第92回全日本大学総合卓球選手権大会(団体の部・7月13〜16日/横浜武道館)で日本大学は男子が3年連続の3位。女子はベスト8で大会を終えた。

 今年の春季関東学生卓球リーグ戦で38年ぶりの優勝を果たした男子は、その勢いを駆り1979年以来、43年ぶりのインカレ優勝を狙った。
 だが、予選リーグから決勝トーナメントまで順調に勝ち上がった準決勝で、過去8回の優勝を誇る愛知工業大学と激突。強豪校を相手にフルゲームの死闘を演じたが、惜しくも敗れた。

個々の実績で上回る愛工大に挑戦

   あと1点取れていれば……。勝負に「タラレバ」はないと分かっていても悔やしさが込み上げる。
 2019年と2021年(2020年はコロナ禍で中止)優勝の愛知工業大学との準決勝。この大一番に日大は海外リーグ経験も豊富な小林広夢(スポーツ科学部3年)を1番に投入し、2番にはパリ五輪代表選考レース4番手のスーパールーキー吉山僚一(スポーツ科学部1年)、3番にチームの大黒柱である加山裕(スポーツ科学部4年)と吉山のダブルスというオーダーを組んだ。

 加山と吉山は愛工大名電高校の先輩と後輩という間柄。大学に入ってからはこれが初ペアだが、高校時代には海外ツアーに出場し、2019年ITTFジュニアサーキット プレミアム チャイニーズタイペイ ジュニア&カデットオープン男子ダブルスで優勝した経験を持つ。

 団体戦は最大5マッチのうち3マッチを先制したチームに軍配が上がる。そのため3番までで勝負が決まらなければ、4番に切れ味鋭いバックハンドが武器の伊藤礼博(経済学部2年)、5番には加山が控えた。

 対する愛知工業大学は1番に2022年高校三冠王の鈴木颯(1年)、2番にパリ五輪代表選考レース3番手で今年5月の世界選手権ダーバン大会日本代表(怪我のため出場辞退)の篠塚大登(2年)、3番に2021年高校三冠王の谷垣佑真(2年)と篠塚のダブルス、4番に2022年世界選手権成都大会団体戦日本代表の横谷晟(3年)、5番に谷垣というオーダー。個々の実績で一枚上を行く手強い布陣である。

マッチポイントの1点に泣いたダブルスの敗戦

   日大は先陣を切った小林の動きがやや鈍く、鈴木にストレート負けからの出足となった。
 小林といえば、昨季はドイツ・ブンデスリーガ男子2部で海外経験を積み、今季はTリーグにも参戦する伸び盛りの選手だ。
 ミスの少ない安定感のあるプレーに加え、一発で得点できる決定打を磨いている最中だが、今回のインカレではコンディションの調整に手を焼いた様子。「これでは通用しない。次はしっかり調整して臨みたい」と話していた。

 2番の吉山は篠塚とのエース対決にゲームカウント3-1で快勝した。
 第1ゲームは奪われたものの第2ゲーム以降、強い逆横回転をかけたYGサービスを軸に3ゲームを巻き返した吉山。「僕が負けたらチームが負ける。それくらい自分にプレッシャーをかけて戦った。集中力がめちゃくちゃ高かった」と1年生ながら胸を張った。

 この勢いをダブルスにも持ち込んだ吉山と、それに引っ張られるように躍動した加山はダブルスで実績のある篠塚/谷垣から2ゲームを先制。第3ゲームも10-8で先にマッチポイントを握ったが、ここでペア歴が浅いがゆえのコミニュケーション不足が露呈し、計3回のマッチポイントを逃してしまった。

 その後、相手のマッチポイントを2回しのいで粘ったものの、結局このゲームを13-15で落とした2人。一方、流れを掴んだ篠塚/谷垣が第4ゲーム、第5ゲームも奪って逆転勝利を決めた。

 あと1点が取りきれず、がっくりと肩を落とす加山と吉山。
 吉山は「ゲームカウント2-0の10-8になって、このゲームで終わらせないと4、5ゲーム目はきついなと思った。ラリーになった時、僕らの連携に凡ミスが多かった」と反省を口にし、加山も「反省する点は多い。相手も必死なんでどうしようもない部分もある」と力なく話した。

「打倒・明治大」は必ずや秋季リーグで

  要のダブルスを落としたことで、流れは一気に愛知工業大学に傾いた。そんな意気消沈ムードの日本大学にあって気を吐いたのは4番の伊藤だった。

「ダブルスが負けた瞬間、『任せて下さい!』と言ってコートに出て行った。頼もしかった」と振り返るのはチームをけん引して今年11年目の氏田知孝監督。
 伊藤はその言葉どおり、世界選手権日本代表の横山に対し「対策よりも気持ちで押し切るしかないと思って、思い切り攻めていった。5番の加山さんに何としても回したい」という強い気持ちで得意のバックハンドを振り抜いた。そして、フルゲームの大接戦を制し大金星を挙げた。

 伊藤の大勝利によって、勝負は隣コートで試合を始めていた加山に託された。相手の谷垣は愛工大名電高校の後輩とあって加山の手の内を知り尽くしている。

  第1ゲームは台上で積極的に攻めていった加山が14-12の接戦で奪った。しかし、第2ゲーム以降は加山のフォア前にサービスを集めた谷垣が先手を取る展開に。
加山も懸命に打開を試みたがレシーブが浮いたりミスが出たりして後手に回り、谷垣に3ゲームを奪われて万事休す。
これが自身最後のインカレとあって、加山の今大会に懸ける思いは強かっただけに、「悔しい。それだけで何も言えない」と言葉を失っていた。

 日大は常勝軍団の愛知工業大学に一歩及ばず、マッチカウント2-3で惜しくも敗れた。これに勝てば昨年のインカレ覇者である明治大学との決勝が待っていた。

明治大学は春季関東学生卓球リーグ戦で唯一、日大が負け越したチームだ。そのためメンバーたちは「打倒・明治大」を掲げインカレでの雪辱に燃えていた。
そのチャンスを逃した悔いは残るが、今回の結果を真摯に受け止め、この悔しさを秋季関東学生卓球リーグ戦にぶつけようと気持ちを切り替えている。
その目に映るのは明治大学へのリベンジと春秋リーグの制覇だ。

<男子 大会結果>
優勝 愛知工業大学(2年ぶり9回目)
準優勝 明治大学
3位 日本大学、中央大学

<女子 大会結果>
優勝 愛知工業大学(2020年の中止を挟む4年ぶり5回目)
準優勝 神戸松蔭女子学院
3位 中央大学、東洋大学

<日本大学男子 結果>
●予選リーグ:
日本大学 3-0 京都産業大学
日本大学 3-0 中京学院大学

●決勝トーナメント:
1回戦 日本大学 3-1 龍谷大学
2回戦 日本大学 3-1 専修大学
準々決勝 日本大学 3-0 立命館大学
準決勝 日本大学 2-3 愛知工業大学

<日本大学女子 結果>
●予選リーグ:
日本大学 3-0 熊本学院大学
日本大学 3-0 東北学院大学

●決勝トーナメント:
1回戦 日本大学 3-0 高知工科大学
2回戦 日本大学 3-1 國學院大学
準々決勝 日本大学 0-3 愛知工業大学

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