昨年10月、本学馬術部は全日本学生馬術三大大会において6年連続となる三種目総合団体優勝を達成。障害飛越競技、馬場馬術競技、総合馬術競技のすべての種目で団体優勝という、他校を圧倒する完全勝利だった。
今秋には、新主将の今橋裕晃選手や細川映里子選手を中心に、大会記録を更新する7連覇に挑むことになる。日々練習に励む彼らが今思うことは…。

昨年10月、全日本学生馬術三大大会の障害馬術競技で団体優勝を飾り、三種目総合優勝6連覇へ好発進した。
馬上左より、今橋裕晃選手(桜珀)、菅原謙太郎選手(桜鎧)、陶器幸一選手(桜梟)、吉永一篤選手(桜照)、手前左より、諸岡監督、松本譲選手。

昨年10月、全日本学生馬術三大大会の障害馬術競技で団体優勝を飾り、三種目総合優勝6連覇へ好発進した。
馬上左より、今橋裕晃選手(桜珀)、菅原謙太郎選手(桜鎧)、陶器幸一選手(桜梟)、吉永一篤選手(桜照)、手前左より、諸岡監督、松本譲選手。

―― 馬術の楽しさや面白さはどういうところですか?

今橋 僕は小さい頃から馬が好きだったので、馬と一緒にいたくて馬術をやり始めたんです。日大に入ってからは勝てる喜びを味わえるところが楽しいですね。

細川 私も同じで、成績を残せるから楽しいですし、学生の馬術は団体戦もあるので、自分だけじゃなくてチーム全体として成績を残せるところがいいなと思います。一人一人が「チームのために」ってモチベーションを上げていける、そこが学生馬術の醍醐味の1つかなと思います。

―― キャプテンという立場になって思うことは?

今橋 去年はチームの成績がすごい良かったんで、今年はどうなるんだろうって思うことがあります。僕に懸かっている部分もありますし、主将だから部の中心となって、みんなの見本にならないといけないですし、毎日100パーセントの取組みや結果にはできないので、悩むことも多いです。

細川 悩んでたんだ(笑)。でも、本当に良くやっているなって思います。キャプテンと輸送の仕事の両立は体力的にも精神的にもしんどいと思うんですが、部員の前では弱音を吐かないし、弱いところも見せない…たまに同期にはポロっと言うこともありますが…さらに選手もやって、成績もしっかり残しているから、感心することが多いですね。

今橋 照れるなぁ。

細川 初めて言いました(笑)。

相性の悪い馬とペアを組まなければいけないこともある。
「嫌だなと思ってもやるしかないんで。普段、馬に触っているだけで馬も人を覚えてくるし、こちらも手入れしたり乗ったりしているうちに馬のことが分かってくる。コツをつかめば、いつのまにか乗れるようになっている」(細川)
「雑な人が触っていると、馬も性格が悪くなる。噛んでくるようになるね」(今橋)

相性の悪い馬とペアを組まなければいけないこともある。
「嫌だなと思ってもやるしかないんで。普段、馬に触っているだけで馬も人を覚えてくるし、こちらも手入れしたり乗ったりしているうちに馬のことが分かってくる。コツをつかめば、いつのまにか乗れるようになっている」(細川)
「雑な人が触っていると、馬も性格が悪くなる。噛んでくるようになるね」(今橋)

―― 後輩に対して、何か精神的なサポートは?

今橋 試合前に緊張しまくっている選手を少しでも楽にしてあげようって、円陣を組んだことがあります。

細川 今橋はそういうことを、すっと言える人です。周りを気に掛けて、下の子を楽にしてあげようとか。同期に対しても「あまり気負いすぎるな」とか「大丈夫だよ」とか、頻繁に声を掛けてくれます。
1・2年生の時は、試合でダメだったりすると廐舎の端っこで丸まったりしてたんですけどね。「もう立ち直れない。俺、無理」みたいにへこんでいたのを覚えてます(笑)。でも今は、自分を後回しにして周りを見てくれるし、チームに尽くしてくれているなって思います。

今橋 先日のキャプテン研修の中で、ペップトークの研修はとてもいい刺激になりました。僕の一言で部の雰囲気を変える、そうできるようになりたいですね。

―― 昨年の6連覇が掛かった三大大会、どういう気持ちで試合に臨みましたか?

