自分で未来を切り開く力を育むことを教育の根底に据えている

中学生の理科の授業の一コマ
日本大学藤沢高等学校・中学校は、神奈川県藤沢市の東京ドーム12個分という広大な敷地を持つ生物資源科学部に隣接する、全国にも希少な教育環境を有する。「生徒たちは、大学の研究や専門的な知見などに日常的に触れることができ、(小学校を含めると)最大で16年間の学びが共鳴、継続する中に身を置くことができます」と渡辺博校長は語る。
教育方針や目標について話す渡辺博校長
校訓は「健康・有為・品格」
同校は校訓である「健康・有為・品格」を現代的な文脈で再定義し、生徒の成長を全力でサポートしている。健康は単なる肉体的だけではなく、生徒同士や生徒と教員の良好な関係性から生まれる精神的なウェルビーイング(心身の健康)を重視し、「有為」は自分の能力を社会に役立てる精神を養う。「品格」は規則に縛られるのではなく、自律的なマナーや品性を磨く-といった具合だ。
「本校の教育の根底にあるのは変化の激しい時代にあって生徒が独り立ちし、自分で未来を切り開く力を育むことにあります。全教員の共通認識であり、すべての施策のベースになっています」(渡辺校長)。
生物資源科学部との密接な連携教育はその実現の大きな柱になっているが、特筆すべきは高大連携に加え、他校にない中大連携を強力に推し進めている点にある。
高大連携では生物資源科学部11学科による特別授業などを行っているが、中学校は1年生から始まる「総合的な学習の時間」で週に一度、大学生の支援を受けながら野菜作りのフィールドワークを実施。これは単なる農業体験ではなく、土壌作りから収穫、次年度への準備まで年間通して行う本格的なものという。
広報担当の池田直哉教諭は「学習内容の習得はもちろんですが、学問にひたむきに向き合う大学生の姿に触れることができます。中学生のうちにこうした刺激を受ける意義は大きい」と話す。
取材に応じる池田直哉教諭
生徒主体の三者面談
一方、同校が中高通じて今、最も力を入れているのがプレゼンテーション能力の向上だ。中学生の職業体験から高校生の「探究の時間」まで段階的にスキルアップを図っている。渡辺校長は「プレゼンテーション能力とコミュニケーション能力は、社会を生きていく上で必須になっています。自分の考えを的確に伝える力を養ってほしい」と語る。
中学2年生が職業体験をプレゼンする発表会を見学した。飲食店や病院、通信企業など藤沢市近隣の事業所で実際に体験した仕事の成果をグループごとに発表。2年生全員の前でマイクを持って話す際に緊張する生徒も多かった。
高校生は探究の時間のほかに1、2年次の二学期に三者面談を行うが、ここでは教師が生徒に助言するだけでなく、生徒本人が教師と保護者に対し、将来の目標と大学で学びたいことをプレゼンする試みを行っている。「生徒が自分の言葉で未来を語る機会は多くない。真剣に将来を考えるきっかけにもなります」と渡辺校長は意義を強調する。
中学2年生による職業体験をプレゼンする発表会

選択と集中
大学経営の根幹を揺るがす「2040年問題」が叫ばれているが、渡辺校長は「中高はその6年前にこの問題に直面する」と危機感を隠さない。そのために教育システムの再構築を令和8年度から加速させるという。「生徒が減少する時代だからこそ、日大藤沢にしかできない『選択と集中』を行い、学校の存在感を高めていきます」と語る。
(日本大学広報 令和8年2月号)