「スポーツ科学部では様々な競技の先輩方が活躍されていますし、自分自身を最も伸ばせる環境だと感じて、日大入学を決めました」
そう話す今井選手は、昨年のアジア・ジュニア選手権と世界ジュニア選手権の53kg級で優勝。豊富な国際舞台での試合経験から、体格差があり手足が長い外国人選手との戦い方も身に付けてきた。
「技術が上手い日本人選手に比べ、外国人選手は勢いや力で攻めてきます。日本人相手ならポイントが取れるところも簡単には取らせてくれませんし、力と力で勝負したら絶対に負けてしまうので、相手を動かしながら自分がより速く動いて、相手の横につくように心掛けています」
今年2月、スウェーデンで行われたクリッパン女子国際大会の53kg級決勝では、2018年世界選手権3位の中国選手を破り、シニアの国際大会で初めて頂点に立った。しかし、絶対女王・吉田沙保里選手の引退後、激戦階級となった53kg級には、超えなければならない大きな壁がある。強豪・至学館大学が誇る2人の現役世界チャンピオンだ。
昨年12月の全日本選手権では、階級を下げて参戦してきた世界選手権55kg級女王の向田真優選手と初戦でぶつかり、テクニカルフォール負け。また、入学早々に出場したジュニアクイーンズカップも、決勝戦で世界選手権53kg級優勝の奥野春菜選手にポイントを奪えないまま判定負けだった。
「奥野選手の得意な組み手が自分の苦手な組み手でしたし、タックルを封じられて中に入れませんでした。それができないと自分の良さが出せないので、試合をさせてもらえませんでした。力には自信があるしタックルも得意ですが、ジュニアの大会はそれだけで勝てても、シニアではタックルに入る前の崩しや組み手がしっかりできないと勝てないことを痛感し、その点を重点的に練習しています。技もあまりないので、もっと技術面を伸ばしていきたいですね」
これからは世界選手権(9月・カザフスタン)の出場権がかかる6月の全日本選抜選手権や12月の全日本選手権と、東京五輪の代表選考に直結する戦いが待っている。
「日本ではまだ3番手ですし、それもまぐれのようなもので…。上位の2人に勝たなければ世界の舞台にも出られないし、オリンピックも見えて来ません。あまり自信はありませんが、せっかくの自国開催ですから、簡単ではないけれど精一杯頑張って狙っていきたいと思います」
練習がオフの日は、寮の近くに住む姉と会って気分転換をすることも多い。62kg級での五輪出場を目指している今井海優選手(自衛隊体育学校)だ。
「食事の時にはレスリングのことをよく話します。もう1人の姉も弟もレスリングをやっているので、姉弟みんなで刺激し合っています(笑)」
Profile
今井 佑海[いまい・うみ]
2000年生まれ。京都府出身。海洋高校卒。
2017年、高校2年時に52kg級でJOCジュニアオリンピック(カデット)、アジア・カデット選手権、インターハイ、全日本女子オープン選手権(高校生の部)で優勝。2018年もJOCジュニアオリンピック、アジア・ジュニア選手権(インド)、インターハイ連覇に続き、世界ジュニア選手権(スロバキア)でも優勝を飾る。さらに全日本女子オープン選手権でシニア大会初優勝を飾ると、今年2月のクリッパン女子国際大会(スウェーデン)は全試合テクニカルフォール勝ちで制し、国際シニア大会で初のタイトルを手にした。4歳上の長姉・栞海(同志社大)、次姉・海優(自衛隊体育学校)に加え、高校1年の弟・海陽(海洋高)もレスリング選手として活躍している。