最終戦となった明治大戦で惜しくも敗れ、3季連続優勝とはならなかった日本大 【日本大学】
2024年春季関東学生リーグ戦・男子1部(5月9~11日/24~25日)。昨年は春秋連覇を達成し、今大会に王者として臨んだ日本大。最終戦を残して6戦全勝と3連覇に王手をかけたが、最終戦で昨秋に勝利している明治大に7番までもつれる大激戦の末に敗北。専修大、明治大と6勝1敗の三つ巴となったが、得失点差により2位となり、惜しくも優勝を逃した。
「なぜか心の余裕があった」吉山が渾身の2点取りで強敵・早稲田大を下す
3連覇を目指す日本大は、所沢市民体育館で行われた5試合を全勝で終え、学生リーグの聖地・代々木第一体育館での最終2戦(第6、7戦)に臨んだ。
第6戦の相手は早稲田大。昨年は春秋ともに勝利しているものの、どちらも7番まで持つれる大激戦となるなど、気が抜けない相手だ。
この試合のヒーローとなったのは、日本代表として国際大会でも活躍する吉山僚一(スポーツ科学部2年・愛工大名電)。1番では早稲田大のエースで、吉山の中学・高校時代の先輩でもある濵田一輝(2021年全日本ジュニア優勝)との対戦となった。「大学に入ってからは初めて試合をした。決して相性の悪い相手ではなかった」と語る吉山は、相手のバック側にボールを集めることで濵田の武器であるフォアハンドを封じることでゲームカウント2-1とリード。しかし、実力者である濵田も吉山のボールに食らいつくと試合はフルゲームに突入する。普通ならば、精神的に優位なのは劣勢の場面から追いついた濵田の方だが、「フルゲームになったけど、なぜか心の余裕があった。戦術の引き出しがまだあったので、その面で上回れていたのかなと思う」と、最終ゲームは吉山が濵田を圧倒。冷静なコース取りとラリー戦での強さが光り、日本大に先制点をもたらした。
トップで濵田を下した吉山。今季は単複で13戦全勝の活躍を見せ、敢闘賞と優秀選手賞、最優秀ペア賞を受賞した 【日本大学】
2・3番はそれぞれ1勝ずつをあげると、4番のダブルスには今年の全日本選手権男子ダブルスで優勝した小林広夢(スポーツ科学部4年・愛工大名電)・伊藤礼博(経済学部3年・安田学園)ではなく、小林・吉山が出場。「僕と伊藤と吉山で考えた結果、今回のダブルスは僕と吉山でいくことにしました」(小林)と、ここまで全試合に出場して全勝。対する早稲田ペアもここまで全勝と、勢いのあるペアだ。
試合は序盤から激しい打撃戦となったものの、「攻撃力が最大の特徴」と語る日本大ペアが強烈なチキータを軸にレシーブから先手を奪って2ゲームを先取。そこから早稲田ペアが2ゲームを奪い返してフルゲームとするも、最後まで攻撃の手を緩めなかった日本大ペアが見事に勝利。チームの勝利へと王手をかけた。
しかし、5番の小林が惜しくも敗れ、6・7番が同時進行でスタート。6番は敗れたものの、7番に出場した1年生の王晨又(スポーツ科学部1年・松山家商)がキレのある両ハンド攻撃で早稲田大の舟山真弘(2024年パリパラリンピック日本代表)にストレートで勝利。「普段どおりのプレーができるように考えすぎないようにした。後ろから仲間の声援を感じた」(王)と、専修大戦に続いてチームの守護神となった。
専修大戦に続いて7番で勝利した王晨又。チャイニーズタイペイ代表として国際大会でも活躍する期待のルーキーだ 【日本大学】
チーム力の底上げが必要」見えてきた課題点。インカレ、そして秋リーグでのリベンジを誓う
迎えた最終日。優勝をかけた対戦相手は明治大。昨年のリーグ戦での対戦成績は、春は3-4で明治大の勝利、秋は4-3で日本大の勝利と、まさに最大のライバルだ。
トップで吉山、4番で小林・吉山が勝利するも、2番で伊藤、3番で加山雅基(スポーツ科学部1年・愛工大名電)が敗れる互角の展開で試合は後半戦へ。
続く5番に出場したのは、ここまで3勝2敗とエースでありながらなかなか思うような試合ができないでいた小林。試合中はポーカーフェイスで冷静にプレーする小林だが、最終戦にかける思いは誰よりも熱かった。「今までは心のどこかで『誰かが勝ってくれるんじゃないか』という甘えがあった。でも、明治戦はその甘えをなくして、これまでよりも集中しました」(小林)。
初対戦だという明治大の芝拓人に対して試合序盤からアグレッシブに攻撃を仕掛ける。しかし、相手も1年生ながら名門校のレギュラーとして起用されている実力者。2ゲームを先取したものの、中盤以降は苦しい展開が続きフルゲームに。それでも、4年生として、そしてエースとしての底力を見せて勝利し、日本大が優勝へと王手をかける。
これまでの鬱憤を晴らすような会心の勝利をあげた小林 【日本大学】
しかし、6番が敗れ、勝負の行方はまたしても7番の王晨又に託された。出だしはフォアが思うように決まらず2ゲームを先制されたが、徐々に自分のプレーを取り戻してすぐさま2ゲームを奪い返す。迎えた最終ゲーム、ベンチの仲間たちは割れんばかりの声援で王晨又の背中を押す。王晨又は0-3からタイムアウトをきっかけに3-3に追いつくも、最後は明治大4年の山本歩に意地を見せつけられて一歩及ばず。敗れた王晨又は、試合後に涙を見せた。
敗れはしたものの、最後まで仲間を信じてチーム一丸となって戦った 【日本大学】
最終戦の結果、日本大、専修大、明治大が6勝1敗で並ぶ三つ巴となったが、得失点差で優勝を勝ち取ったのは専修大。日本大は2位に終わった。試合後、日本大を率いる氏田知孝監督は「全勝するのは難しいですね。昨年の春秋優勝がどれだけすごいことだったのか改めて感じました」と悔しさを滲ませながらも、今後の課題についてはこう語った。
「今後のチームの課題は、やはりもう一人勝てる選手を育てることですね。前半で勝てる選手がいたら、もう少し楽に戦えます。そのためには、チーム力の底上げが必要。部全体のレベルは上がっていますが、レギュラーとそれ以外の選手との差がまだあるので、もっと部内での競争力を強めていきたいです」(氏田監督)
次なる戦いの舞台は7月に行われるインカレ(全日本大学総合選手権・団体の部)。昨年は王者・愛知工業大に敗れて3位に終わったが、「今年はチャンスの年だと部員全員が分かっている」(氏田監督)と、見据えるのは45年ぶり優勝のみ。
そして、その先に待っているのは秋季リーグ。明治大にリベンジを果たし、全勝での優勝を目指す。