高校2年の夏の大会前、足首を骨折して練習ができない時期に、“データ分析”というポジションでチームに貢献できると気づいた。
本学野球部に入った当初は、他の女子マネージャーと同じ仕事をしていたが、「もっと深く野球に関わりたい」という思いがずっと心の中にあった。そうした時、引退するアナライザーの先輩から声を掛けられ、手伝い始めた。そして、新チームになった際に改めて「アナライザーをやりたい」と希望し、正式にその任に就くことになった。
アナライザーの仕事は、相手校の試合動画を見ながら投手の配球や打者の特長を分析し、対戦時の指標としてチームに提供する。また自チーム分析では、打者ならば球種やコースの得意不得意を数値化し、選手自身がデータと向き合えるようにする。
「自分の力をチームに活かしたい」という思いは実現したが、その中では「マネージャーという立場で、選手に意見していいのか」と葛藤したこともあったという。だが、「言わないとチームも変わらないし、チームが勝てるんだったら言うしかないっていう気持ちでした」と、思っていることを積極的に選手に伝えた。その言葉に耳を傾けてくれる選手もいて、うれしかった。最近では片岡省吾監督から「このデータを出せる?」と頼まれることも増えた。

「私に聞いてくださるのは、認めてくださっているからかなとうれしく思います。何かを任されるということが、成果だと思っているので」と言い、「今は自分がやりたいようにやらせていただいています」と充実感もある。
リーグ戦期間中はアナライザーとしてデータ分析に集中するが、オフシーズンは女子マネージャーとしての仕事に取り組む二刀流。「先輩方が、私がデータに集中できる環境を作ってくださり、後押ししてもらっています」
今春、アナライザー志望の後輩女子が入部し、「まだ指導できるまでにはなっていません」と言いつつも、「今後もアナライザーをやりたい女子が入って来るかもしれないので、基盤をしっかり作ることが必要。その道筋を私がつくりたい」と意気込む櫻井マネージャー。
戦国東都の中で優勝をめざす野球部の一員として、「チームのためだと思うならすぐに行動すべきだと思っているし、少しでもチームの力になりたい」というのが「今の目標であり、1番強い気持ちです」と、凛として語った。
(2024年6月取材)
春季リーグ戦では、亜細亜大戦でのデータ分析が、次週の駒沢大戦でチームとして徹底され勝利に結びついたことがうれしかったという櫻井マネージャー。良い結果を出した選手に話を聞き、「データ通りに球種を張っていたから打てた」と言われ、大きな喜びを感じることもあったという。
Profile
櫻井 りん香[さくらい・りんか]
2005年生まれ。東京都出身。横浜隼人高卒。中学時代に女子軟式チームの一塁手兼投手として全国制覇を経験。高校では捕手として活躍するも2年時に大怪我を負う。’ 22年の全国高校女子硬式野球選手権は控えメンバーとして甲子園の土を踏み、優勝を飾る。