日大時代に女子サーブル種目に専念するようになってから、抜群のスピードと瞬発力の高さを武器に、日本を代表するフェンサーに成長した青木千佳選手。
158cmの小柄な体で、大きな選手たちを倒していくその姿は華麗にして壮快。
ついに掴んだ五輪の舞台。彼女の快進撃がリオで見られる。

青木千佳さん

ほんの1年前まで、私にとってオリンピックは夢でさえありませんでした。正直、昨年の春の時点ではオリンピックに手の届くような位置にはいなかったですから。それが昨年の6月に急遽アジア選手権に出場できることになり、なんと銀メダルを取ったんです。リオを意識するようになったのはそこからでしたね。

よく考えると色々な場面で私は運に恵まれてきたような気がします。日大に進学したのもそう。私がフェンシングを始めた福井の武生商業高校は全国制覇を何度もしている強豪校ですが、私の代ではインターハイ全国3位止まり。私個人も目立った成績は上げられませんでした。それなのに、日大の山崎監督が私に声をかけてくれた。正直高校卒業後も続けるかどうか迷いもあったので、あの時声をかけてもらえなかったら、いまの私はなかったと思います。

私は小さい頃から泳いだり走ったりするのが得意で、中学ではバドミントンをやっていました。そのためかフットワークの良さには自信があって、日大の山崎監督がそこに目をつけてくれたみたいです。その時に監督は「君はサーブルに向いている」と言ってくれて。私もその言葉を信じてサーブルに挑戦してみることにしたんです。

一瞬で勝負が決まるサーブルは自分向き。

青木 千佳さんのインタビューの様子

サーブルはフェンシングの中で唯一「斬る」動作が入る種目で、勝負が一瞬で決まることから、最もスリリングな種目と言われます。色々考えるよりも瞬間的な体の反応で勝負するタイプの私に向いていたみたいで、どんどんその面白さに引き込まれていきました。日大の佐藤コーチの指導もあってそのうち試合で勝てるようになり、インカレ、全日本と目標を一つひとつ達成していくうちに、気づいたらオリンピックにたどり着いていたという感じです。

自分の武器はフットワークを活かした細かいステップ。一瞬で逃げたり、相手の間合いにスッと入ったり、という動きは自然に身についているような気がします。

リオまであと少し。これからは新しい技を増やすよりも、自分がいまできることを磨いていく方が大事。自分の持ち味であるスピードとパワー、瞬発力を活かして、持っている技とフィジカル面を徹底的に強化していこうと考えています。

あともう一つ取り組んでいることはメンタルの強化。一瞬の迷いが負けにつながるだけに、サーブルはある意味メンタル勝負な面もあります。どれだけ自分を信じて攻められるか。相手の間合いに入っていくのは正直恐い。それでも踏み込んでいく。自分で体をコントロールできるように、練習中に自分といつも戦っています。

14対0からの逆転もある。そこがサーブルの面白さ。

最後まで何が起こるか分からない、というのがサーブルの魅力。15点先に取れば試合は勝ちなんですけど、14対0からでも巻き返しがきく競技で、そこが面白い。たとえば戦っているうちに相手の剣を見切ったり、相手の気持ちをドンと潰しちゃえば、ポンポン得点が取れる。逆を言えば最後まで油断できないスリリングな競技でもあります。最初は分かりづらいかも知れませんが、見ていただけたら最後までドキドキしながら楽しめると思います。

 

オリンピックに出るからにはメダルを目指して戦いたいと思っていますし、いままで自分がやってきたことをすべて出し切れるように、自分を信じて戦ってきたいと思うので、応援よろしくお願いします。

Profile

青木 千佳(あおき・ちか)

1990年生まれ。福井県出身。福井県立武生商業高校卒。商学部経営学科卒。ネクサス株式会社所属。高校からフェンシングを始めインターハイに出場。日大進学後にサーブル種目に専念し、頭角を現す。在学中にインカレ連覇を達成。全日本選手権個人戦女子サーブルでは2013、14年と連覇している。

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