これぞ戦国東都―。第3週でそこまで8連勝と負け無しで首位を走っていた青学大から勝ち点を挙げ、勢いに乗った日本大。第3週、中大との未消化試合(1勝1敗)と第4週、国学院大との未消化試合(日大1勝)を残すのみとなったが、逆転優勝には、1試合も負けられない。崖っぷちで臨んだ第3週、中大戦だった。

 3回に1点先制を許したが、1点ビハインドで迎えた8回1死三塁から、角田勇斗内野手(4年=習志野)の遊ゴロの間に三塁走者を迎え入れ、同点に追い付いた。先発の市川祐投手(3年=関東第一)に代わり、6回からリリーフした山内翔太投手(4年=習志野)が丁寧に打たせてとり、守備もノーエラーで盛り立て、延長タイブレークへ。緊迫した試合展開も延長10回、無死一、二塁から投手強襲の内野安打でサヨナラ負けを喫した。これで、勝ち点を落とし、逆転優勝の可能性が消えた。

 片岡昭吾監督は、試合終了後、ベンチ前に選手を集め、「いいゲームだったけど、やっぱり最後、勝ちきれないのはチーム力をもう一つ上げなきゃいけない、ということ。でも、本当にここまで食らいついて、いいゲームができた」。悔しさがにじむ選手たちに、あたたかい声かけた。
 敗戦にも、選手の成長は目を見はるものがあった。「チャンスを作ったり、ピンチしのいだりですね。今までやってきた試合ができたかな」と、片岡監督。開幕2連敗からスタートした今季。開幕2戦目の亜大戦では4失策に投手は3四死球。相手投手が7四死球もある中でチャンスで1本が出ず、涙をのんだ。約1カ月で、選手たちは足元をみつめ、野球と向き合い、チームを立て直した。緊迫した試合展開の中、最後まであきらめずに食らいついた。「守備が本当によく粘った。次につながると思う」と、その成長を認めた。

エースとして成長を続ける市川

 大一番の前夜。先発の市川と、リリーフの山内は2人で夕食に出かけた。昨秋からの、登板前夜のルーティンだった。食事をしながら2人の気持ちはひとつ。昨秋あと1勝で逃した「優勝」。2人で一緒を―。その思いは一緒だった。
 この中大戦でも先発した市川は、キレのいい真っすぐと決め球のフォーク。そして「今春から投げている」というツーシームで空振りを奪った。5回を投げ5安打1失点で、山内につなぎ、エースとして堂々の投球だった。

 常に進化を続けている。昨春、2年生で神宮デビューを果たすと7試合に登板し4勝1敗で防御率0,94でリーグ3位の成績。リーグ戦終盤には1戦目を任されるなど一躍エースに躍り出た。秋は9試合に登板し4勝4敗。敢闘賞を受賞したが「春に比べて、秋はよくなかったんです」と振り返る。「調子が悪くて。変化球で交わす投球になってしまった」。レベルの高い東都で勝負するには、本当の力を身に付けなければ。昨年、6人のドラフト1位投手を輩出した同リーグで、対戦しながら、目の当たりにした。

 開幕戦を落とすと、市川は投球フォームの見直しに取り組んだ。「足を上げてから流れで投げるフォームにしていた。でも、僕はそれがしっくりこなくて。春よかった時の投球フォームに戻しました」。足を上げ、体重移動の時にワンテンポを置いて投げる。春の動画を何度も繰り返し見て、投げ込んだ。「ぐっと力をためて、ためた力を体重移動する。そのリズムが僕には合っていたんです」。低めに制球された投球で、ここまで4勝2敗。リーグ通算12勝を挙げた。「いつでもストライクが取れる感覚になってきているんです」。いい感覚で臨んだ中大戦だったが、あと1歩及ばなかった。

 片岡監督は「いい攻撃、守備。落ち着いてゲームができている。それは何よりピッチャーが粘って投げているからです」と、その成長を高く評価した。
 試合後、「24日、国学院戦で勝ち点とるぞ!」と、片岡監督が選手たちに声をかけると、「はい!」全員が声をそろえた。最後まで、前を向いて戦い抜く。

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