先行き不透明な社会を生き抜く力を付けてもらう教育に力を注ぐ

ヨットパーカー姿で校内を歩き回る高校の校長はそうはいないだろう。就任4年目を迎えた中島正生校長は「生徒に親しみを持ってもらうことを常に心がけています」と笑顔で語る。きっかけは米国の姉妹校を訪問した時、校長がすれ違う生徒の名前を一人一人覚え、親しく語り合う姿に感銘を受けたからだ。

こうした行動をすぐに実行に移せるのも、同校の伝統である「おおらかで明るい」校風が大いに関係している。教員と生徒の垣根が低いのはもちろん、生徒自身に自由な裁量を与え、自立した人間を育成するという教育方針がこの校風をゆるぎないものにしている。中島校長は「この伝統を継承し、教育内容を充実させて先行き不透明な社会を生き抜く力を生徒に付けてもらうことが我々の最大の使命」と強調する。

15の資質・能力

その象徴が6年前に策定した同校に入学すると身に付けられるとする「15の資質・能力」だ。素案作りから携わった小林和久教頭は「過去の会議録などの資料を掘り起こし、本校が大切にしてきたものを「〇〇力」という形で言語化しました。すべての教員が集まり、たくさんの議論を重ねて作り上げました」と振り返る。

「15の資質・能力」の中でとりわけ重視しているのが自己肯定力。中島校長は「根拠のない自己肯定力ではなく、『失敗を重ね自己を吟味しながらもへこたれずに前に向いて生きる力』と定義しています。受験生の保護者からも高い評価を得ています」と語る。全教員が自己肯定力を中心に「15の資質・能力」を意識した指導を行っている。


2年生の理工コースの化学の授業の一コマ

社会の縮図

そして同校を語る上で欠かせないのが、多様な考え方や進路を尊重している点だ。進学校でありながら特定の進学先を目指す「特進クラス」を作らず、さまざまな志望や特性を持つ多様な生徒が一つのクラスに混在する。「合理的ではないかもしれませんが、社会の縮図をクラスに作り出すという考え方に基づいています」(中島校長)。

2年生になると、「人文社会」「理工」「医療」の三つの文理融合コースに分かれたカリキュラムに移行するが、これらのコースも学力審査がなく、生徒の自己責任による希望選択で入れるようにしている。中島校長は「『このコースで勉強したい』と生徒が望めば、現時点で学力が伴わなくても認めています。多様な中から自分のやりたい学問領域を見つけて探究していくことを最も大切にしています」と話す。

実際、数学が赤点だらけだった生徒が土木学を学びたいと、日大工学部に進学。専門領域の数学に触れて面白くなり、大学で数学がトップクラスになったという。現在は大学院進学を決めて技術士の資格取得を目指している。

価値観をつかめ

2年生の理工コースの化学の授業を見学した。ルミノール反応を起こす実験を通してエネルギー変換を学ぶ授業で、生徒たちは積極的に質問するなど明るく前向きな姿勢が印象的だった。

中島校長は人生100年時代を迎え、生徒たちが自分自身で何が大切かを導き出してほしいと語る。

「それが『家族』でも『仲間』でも『平和』でも何でもいい。大切な価値観をつかんで卒業し、次のステップを踏んでほしい」と強く願っている。

(日本大学広報 令和7年11月号)