逆転優勝へ導く覚悟

逆転優勝に向け負けられないカード

春季東都大学野球リーグ第5週は、日本大が首位を走る青学大と対戦。1戦目は落としたが、迎えた2戦目。谷端将伍内野手(経済3年・星稜)の勝ち越し右越えソロ本塁打で3―2と競り勝ち1勝1敗。8連勝中の青学大に土をつけ、19年秋から続く連敗を16で止めた。第3戦は、3回途中から登板した市川祐投手(法3年・関東第一)が6回2/3を投げ青学大打線を1安打無失点に抑える好救援で勝利に導いた。

この2試合、片岡昭吾監督の采配が光った。

宿敵・青学大戦を迎えるにあたり、選手たちにこう話したという。「意識するな、というよりは、もう意識をしろ、と。強烈に意識をして、もし負けていればそのプレッシャーもあるだろうし。勝っていれば勝ち切るプレッシャーにもなる。思い切って意識をして勝ちに行こうと話をしました」。上位打線に打撃好調な選手を並べ、積極的に打ちにいく。投手は、復調してきた坂尾浩汰投手(危機管理4・龍谷大平安)を2試合、連投で先発に起用。前半は坂尾の変化球で交わし、中盤からは山内翔太投手(スポーツ4・習志野)、市川祐投手(法3・関東第一)の力強い真っすぐを武器に翻弄(ほんろう)した。片岡監督は「最後の最後まで諦めずに。ペンチもしっかり気を送って。後から出る選手も準備ができていた。緊張感の中で野球ができました」と、チームの成長にも手応えをつかんだ。
日本大は残り2試合、21日の中大戦と、24日の国学院大戦と逆転優勝のためには負けられない戦いが続くが、選手たちは最後まであきらめずに、前を向いて戦っている。

能登半島地震で被災した祖父母のために。「結果で元気づけたい」

ここまで打線を引っ張っているのは、開幕から3番に座る谷端だ。10試合を戦い、リーグトップの4本塁打を含む14安打6打点。打率は3割6分8厘。リーグ2位の打率で、首位打者も狙える位置にいる。この好調について谷端は昨年の経験を挙げる。「去年、好投手と対戦して自信がついたことが1番大きい。あとは積極的に振りにいけてるってことが、ヒットやホームランにつながっていると思います」と、好調の要因を口にする。
昨年は東都大学野球1部リーグから6人の投手がドラフト1位に指名された。「それぞれ決め球にすごくいい球種を持っている投手が多かった。追い込まれる前に、早めに打ちにいった。それが1球で捉える自信になったと思います」。狙い球を徹底して狙う。精神的な成長もつかんだ。「例え、狙っていない球で空振りをしても仕方ない。気持ちの割り切り、整理ができるようになったんです」。相手投手のストライク球、調子の悪い球を見極め、ゾーンを上げ低めの球には手を出さない。「昨秋までは、2ストライクに追い込まれてから『もう打てない』って自信がなかった。でも、今年は打席での迷いが消え、しっかりコンタクトができるようになりました」。ポイントを前にし、ボールの内側を強く叩く。開幕戦(対亜大)、谷端は2本塁打を放ったが2本目のソロ本塁はフルカウントと追い込まれてから仕留めた1発だった。「自信になりましたね」。この試合、チームは敗戦したが、谷端は確かな手応えをつかんで、リーグ戦に入っていた。

谷端には、今年にかける熱い思いがある。今年1月1日に発生した能登半島地震で、志賀町に住んでいた祖父母が被災した。幸いお2人ともご健在で、家も被害は免れたものの家具などが倒れ、現在もなお住める状態ではなく、谷端の両親の住む金沢市に避難中という。「地震が起きた時は、翌日まで電話がつながらなくて。両親が車で行ったら避難所にいたんです。2人とも元気だったので安心しました」。真冬の寒さに凍え、お風呂もない。思い浮かぶのは、小さいころよく遊びに行った能登半島の美しい海の景色。自然の素晴らしさ。自然災害の厳しさを知り、身震いがした。
しかしそんな逆境にも、元気に振る舞う祖父母の姿に胸打たれた。リーグ戦前には、「楽しんで頑張ってこい」と声をかけられた。「自分はボランティアにも行けないので、結果で恩返しするしかない。絶対に頑張ってやろうと思いました」。
今季は、勝利してもなお、その手は緩めない。「満足はしません。もし負けても、それは自分のせい。それくらいの覚悟で、チームを引っ張ろうと思いました」。家族の存在をバットを振る原動力に変え、チームを引っ張る。その先には、優勝の2文字しか見えない。

あと2戦、負けられない次戦は相手は1勝1敗で共に優勝争いをしている中央大と5月21日(火)9時から神宮球場で行われる。
皆様、応援よろしくお願いいたします。

※試合の模様はSPORTS BULL内「プレユニ.TV」にてLIVE配信も行っております。

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