初の準優勝となった日本大学サッカー部 【日本大学】
6月30日(日)、「アミノバイタル®」カップ2024 第13回関東大学サッカートーナメント大会の決勝戦が、雨が降りしきる中、味の素フィールド西が丘で行われた。関東最強を決めるトーナメント戦を勝ち抜いて決勝まで辿り着いたのは、リーグ戦1部首位をひた走る明治大学と、同じく1部6位の日本大学。今季の初対戦がいきなりの大舞台。日本大学は大会期間の12日間の中で、どんな「戦いざま」を見せてきたのか。そして総理大臣杯に向けて必要なものとは…
アミノバイタルカップで見えたもの
決勝の対戦相手は本大会最多となる3回の優勝を誇る明治大学。12日間で5試合という過密日程を勝ち抜いていかなければならないため、日本大学サッカー部には“総力戦”が求められていた。
ここまでチームを支えた一人、田中慶汰(経済学部3年/川崎F・Y)は言った。
「アミノバイタルカップが始まってから、チーム全体として良い2週間にしようという目標があった中、一戦一戦を必死に戦って勝ち上がってこれた。決勝戦は、日大サッカー部の歴史を塗りかえるために絶対勝とう、という強い想いで臨んだ。」
全部員の想いは一つ。今まで積み上げてきたものを全部出し切って「明治を食ってやろう」と誰もが心に決めていた。
過酷な条件下で勝ち残った2チームのラストマッチは、雨が静かに降る中、ホイッスルが鳴らされた。
決勝戦のスターティングメンバーは、今大会アミノバイタルカップで目覚ましい成長と活躍を見せた選手たち。
決勝の内容に触れる前に、ここで今大会を簡単に振り返ってみる。
6月19日(水)3回戦 白鷗大学戦
日本大学は関東1部リーグ所属のため3回戦からの出場となった。
6月19日に行われた白鴎大学戦は、連戦を控え総力戦になることを想定し、フレッシュなメンバーで挑んだ一戦だった。試合は、終始自分たちのペースを崩されることなく6-0の完勝。“総力戦”をポイントとする今大会ではあるが、選手個々の力も重要視される中、初戦の滑り出しは完璧だったと言えよう。
【得点者】
熊倉弘達(法学部4年/前橋育英)×2
石橋鞘(経済学部1年/明秀日立)×2
平尾勇人(文理学部2年/四日市中央)
長谷川皓哉(経済学部3年/明秀日立)
初戦となった3回戦で得点を挙げた長谷川 【日本大学サッカー部】
6月22日(土)4回戦 拓殖大学戦
続く4回戦は、6月22日の対拓殖大学戦。終盤に追いつかれて延長PK戦までもつれ込んだこの試合は、日本大学の守護神、木村凌也(スポーツ科学部3年/横浜FM・Y)の活躍により1-1 PK(6-5)で辛勝。拓大に押し込まれる場面が多い中、チームの重要な得点源である五木田の先制ゴールが大きな意味を持った。
【得点者】
五木田季晋(スポーツ科学部2年/川崎F・Y)
4回戦、チームの得点源である五木田 【日本大学サッカー部】
PK戦で大活躍を見せた守護神・木村 【日本大学サッカー部】
6月25日(火)準々決勝 東京国際大学戦
6月25日に行われた準々決勝の相手は東京国際大学。リーグ戦第8節では引き分けた相手で、堅い守備と強いフィジカルを持つタフなチーム。しかし、日本大学も泥臭く戦い抜いて得点をもぎ取り、1-0で勝ち切った。
【得点者】
平尾勇人
6月28日(金)準決勝 国士舘大学戦
そして迎えた準決勝、対国士舘大学戦。こちらはリーグ戦第4節で敗北を喫した相手。リーグ戦と同会場で行われたリベンジマッチは、選手たちの強い気持ちが前面に出て相手を制し、3-1と快勝。ついに決勝戦へと駒を進めた。
【得点者】
熊倉弘達×2
猪野毛日南向(文理学部4年/町田ゼルビアY)
準決勝、ここぞという場面で得点を決めた猪野毛 【日本大学サッカー部】
