この春、保健体育審議会に660名の新入生が加わった。
中でも注目は、スポーツ科学部に入学した、ソチオリンピック銀メダリストの平野歩夢選手(スノーボード・ハーフパイプ)と、冬季アジア札幌大会デュアルモーグルで銀メダルを獲得した原大智選手(フリースタイルスキー・モーグル)。
来年2月に迫った平昌オリンピックに懸ける思いなどを語ってもらった。

金メダルは、獲らなければいけないもの。

原大智選手(フリースタイルスキー・モーグル)

原大智選手(フリースタイルスキー・モーグル)

2016-2017シーズンの初めは、自分が思っている通りの滑りができていて、今年1月のW杯で4位に入るなど順調でしたが、カナダでの大会あたりから少し歯車が狂い始めてきて、その後は点数が伸び悩むことが続きました。やはり、課題としているエア(ジャンプ)を何とかしなければ良い点数が出ないと、改めて実感したシーズンでしたね。技術的には“踏み切り” のところが一番弱く、そこが世界レベルからは劣っているなと思いました。この夏の間にウォータージャンプの施設を使い、フォームをチェックしながら強化していきたいと考えています。

その一方で自分の武器であるスピードをもっと伸ばしていきたいですね。スピードを速くするにはターンが上手くなくては減速も加速もできないので、ターンの技術向上を重点的にやることで、スピードの限界値も上がると思っています。あとはエアに対する自信が必要かなと。恐怖があるとそれ以上のスピードが出せないということもあるので、ターンもエアもしっかり比例してやっていきたいと思っています。

金メダルを獲ることが感謝のしるし。

小学生の頃にモーグルを始めて8年ぐらいですが、これまでには辛いなとか辞めたいと思うことも結構ありましたね。今年の世界選手権で、同年代で共に戦ってきた堀島(行真)選手が優勝した時、自分は体調不良で滑ることもできなかったので、とても辛かった。何で自分じゃないんだって、1ヵ月くらい沈んでました(笑)。

でも、カナダへスキー留学をさせてくれた両親にはとても感謝していて、その気持ちに応えるためにも、オリンピックまでは辞められない、オリンピックで表彰台に立つ姿を見せたいという思いで気持ちを立て直していきました。今は金メダルというのが一番の目標ですし、獲らなければいけないものだと思っています。オリンピックでの優勝が、競技人生のすべてだというくらいに感じています。

将来のことを考えて日大に入学。

大学に進学することにしたのは、競技引退後のことを考えてです。スポーツ人生よりも、その後の日常生活の方が長いので、その時、社会に出て自分は何をするのか、何ができるのかを分かっていたいし、そのやり方を学べると思ったからです。特に、スポーツのメンタル面や体の構造を知識として学べるところが面白そうだなと思い、スポーツ科学部に入ることに決めました。

中学・高校ではひたすらスキーをやり続けてきたので、大学では友達と一緒に遊ぶなど学生生活も楽しみたいですね。練習も大切ですが、リラックスする時間も必要だと思うので、焦らず取り組んでいこうと考えています。

平昌での金メダル、必要なのは自分自身の成長。

平野歩夢選手(スノーボード・ハーフパイプ)

平野歩夢選手(スノーボード・ハーフパイプ)

ソチオリンピック、スノーボード・ハーフパイプで15歳の銀メダリストとなり、世界を驚かせた平野選手。その後もX GamesやW杯などで輝かしい実績を重ね、二度目のオリンピックとなる平昌では金メダルを狙う。 

 

スノーボード(以下スノボ)をやりながら大学に籍を置くというのは正直難しいと思っていました。しかし、日大がスノボに集中できる環境を用意してくれたこともあって、日本にいる時は私生活もリズム良く過ごせるだろうと思いましたし、ここで人間関係を広げることができれば、自分の経験値にもなるかなと考えて進学を決めました。ただ、平昌まであと1年もないので、今はスノボに集中して時間を使っていきたいと思っています。

常にトップを狙う意識でいないと厳しい。

ソチオリンピックに出たことで、学習できたことも多くありました。自分の技術はまだまだ若くて、この先やるべきことやプラスになるものをどれだけ積み重ねていけばいいのか、ソチ後はそういうことを意識して生活してきました。

平昌ではもちろん金メダルを狙っていきますが、1年くらい前からコーチとスケジュールをまとめて、練習や試合のプランを立てています。この1年の間に何をすべきか、どうすれば勝てるかを考え、そのビジョン通りに納まるように練習しています。そこでも、自分が思っている以上の限界を考えてプランを立てていないと、自分より若い世代の子たちがいきなり出てきたりするスポーツなので、自分もずっと今の位置にいられるかどうか分かりません。だから、常にトップを狙った練習内容や新しい技の開発を考えていないと厳しいですね。


体ひとつで向き合っていく競技なので、恐怖を覚えることもありますが、そうした怖いという気持ちも抱えて技にチャレンジしないと、トップレベルの大会では勝てません。それを乗り越えるか乗り越えられないかで成績も変わってくるので、自分の名前が付けられるくらいの凄い技も、リスクを背負ってやっていかないといけないと感じています。

金メダルの、その先の挑戦。

平昌の後には東京オリンピックがありますが、せっかくここ(三軒茶屋キャンパス)にいい練習施設があるので、新しい競技種目になったスケートボードで挑戦するということにも、少し興味があります。

また、現役のうちに成績と同時に将来の自分の土台を作りあげていきたいし、やれることを広げたいと思っています。できれば日本のスノーボードの環境をもっと良くしたいですね。ソチの僕の姿を見てスノボを始めた子供が増えたというのは、僕がスノボを始めた時と同じ景色というか、何かに影響されたという意味では同じです。夢も将来もそうですけど、あきらめずにやってきて、今、自分がそういう立場で見られているというのは、続けてきて良かったなと思うし、これからもっと価値のある人間になっていきたいと思います。ですから、引退するまでは色んなことをぶっちぎってやっていきたいですね(笑)。

Profile

原 大智[はら・だいち]

1997生まれ。スポーツ科学部競技スポーツ学科1年。東京都出身。カナディアン・スポーツ・ビジネス・アカデミー卒。
小学校6年生の頃から本格的に競技としてモーグルを開始。16歳で単身カナダへスキー留学し、大会出場を重ねながらスキルを磨く。
その後、モーグル日本代表入りを果たし、昨シーズンはW杯年間ランキングで日本勢最上位の8位をマーク。今シーズンもW杯レイクプラシッド大会で4位、冬季アジア札幌大会のデュアル・モーグルで銀メダルを獲得。現在はチームジョックスに所属し、川場スキー場、NASPAスキー場を練習拠点として活動している。

平野 歩夢[ひらの・あゆむ]

1998年生まれ。スポーツ科学部競技スポーツ学科1年。新潟県出身。開志国際高等学校卒。
4歳から兄の影響でスケートボードを始め、半年後にはスノーボードも開始。小学校4年でプロ契約、14歳でX Games史上最年少の銀メダル、TTRワールドスノーボードツアーのハーフパイプ部門で最年少の年間王者。2014年ソチ五輪での銀メダル獲得は、五輪スノーボードの最年少メダリストとしてギネス世界記録にも認定された。2015年はワールドスノーボードツアープロシリーズ・男子ハーフパイプ部門でシーズン王者。2016年もLAAXオープンで優勝、X GAMES OSLOでも優勝を飾る。

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