秋季東都大学野球リーグ最終週。優勝のかかる日本大ほか、どこも一戦必勝の大混戦は、まるでプロ野球のCSのよう。勝ったほうが優勝の大一番を制したのは……。
2回戦 試合前円陣を組む日本大ナイン 【日本大学】
「ウチは優勝もあれば、入れ替え戦もある。なんというか、まれに見るシーズンだと思います」
春の覇者・青山学院大の安藤寧則監督がもらしたように、大混戦となった秋の東都大学リーグ。日本大、國學院大、青学大、中央大に優勝の可能性があり、一方で日大以外は最下位もありうるという胃の痛くなる展開で最終週を迎えていた。1回戦。中大、國學大が敗れてプレーオフ圏内からも去ると、優勝争いは日大と青学に絞られた。日大は、この直接対決に1勝すれば2016年秋以来のV。青学にとって、春秋連覇への道は2勝しかない。
日大・片岡昭吾監督は当然、「勝てば優勝」とわかっていた。
「守りから勝つ、とずっといってきて、第4週を終わるまで1対0の勝利が2試合、2対0が1試合、2対1が1試合。1点差を3試合を粘り強く守り、勝ちきっているのはこのチームの成長です。試合のなかで、普段のプレーができているのは、練習だけではなく、決めごとを徹底するなどの生活も含めた日常があるから。優勝のかかった試合を戦えることは自信にしていい。楽しみです」
確かに。第4週までの11試合時点で、日大は7勝4敗と首位に立っていた。特筆すべきは、僅差の接戦に粘り抜くディフェンス力だ。7勝の内訳を見ると無失点が3、1失点が4。ただ、そこまでのチーム打率は1割5分(313打数47安打)に過ぎない。裏を返せば、好投手ぞろいの相手に対して、最少失点に抑えないと苦しい試合になるということだ。
青学1回戦は、その「苦しい試合」になった。初回、エース・市川祐(法学部2年・関東一)が、高校の同級生・初谷健心に2ランを浴びるなど、いきなり5失点だ。打線も、ドラフト上位候補・下村海翔の力のあるストレートと変化球を絞りきれず、6回まで1安打で二塁さえ踏めない。その間、青学打線は日大投手陣を打ち込み、大量10点で勝負あった。片岡監督は振り返る。
「(相撲でいえば)仕切り負けですね。市川は低めの制球が持ち味ですが、今日はコントロールミスもありました。そこを見逃さない青学打線の集中力はさすがです」
2回戦 初回、適時打を放つ友田 【日本大学】
仕切り直しの2回戦。勝てば優勝と日大の王手に変わりはないが、先勝した青学にとってもそれは同じこと。やはりドラフト上位候補の常廣羽也斗を先発に立ててきた。日大は初回、2死二塁から、常廣の初球ストレートを、友田祐卓(法学部4年・九州学院)がバットを折りながら気迫で左中間へ。幸先のいい1点を先行した。投げても、先発の坂尾浩汰(危機管理学部3年・龍谷大平安)は1、2回と三者凡退。幸先のいい立ち上がりだ。だが、3回。1死二塁から2ストライクと追い込みながら、3球目のストレートを中野波来にはじき返されて同点、さらに手塚悠に逆転適時打を浴びた。
2回戦 5回1/3を投げ粘投を見せた坂尾 【日本大学】
打線は、「立ち上がりは逆球が多かったけど、途中からそれをうまく利用した」という常廣に手こずり、初回の2安打以降沈黙。となると投手陣は「これ以上点をやれない」と力が入る分、投げミスも生じやすい。6回にはタイムリーと押し出し、さらに中島大輔に満塁本塁打を浴び、思わぬ大差がついた。反撃が期待された8、9回も走者を出しながら、出力を上げた常廣の前に6三振で万事休す。優勝のかかる試合を連敗し、日大の秋は春に続く2位で幕を閉じることになる。
他チームのように、投手陣にドラフト上位候補もいなければ、豪打連発のスラッガーもいない。7勝はしているが、相手より安打数で下回りながら、泥臭く粘り勝ったのが4試合だ。だが「そういう戦い方で優勝して、"これが東都だよ"といえればよかったんですが……」と、冷静な片岡監督もさすがに肩を落とした。
「野球にミスはつきものです。それでも、2ストライクから同点打を浴びたり、やってはいけないミスがある。戦うごとに力をつけてはいましたが、まだまだやるべきことはありますね」
この日はチーム5安打中3安打と、一人意地を見せた友田主将はいう。
「勝てば優勝、負けたら大学野球の引退という試合。青学は強かったですが、首位で最終週を迎えたことで、自分たちのやってきたことは間違いではなかったと思えました。投手陣含め、下級生が多く残るので、次はやってくれると思います」
そう。投手陣には市川、坂尾、山内翔太(スポーツ科学部3年・習志野)、江川颯太(スポーツ科学部1年・西日本短大付)らが残るし、打線にも下級生は多い日大。「次はやってくれる」はずだ。
秋季リーグは、青学が春秋連覇を遂げた。だが思えば昨秋の青学は、連勝すれば優勝の最終週、勝ち点を落として3位に終わっている。「1年前、同じ状況で優勝できなかった。その悔しさを晴らそうとやってきた結果が、春夏連覇です」とは、この日殊勲の満塁弾を放った青学の中島主将だ。この言葉をそのまま、日大ナインに贈ろう。
優勝は逃したが、最後まで諦めないプレーを見せた日本大学野球部 【日本大学】
ベンチ外となったメンバーとマネージャーらも日本大学吹奏楽研究会、応援リーダー部と共に最後まで応援を届けた 【日本大学】
東都大学野球秋季リーグ戦結果
【全試合結果】
第1週
1回戦 日本大3—1國學院大
2回戦 日本大1—0國學院大
第2週
1回戦 日本大6—1東洋大
2回戦 日本大2—8東洋大
3回戦 日本大0—6東洋大
第3週
1回戦 日本大2—6亜細亜大
2回戦 日本大2—1亜細亜大
3回戦 日本大5—1亜細亜大
第4週
1回戦 日本大0—2中央大
2回戦 日本大2—0中央大
3回戦 日本大1—0中央大
第5週
1回戦 日本大0—10青山学院大
2回戦 日本大1—9青山学院大
最終順位2位(7勝6敗0分 勝率0.538 勝点3)
【表彰選手】
敢闘賞 市川祐[初]
ベストナイン
捕 手 友田佑卓[初]
三塁手 谷端将伍[初]