
高校生が学ぶ3号館。手前には中学校棟とさくらアリーナが位置する
生徒の進路に合わせ芸術学科やICTソリューション学科など5学科を設ける宮崎日本大学高校は、文武両道に技術と芸術を加えた「文武技芸」に優れた人材の育成を目標に掲げている。
大きな使命は二つ。付属校として日本大学への進学を導くことと、郷土・宮崎への貢献だ。
間野寛樹校長は「60年以上前に県知事と宮崎市長が日大に出向いて学校設立を直接お願いしたと聞いています。県と市の要請という特別な経緯があります」と説明する。 昨年11月、創立60周年の記念式典を宮崎市内で開催した。歌やダンスなど芸能の分野で活躍している卒業生が式典に彩を添える中、学校関係者だけでなく副知事や市長、県選出の衆院議員(当時)らも駆けつけ、盛大に祝った。

学校設立の経緯や教育目標について話す間野校長
コンクールに挑戦
文武技芸の「芸」は芸術学科の活動に象徴される。長崎日大高にも「デザイン美術科」があるが、芸術学科があるのは付属校で唯一。

芸術学科3年生の授業の様子。第2デザイン室で切り絵を作成していた
学科全員が美術部に属し、美術史や鑑賞研究、素描など美術系科目を週に9時間受ける。
1年で基礎を学び、2年で隣県・鹿児島出身の画家である吉井淳二の記念大賞展などのコンクールに挑戦し、3年では大学・専門学校の受験対策を行う。3年間の成果を発表する場として卒業制作展を開催している。
「技」はICTソリューション学科で究める。設立当時の商業科の流れをくむ伝統ある学科で、2年次からICTコース(情報部門)とマネジメントコース(商業部門)に分かれる。
前者は高度な専門情報科目を履修し、コンピューターのエキスパートを育成。後者は基本的な経済知識やビジネスマナーなどを学ぶ。
朗唱で学祖の教え
毎朝8時20分、全校生徒が各自の席で正姿黙想しながら、吉田松陰が学祖・山田顕義に与えた教訓「立志の教え」の朗唱を2分半、聞く。各教室の黒板の上方には扇に模してこの教えが飾ってある。「学祖の教えを大切にしながら、徳育重視の教育を目指しています」(間野校長)

教室にある「立志の教え」。生徒は毎日、正姿黙想して朗唱を聞く
前述の芸術学科とICTソリューション学科のほかに総合進学科と特別進学科、英語進学科がある。
「本校の中心となる学科」と位置付ける総合進学科は主に日大進学を目指す。部活動加入率が高く、スポーツ推薦で大学に進む生徒も多いという。
特別進学科は国公立、難関私大がターゲット。特進コースは7限の後も課外授業がある。
2年2組の地理の授業を見学した。期末試験が近いため、真剣に試験対策に取り組んでいた。

特別進学科の地理の授業。期末試験対策に取り組む生徒
英語進学科は語学が多いカリキュラムで、中国語や韓国語も学べる。ネーティブの先生らの指導は非常に熱心で、付属校の英語スピーチコンテストでは昨年2位、今年3位と上位を獲得している。
進学指導部長の安田竜作教諭は「日大進学者をさらに伸ばすために、外部模試の受験機会を増やしています。基礎学力到達度テストと模試の相関を分析し、効率的な指導につなげたいと考えています」と話す。

進学指導部長の安田教諭
就職率100%
就職指導に力を入れている点も他の付属校にない特徴だ。
宮崎県の調査によると同県の令和5年度大学進学率が47都道府県中40位であるのに対し、就職率は7位。地域社会の強いニーズが背景にある。
ICTソリューション学科や芸術学科の生徒が就職を志向する傾向が強く、総合進学科の生徒は公務員になるケースも多い。就職指導部長の和田康之教諭は「10年以上も就職率100%を維持しています」と誇る。 就職対策として公務員講座を開き、県内の公務員専門学校と提携、専門教員が2次の面接や作文の対策をバックアップしている。 履歴書の書き方や企業紹介、インターンシップなどを通して丁寧に指導。職種は公務員やホテル、銀行など幅広い。県内就職率は76%に上る。 日本大学卒業生向けに県内企業を紹介するプログラムも5年前から実施している。

就職指導部長の和田教諭
宮崎日大高の校訓は「明剛直」。明は知力、聡明の明も兼ねる。生徒たちは文武技芸の多方面で、明るく輝く日のためにそれぞれの能力を磨いている。