊な形状の歯や抜去歯のレプリカを作り、やはり学生に見せたり触らせたりするそうだ。

山崎准教授の授業ではiPadを早い段階から取り入れ、学生全員が購入して出欠確認やシラバスの提示、課題の提出などをアプリを使って行っている。准教授自身が新しいデバイスなど最先端の物に興味があり、アプリも自作する。裸眼で立体視ができるデバイスをデモ展示し、3D画像の医用応用についても解説している。

その一方で、一見アナログに思える板書も大切にしている。歯や内臓などの絵を多色のチョークを使い時間をかけて板書することもあるという。

両極端のようだが、そこには同じ思いがある。
「私は解剖学が専門なので、物の形にこだわりがあります。だから、絵を描いたり3Dプリンターで造形したり、とにかく手を変え品を変え、人体の形の美しさやすごさを学生に伝えたいという思いがあるのです」
 

歯科治療への応用

作成した実物を学生に見せ説明する

作成した実物を学生に見せ説明する

将来歯科医になる学生たちは、実際に3Dプリンターを使う日が来るかもしれない。日本でも普及しつつあるが、特にアメリカでは「デジタルデンティストリー」が進んでおり、スキャナーによって口腔内の3次元データを取得し、3Dプリンターを使って義歯や被せ物、あるいはその元となる型を作るというやり方が、かなり広がっている。作業効率化や高精度化、廃棄物が減るなど多くのメリットがある。

「歯科医が行う治療は、患者一人ひとりに合わせて、型を取り義歯や被せ物を作るというカスタムメードです。3Dプリンターは大量生産ではなく一つひとつの物を細かく作る機械ですから、歯科治療にとても向いているんです」

<プロフィール>
歯学部
山崎 洋介​(やまざき・ようすけ
)准教授
本学歯学部卒。本学歯学部助手、新潟大大学院医歯学総合研究科客員研究員、カレル大学(プラハ)客員研究員などを経て2017年から本学歯学部准教授。専門は顕微解剖学、発生生物学、歯の解剖学。