園児たちは広い園庭や園舎で伸び伸び育っている
日本大学創立130周年記念事業の一環として、東京都世田谷区の旧・農獣医学部の跡地に誕生し9年目を迎えた。少子化が深刻化し、周辺の幼稚園や保育園が相次いで定員割れを起こす中、同園には毎年定員を上回る応募が寄せられ、年齢区分によっては倍率が十倍を超えるケースも。その背景には、総合大学の付属園としての強みを最大限生かした「子ども・保護者ファースト」の取り組みがある。
教育と保育を一体化
認定こども園は、幼稚園と保育園の機能を併せ持ち、教育と保育を一体的に提供する施設。共働きの拡大や待機児童問題などの時代の変化に合わせ、平成18年に内閣府(現こども家庭庁)が主導して創設された。
保護者たちからは、子どもがみな同じ教育・保育を受けられる点が支持されている。

認定こども園は教育と保育を一体的に提供するのが特徴だ
人懐っこい園児
閑静な住宅街の一角にある同園を訪れ、まず驚いたのは敷地や建物の広さだ。園舎は鉄筋コンクリート造り地上2階建てで延床面積は2148平方㍍、二つの園庭を含む敷地面積は4271平方㍍と、小規模の小学校に匹敵する広さを持つ。この贅沢な空間に0~5歳児の計189人が伸び伸びと育っている。
園内を見学していると、コマ回しで遊んでいる5歳児が「見て見て!」と突然話しかけてきた。どの子も屈託がなく、生き生きとした明るい表情が印象的だ。
田中菜穂子園長は「当園の子どもたちは、とても人懐っこいのが特徴です。これは日大の学生や付属校の生徒たちが日常的に園を訪れ、深く関わっているからにほかなりません」と語る。
認定こども園について熱く語る田中菜穂子園長
医学部付属看護専門学校や、心理学を学ぶ文理学部の学生が実習に定期的に来園するほか、豊山女子高校の生徒も職場体験に訪れる。夏季のプールの時間には学部の学生がサポートスタッフに加わる。
「大勢の学生、生徒とひんぱんに触れ合うことで、園児たちは大人を信じ、人を好きになる力、いわゆる社会性や主体性を自然に育んでいきます」と今井美千代副園長は強調する。
取材に応じる今井美千代副園長
日大ファミリー
日大との連携はこれにとどまらない。近隣の三軒茶屋キャンパスの広大なアリーナを借りて運動会を開催するほか、生物資源科学部の農場での芋掘り体験も恒例行事になっている。七夕の季節には薬学部から願い事を書く笹が届けられ、園児たちがお礼の手紙を書くといった温かい交流も生まれている。
「園児たちに日大の付属園に通っているという明確な意識はまだありませんが、保護者を中心に家庭全体に日大ファミリーとしての絆が自然と育まれていると感じることは多いです」と田中園長は話す。
学年齢を越えた交流
4歳児が屋台を開いて遊ぶ「縁日」を見学した。
「わたあめ、どうですか?」。
折り紙で作った綿あめを店先に並べ、お客さん役の2歳児と付き添いの5歳児におぼつかない言葉で話しかける。こうした年齢区分を超えた交流ができるのも認定こども園のメリットだ。
物をもらうだけではなく、人に与える経験は幼児に新たな気付きや刺激を与える。2歳児に付き添う5歳児にも、年下の幼児を思いやるという新たな自覚が芽生える。
田中園長は「こうした先生や友だちとのつながりが積み重なって社会の中で生きていく力になっていく。保護者の方々とも力を合わせ心豊かな子どもに育つ環境づくりに力を注いでいます」と話す。

屋台で折り紙で作った「わたあめ」を売る園児たち
オープンこども園
認定こども園の園児は、1号認定(3~5歳児、幼稚園機能)、2号認定(3~5歳児、保育園機能)、3号認定(0~2歳児、保育園機能)の3つの区分に分かれるが、中でも人気が高いのが3号認定だ。今年度の入園では0歳児が8人募集枠に対し50人超、7人募集枠の1歳児には100人を超す応募がそれぞれあったという。
こうした人気を加速させているのが、大学のオープンキャンパスからヒントを得た「オープンこども園」だ。入園希望の親子に実際に園の生活を体験してもらうイベントで、園庭やプールでの遊びのほか、給食も味わってもらう。
今年で3回目を数え、「体験した保護者のほぼ100%が環境の素晴らしさに感動し、強く入園を希望してくれます」(今井副園長)。
通常の園見学も年間200人程度受け入れているが、実際に園生活を体験できるオープンこども園は親子に強いインパクトを与えることができるという。
また、近隣の親子を対象に無料で実施している地域の子育て支援事業も同園の人気に一役買っている。具体的には、週2回開設している「しろくめくさ」と呼ばれるお出かけ広場と、スイカ割り等のイベントを行う地域交流(月1~2回)で、室内や園庭で子どもを遊ばせながら、先生たちとさまざまな話ができる。

日大との連携強化をさらに図っていくのが今後の課題だ
可能性を引き出す
田中園長は「日大との連携をさらに深めたい。総合大学の付属園としてできることは何でもやりたい」と語る。現在、視野に入れているのは、園児たちにサイエンスやアートの分野にもっと興味を持ってもらうこと。「他の学部の学生たちと交流し、子どもたちの可能性をさらに引き出してあげたい」と話している。
(日本大学広報 令和8年9月号)