この春、スポーツ科学部は342名の第一期生を迎えた。その入学式で新入生代表挨拶を行ったのが沢田桂太郎選手。高校時代から日本を代表するトップアスリートとして世界と戦ってきた彼は、日大スポーツ新時代の幕開けを象徴する学生の一人。スポーツ科学部で彼が目指すものとは・・・。
沢田 桂太郎選手
井上 まずはスポーツ科学部への入学おめでとう。私が沢田選手を初めて見たのは、彼が高校2年生のインターハイの時。高校の監督が私の教え子で、「将来有望な選手がいるから見に来てほしい」と誘われまして。レースは惨敗でしたが、第一印象は悪くなかったですね。この子は伸びるだろうと。競技に打ち込む姿勢がよかったですし、負けた時にちゃんと悔し涙を流していましたから。その日は本人とは話しませんでしたが、私の中ではその時から日大へ勧誘しようと決めていました。
沢田 日大の井上監督が見に来ているのは聞いていたんです。でもその時はいいところを見せられなくて残念というより、負けた自分が不甲斐なくて挨拶する余裕もありませんでした。
坂本 その秋の国体のポイントレースで優勝。そこから一躍注目されるようになっていきましたね。彼のことはジュニア日本代表の合宿を視察しに行った時に見て知っていたので、しっかり成長しているな、と嬉しく思いました。合宿の時も一人で黙々と走っていましたし、何より楽しんで走っているのがわかって、こういう選手は将来日本を背負って立つ選手になるな、という直感がありました。
オールラウンドな走力と天性の駆け引きのうまさ。
井上 沢田選手の魅力は中長距離が走れて、スプリント力も併せ持っているところ。どんな距離のレースでも最終周に先頭集団にいたら、間違いなく1位で帰ってくる。あとは駆け引きのうまさ。あれは天性のものがあるなと。
沢田 じつは自転車のスクラッチっていう競技があって、初めて走った時に1位になれたんです。その時から最後のゴール勝負には長けているというか、レース勘が自分にはあるのかなとは思いました。ただ世界に出ると自分の走りはまだ全然足りないし、駆け引きもまだまだなんですけど。
坂本 沢田選手は上背もあるし、これから筋力をつけていけば、まだまだ伸びる。そういう意味では最高の環境が整った日大に進学したことは、いい選択だったと思うよ。
スポーツ科学部として全力でサポートしていく。
井上 スポーツ科学部は、沢田選手のようなトップアスリートをさらに世界レベルにまで引き上げる場で、その一期生として彼を迎えられたことは非常に嬉しいし、我々も全力でサポートしていこうと考えているんです。
沢田 スポーツを専門に学べる学部ができると聞いた時は自分も嬉しかったですね。施設も新しく、最新の設備が揃っているので、競技力を高めるために最高の環境だと思います。
井上 スポーツ科学部は実際に指導にあたる先生方もオリンピックの経験者や、ナショナルチームのヘッドコーチ経験者など、実践的な裏づけのある教授陣が多いんです。ぜひこの環境を活かして世界のトップアスリートを目指してほしい。
沢田 専門課程は来年からになりますが、トレーニング理論なども学べますし、スポーツに関する専門的なことが色々学べるのでとても楽しみです。
アスリートのために最高の環境を用意。
井上 多くの競技部の寮がある八幡山学生寮には専門のストレングス&コンディショニングコーチ、アスレチックトレーナーが常駐しているトレーニングエリアがありますし、バイキング形式で1日5,000キロカロリーの食事が摂れる食堂もあり、アスリートにとってこれ以上ない環境が整っています。トレーニングで追い込んで、ガンガン食べる。4年間で世界と戦える体が作れるはずです。
沢田 自分は初めての寮生活となるのですが、余計なことに煩わされず、競技に集中できる環境を用意していただいているのはありがたいですね。
坂本 ヘッドコーチとして言いますと、自分たちは代表合宿でしか選手を指導できない。一番肝心なのはそこではなく、それぞれのホームで普段どれだけやれるかっていうのが大事。そういう意味では、これだけの環境の中で練習に励める沢田選手は、本当に幸せ者ですね。
目指すは4年後の東京五輪。そのために日大を選んだ。
左:坂本 勉氏(日本自転車競技連盟 短距離ヘッドコーチ) 右:井上 由大(日本大学自転車部 監督)
沢田 自分がいま最大の目標としているのが、2020年の東京オリンピック。そこでメダルを取るためにこれからの4年間をどう過ごすか。それを考えたときに自分を一番成長させてくれる場所は日大しかないと思いました。
坂本 私も日大4年の時に開かれた1984年のロサンゼルスオリンピックに出たいという思いがあって、日大に入学したんです。日大で頑張ったおかげで出場することができ、自転車競技で日本人初となる銅メダルを取ることができました。オリンピックは普通の世界戦とはまったく違う。日本中が応援しているので、そこでメダルを取って帰ってくると、それまでとは違う世界が待っている。沢田選手にもその感じを味わってほしい。ましてや彼の場合は東京オリンピック。私なんかよりはるかにすごいものが味わえるはずですから。
沢田 自分もメダルを取って、坂本ヘッドコーチに続きたいです。自分が狙っているのはオムニアムという種目です。自分は長距離、短距離どっちもやっていて、両方わりと走れる方なんで、それが一番メダルに近いのかなと。
井上 今年のリオ代表に選ばれた日大OBの窪木一茂選手と同じ種目だね。オムニアムという競技は、陸上の十種競技みたいな種目。いろんなレースをこなして総合力を争うので、確かにオールラウンダーな沢田選手向きだと思う。
沢田 東京オリンピックの開催時、自分は22歳。選手としても脂の乗る時期で、こんな巡り合わせはなかなかないと思いますし、このチャンスを絶対に逃したくありません。大きな目標があると頑張れる。日大での4年間でどこまで自分を高められるか。メダルという目標に向かって悔いのない毎日を送ろうと思います。
Profile
沢田 桂太郎(さわだ・けいたろう)
1998年生まれ。宮城県出身。東北高校卒。トップアスリート推薦入学。スポーツ科学部1年。高校時代に自転車競技を始め、すぐにその才能が開花。高校2年時に全日本自転車競技選手権(ロード)、JOCジュニアオリンピックカップU-17(3km個人追い抜き)、国体(ポイントレース)と立て続けに優勝。高校3年時にはアジア自転車競技選手権の男子ジュニアタイムトライアルで1分03秒561の日本新記録を樹立し銀メダルを獲得した。
坂本 勉(さかもと・つとむ)
1962年生まれ。青森県出身。青森県立三戸高校卒。文理学部社会学科卒。日本自転車競技連盟短距離ヘッドコーチ。高校時代から自転車競技を始め、日大4年時に出場したロサンゼルスオリンピックで、自転車競技日本人初の銅メダル獲得という快挙を達成し「ロスの超特急」と称される。日大卒業後は競輪選手となり年間賞金王2回、35連勝、通算523勝など、数々の輝かしい成績を収めた。
井上 由大(いのうえ・よしひろ)
1961年生まれ。神奈川県出身。桐蔭学園高校卒。商学部商業学科卒。日大3年時に全日本大学選手権のロードレースで優勝を果たし、4年時はユニバーシアード日本代表。大学卒業と同時に自転車部コーチに就任し、2004年4月から自転車部監督に就任。部訓は「なにくそ精神」としており、2012年、前人未到のインカレ30連覇(通算50回)を達成した。