関東大学1部リーグに昇格して3年目、悲願のリーグ優勝へチーム一丸となって立ち向かう日本大学サッカー部に、今春20名の新入生が加わった。「社会に出ても通用する人間を目指す」ことをコンセプトとするチームの中で、果たして彼らは選手として、人としてどう成長していくのか。ユース時代から優れた実績を誇る注目の3選手に意気込みを聞くと、揃って「早くチームに貢献したい」と力強い言葉が返ってきた。

(取材:2025年4月3日)

高いレベルを楽しみながら成長していく

GK 小森 春輝(浦和レッズユース出身)

小森選手はスポーツ科学部への入学を志望。「自分の体のことを深く学べるところが面白いですし、コーチング学にも興味があるので、自分に合っている学部だと思いました」

小森選手はスポーツ科学部への入学を志望。「自分の体のことを深く学べるところが面白いですし、コーチング学にも興味があるので、自分に合っている学部だと思いました」

U-17日本代表にも選出された経歴を持つ小森選手は、身長187cmの高さとダイナミックなセービングが特長の大型守護神。昨年7月には浦和レッズの2種登録選手となり、トップチームの練習にも参加したが、そのレベルの高さに驚かされたという。

「西川(周作)選手(元日本代表GK)をはじめ先輩GKの方々と一緒に練習させていただきましたが、キャッチングなどの技術はやはりすごいなと感じました。自分も技術的なところをもっと頑張ってやらなければと思わせてくれましたし、楽しかったですね」

 

大学進学にあたっては、浦和ユースでの活躍を評価する他大学からも誘いを受けていたが、「フィジカル的なところを大事にしているところが魅力的だった」と、日大サッカー部を進路として選択した。

「僕はまだ筋力などの面が十分ではないので、足りないところをもっと強化したいという自分の思いと一致しました。実際、(アスレティックビレッジ稲城の中の)パフォーマンスセンターは本当にすごいとしか言いようがない。トレーニング設備はもちろんですが、ケアの設備も充実しているし、今までこれほどの施設は見たことがありませんでした」

 

入学後、小森選手はすぐにトップチームに所属。「やはり大学生は技術的にも高いし、強度も強い。そこが面白いです」と話す一方で、「自分はまだまだ技術的なところや筋力的なところが足りません。試合に出ることも大切ですが、自分としっかり向き合いながら、成長していくことが大事だと考えています」と、自らの現在地を見つめている。

 

「プレー中は、常にポジショニングに気を配っている」と話す小森選手。自らのセールスポイントを「相手の背後まで届くロングボール」だと言い、「セービングやコーチングでも魅せていきたい」と自信をのぞかせる。

さらに、大学1年目の目標として「チームに必要な選手になること」を掲げ、「関東リーグの優勝に貢献できるように頑張ります」と柔和な笑顔を見せた。

 

関東1部リーグでは開幕からサブメンバーとしてベンチ入りしていた小森選手は、5月24日の日本体育大戦で待望の初先発。3失点を喫するほろ苦い大学デビューとなったが、今後の活躍に期待したい。

Profile

小森春輝[こもり・はるき]

2006年生まれ。愛知県出身。埼玉・いずみ高卒。小・中学校まで、地元クラブチームで活動し、高校進学のタイミングで上京して浦和レッズユースに加入。守護神として日本クラブユース選手権(U-18)に3年連続で出場したほか、‘23年にはU-17日本代表にも選出された。‘24年12月の高円宮杯プレミアリーグプレーオフでもPK戦でビッグセーブを見せてチームのプレミアリーグ復帰に貢献した。

結果を残せるゲームメーカーに

MF 矢越 幹都(川崎フロンターレU-18出身)

高校生の頃、思うようなプレーができなくなった時期があったが、「サッカーを楽しもう」と気持ちを切り替えたことで、自然といいプレーが出るようになったという。「それからは、“楽しむ”ということを大切にしてやっています」

高校生の頃、思うようなプレーができなくなった時期があったが、「サッカーを楽しもう」と気持ちを切り替えたことで、自然といいプレーが出るようになったという。「それからは、“楽しむ”ということを大切にしてやっています」

三好康児(VfLボーフム)、三笘薫(ブライトン)、田中碧(リーズ・ユナイテッド)など、今や世界で活躍するトッププレーヤーたちが背負ってきた、“川崎フロンターレU-18の10番”。単なるエースナンバー以上の重みを含めて受け継ぎ、しっかりと結果を残してきたのが矢越選手だった。

 

「本当に偉大な人たちが付けてきた“10番”をいただいて、それに見合ったプレーをしなければという責任感もありましたが、あまりそれを意識しすぎるとプレッシャーとなって自分らしいプレーができなくなる。だから、そのプレッシャーを楽しむくらいの気持ちでやっていました」

 

当時から関東大学リーグの試合をよく動画で見ていたが、その中で「面白いサッカーをしているなと思った」と日本大学に興味を持ったという。

「練習参加させてもらった時に、プレーの中で求められるものが非常に高いレベルにありました。そういう環境が自分自身の成長につながるんじゃないかと思いましたし、人間性も大切にするというチーム方針の中で、ピッチ外でも人として成長できるだろうと…。もちろん、この素晴らしい施設(パフォーマンスセンター)があることも、日本大学を選んだ理由の1つです」