今橋 普段の大会ではいつも緊張して、「どうしよう」って思うことが多いんですが、あの時だけは不思議に安心してたんです。大丈夫だって。障害馬術の第一走行が終わった次の日、第二走行の前に吉永(一篤選手)と「2人でジャンプオフやろうぜ」って話してたし。何故か安心感があったんです。
※優勝を決めるために障害の難易度を上げて競うプレーオフのこと。

細川 私はこれまで三大大会に出たことないんです。いつもレギュラーを取れそうなところまできて、結局は馬を取られちゃう。本当に毎回悔しくて…。以前は、試合の時は緊張して余計なことを考えてました。“日本大学”を背負って試合に出ることがすごい重荷に感じて、日大だから失敗できないとか、「日大は強い、勝てる」って周りから言われ、そういうのがすごい嫌だった。でも、3年生から総務の仕事をやらせてもらうようになり、最初は監督・コーチと連絡を取るのですら、すごい緊張していましたが、だんだん慣れてきて、冷静に自分の意見を言えたり、細かく分析して考えられるようになってきました。そうした頃に試合に出たら何か落ち着いてて、馬に乗っても余裕をもって考えられるようになりました。それで去年の秋、女子の障害競技と全日本選手権と、初めて学生戦でタイトルが獲れました。
その時は今橋のアドバイスも大きかったかな。決勝で初めて乗る馬になって、どう乗ったらいいか全然分からなかったので、今橋にアドバイスをもらい、言われたとおりにやったら勝てました。

今橋 こうやれって言われて、すぐにできるのがすごいよね。普通はできないですよ。

細川選手

細川選手

―― 日大の馬術部の良さはどういうところ?

今橋 誰にでもチャンスがあるってことですかね。僕も入部した頃は、全然馬に乗れなかったんですけど、監督にチャンスをもらって、今では三種目やらせてもらえるようになりました。誰でも絶対チャンスをもらえるので、そこでの頑張り次第だと思います。そういう時にチャンスをものにできるよう、準備しておくことが大切ですね。

細川 本当にそのとおりですね。みんな平等にチャンスをもらえて、チャンスをものにするかしないかは自分次第なんです。あとは雰囲気が和気あいあいで、仲良く楽しくできる。そこがいいところかなって思います。でも、練習になったらみんな切り替えて、メリハリをすごくつけられます。

今橋選手

今橋選手

―― 今年は三大大会7連覇が懸かりますが、その意気込みと個人の目標を教えてください。

今橋 もし7連覇できなかったら「連覇を止めた主将は今橋だ」ってずっと残るので、それだけは避けたい。こんなに監督もコーチもやってくれて、馬も揃えてくれているので、なんとか7連覇につなげて、去年に負けない成績を絶対に出したいと思っています。欲を言えば個人でも勝ちたいです。全日本学生での個人タイトルがまだないので。細川も渡邊も吉永もみんな持っているんですが、僕だけない。ここは獲っておかないと、顔が立たないですね。

細川 個人目標としては、去年、全日本選手権で勝てたので、それを連覇すること。あとは最後の年にようやくレギュラーが見えてきて、三大大会に出られる兆しがあるので、みんなと一緒に団体を取って7連覇を果たしたいです。去年は三種目全部獲って完全優勝だったので、今年は関東の予選も完全優勝してから全日本学生も完全優勝を目指していきたい。自分が出る以外の種目もしっかりサポートしていけたらなと思います。

今橋 7連覇もだけど、8連覇、9連覇できるチームを作らないとね。

細川 下を育てていってね。

―― 監督は10連覇を目指すと…。

今橋 もちろん、そうですね。頑張ります。

渡邊瑞生選手(生物資源科学部4年)の証言

渡邊瑞生選手

渡邊瑞生選手

今橋主将は、このハードスケジュールの中でキャプテンも選手も一緒にやって、なおかつ選手でもトップクラスにいつもいるので、プレッシャーもすごいと思います。私は一緒に総合馬術の競技をやっていますが、すごい刺激になるし、いいライバルだと思っています。

吉永一篤選手(生物資源科学部3年)の回想

吉永一篤選手

吉永一篤選手

あの日、下見の時はあまり緊張していなくて、「俺らでジャンプオフですね」って今橋さんとふざけていたのは記憶にあります。しかし、試合が始まって待機馬場に入ったら、もう頭が真っ白になっちゃって…僕は二走目の記憶がないんです。気が付いたらガッツポーズしてました。(障害馬術競技は吉永選手が個人優勝、今橋選手が2位で、団体優勝を飾る)

Profile

今橋 裕晃[いまはし・ひろあき]

1994年生まれ。生物資源科学部森林資源科学科4年。大阪府出身。大阪初芝立命館高校卒。​
2年生で全日本学生馬術三大大会2015に出場し総合馬術競技2位(馬:桜覇)、昨年の全日本学生馬術三大大会2016では、障害飛越競技2位(馬:桜珀)、総合馬術競技2位(馬:桜覇)となり三種目総合6連覇に貢献。今年3月の三獣医大学馬術大会で2競技で優勝を飾る(馬:桜陽)。今季から部員37名を率いる主将を務める。

細川 映里香[ほそかわ・えりか]

1996年生まれ。生物資源科学部食品ビジネス学科4年。北海道出身。北海道静内高校卒。
昨秋の関東学生馬術女子競技大会 障害飛越競技で学生の試合で初の1位(馬:桜恋)を獲ると、その勢いで翌週の全日本学生馬術女子選手権大会も見事に優勝。さらに今年3月の関東学生春季大会PartⅡでも馬場馬術2競技で優勝(馬:桜陽、桜雲)と波に乗っている。

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