 

さらに、スポーツ科学部への入学についても、「授業で学んだことをサッカーにつなげられるというのが大きい。将来プロサッカー選手になるために、学べることも多いのではと思っています」と話した。

 

新入生の中ではGKの小森選手とともに唯一開幕からトップチーム所属となった矢越選手。チーム練習の中で、「高校の時は通用していたものが通用しなくなった」と、高校と大学での強度の違いを実感したという。「もっとトレーニングを重ねてフィジカルの強度を高め、自分が得意とする“ボールを持った時のプレー”にも磨きをかけないといけないと思っています」

 

それでも、ユース時代からボランチを務め、チームの司令塔として存在感を際立たせていた矢越選手は、「ゴールに結びつくラストパスや、自分で打つシュートなどを見てもらいたいですし、結果を残せるゲームメーカーになりたい」と意気込む。さらに「早く関東大学リーグに出場して、2ゴール2アシストを達成したい」と、自信に満ちた言葉で1年目の目標を語った。

Profile

矢越幹都[やごし・みきと]

2006年生まれ。神奈川県出身。県立川崎北高卒。小学生の頃から川崎フロンターレの下部組織に所属し、各年代で活躍。ゲームコントロール力と得点力を兼ね備えたボランチとして注目を集める。‘24年は川崎フロンターレU-18で背番号10を託され、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグEAST 2024ではクラブ史上初の準優勝に貢献した。

魅力的な環境の中で進化していきたい

MF 黒沢佑晟(前橋育英高出身)

大学生選抜が戦う大学日韓定期戦の試合を見て「質が高く、無駄のないプレーをしている」と、そのレベルの高さを感じたという黒沢選手。日大の練習に参加した際にも「自分に足りていない部分も多いので、もっと成長していきたい」と思ったという。

大学生選抜が戦う大学日韓定期戦の試合を見て「質が高く、無駄のないプレーをしている」と、そのレベルの高さを感じたという黒沢選手。日大の練習に参加した際にも「自分に足りていない部分も多いので、もっと成長していきたい」と思ったという。

今年1月の全国高校サッカー選手権で7大会ぶり2度目の優勝を飾った群馬・前橋育英高校の中心選手として活躍し、大会優秀選手にも選ばれた黒沢選手。その後は日本高校サッカー選抜に選出され、欧州遠征にも参加した。

 

「海外の選手はサイズが大きいですし、取られないだろうって思っていたところでボールを刈り取られということもありましたが、一番強く感じたのは、一人ひとりの試合に対する熱量が日本人よりはるかに大きいこと。自分は、そういう部分であまり声を出せていなかったので、もっと気持ちを入れて毎試合戦っていかないといけないと思いました」

 

近年、前橋育英高から日本大学サッカー部を経てプロになった選手も多くいる。将来はJリーガーになり、海外挑戦もしたいという夢を持っている黒沢選手にとって、日大は魅力的な環境に映ったようだ。

「昨年、熊倉ツインズ(熊倉弘毅:横浜FC、熊倉弘達:ヴァンフォーレ甲府)がプロ入りしましたし、それまでも日大卒業後にプロになった先輩方もいらっしゃると聞いて、興味を持っていました。それに加え、他の大学で練習参加した時に比べ、日大の練習はとても楽しかった。自分もこの雰囲気の中でサッカーをやりたいと思ったんです」

 

高校時代から、スキルの高さや状況判断力については高く評価されていた黒沢選手。自身のアピールポイントは「創造性豊かなプレーや相手の逆を突くプレー、攻撃の起点となるスルーパスなどは自信があるので注目してほしい」と胸を張る。その一方で、「体力的な部分がまだ足りないなと感じています。今はウイングバックをやらせてもらっていますが、スプリント量や、長い時間、長い距離を速いスピードで走るというのは苦手なので、まずそれに対応していかないといけない。筋力やアジリティの強化も必要だと思う」と、冷静に自身を見つめている。

「日々自分と向き合いながらトレーニングをしていきたい。パフォーマンスセンターに行くと自分のモチベーションが上がって筋トレに集中できるので、毎日やっています(笑)」

 

「日大が目指すサッカーのスタイルをまだできていない」と話す黒沢選手は、関東サッカーリーグ1部で戦う社会人チーム・日本大学N.(エヌドット)で大学1年目をスタートさせた。リーグ戦第5節まですべてに先発フル出場し、3試合目の南葛SC戦では1アシストを記録。その後トップチームに昇格すると5月24日の日本体育大戦の後半から途中出場し、大学リーグデビューを飾った。

 

自分自身の力をつけること、チーム内の競争を勝ち抜く自信を持ち続けること、そして高校の監督から贈られた「慢心しない」という言葉を胸に、黒澤選手はさらなる成長と進化を続けていく。

Profile

黒沢佑晟[くろさわ・ゆうせい]

2006年生まれ。群馬県出身。前橋育英高卒。地元サッカークラブ、前橋FCを経て、強豪・前橋育英高に進学すると、2年生の時からプレミアリーグ、全国高校選手権でメンバー入り。‘24年は全国高校選手権の全6試合でスタメン出場し、1ゴール2アシストで優勝に貢献し、大会優秀選手に選出された。さらに日本高校選抜にも選出され、欧州遠征を経験した。

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