準決勝で勝利した日本大学。アミノバイタルカップを戦うチームをここまで引っ張ってきたのは、今大会で3年生ながらにキャプテンに指名され、チームをまとめ支え続けた植木颯(経済学部3年/日大藤沢)だ。トーナメント戦に特有の“負けたら終わり”のプレッシャーがかかる中での「キャプテン」という重責。
「キャプテンに選ばれたのは光栄なことだし、やっぱり任されたからには、チームをしっかり勝利に導くことが自分に課せられた最低限の仕事だと思った」と真摯な思いを語っていた。間違いなくこの”想い”がチームを決勝戦へと導いたのだ。
この指名にはスタッフの想いが込められていた。リーグ戦でスターティングメンバーに名を連ねながら、上級生としてチームを牽引する姿勢に物足りなさを感じており、アミノバイタルカップという大会、2週間という期間で「一皮むけて欲しい」といった想いだ。
その想いを知ってか知らずか、今大会はスタッフの期待に応えたといって良いだろう。
準決勝までキャプテンマークを背負い、チームを勝利に導いた植木 【日本大学サッカー部】
6月30日(日)決勝戦 明治大学戦
そして迎えた決勝戦。関東最強を決するこの大事な試合において、4年生として、そしてキャプテンとして出場した熊倉弘貴(法学部4年/前橋育英)は、試合への意気込みを述べた。
「決勝という舞台で、相手はあの明治大学。長年大学サッカー界を牽引してきた彼らに敬意を表しつつも、自分たちのサッカー“日本大学のサッカー”で彼らを打ち負かしたいと強く思って臨みました」
日本大学サッカー部が掲げるのは【超戦】。限界を超える力で戦いに挑んだのだった。
しかし…
日本大学 1-3 明治大学
【得点者】
田中慶汰
決勝という舞台での得点を決めた田中 【日本大学】
結果としては1-3の敗戦。そこには、スコア以上の差があったのかもしれない。試合後の選手たちの顔を見れば明らかだ。キャプテンの言う“日本大学のサッカー”は見せられたが戦いには負けた。「自分たちの力」「積み上げてきたもの」を出したが、相手には及ばなかった。
今大会、日本大学は準優勝と最低条件ではあった総理大臣杯への切符は掴み取った。でも、それを素直に喜んでいる者はいないはずだ。いないでもらいたい。
試合後のミーティングで川津監督は「100年近くある歴史の中で新たな歴史を刻むことができ、年々成長していることを実感する」と話した。確かに初の決勝進出は、現日大サッカー部員全員が誇るべきことだ。簡単なことではないのだから。
しかし、まもなく折り返す関東大学サッカーリーグ戦、総理大臣杯に向けて課題も多く見つかった。日本大学がボールを保持する時間が多い中、相手陣内になかなか攻めきれなかったこと。ボールを奪われ相手が攻めに転じた瞬間のスピード、人数に対応し切れなかったこと。
フィジカルの強化、パス・トラップの精度の向上、攻守の切り替えの早さ、ボールをキープしているときの落ち着き、いざ前へ出るときのアグレッシブさ。これからの練習でチーム力を高めていかなければ、リーグ戦での反転攻勢、総理大臣杯での勝ち上がりは難しいかもしれない。チーム全体としての奮起を期待したい。
また、日本大学には様々な個性を持った選手が揃っており、彼らをどう組み合わせ、チームとして機能させ、勝ちにつなげていくか。ベンチワークにも注目だ。
皆さんは、日本大学サッカー部が行っている選手が自らの想いをつづる「note」のことをご存じだろうか。その週に「note」を担当した選手が、試合でしっかりと結果を出すシーンが目立っているように感じる。今大会でいえば平尾勇人だ。
「試合の1分、1秒最後まで諦めない。弟のため、チームのため、仲間のため、そして自分の夢のために」
平尾は「note」に自らの原動力をストレートにつづっている。
是非とも、部員一人一人の想いにぜひ目を通してほしい。
強いフィジカルとシュートの正確さを併せ持つ平尾 【日本大学】
キャプテン、エースたちの視点
準決勝までキャプテンマークを付けた植木
- アミノバイタルカップを準決勝までキャプテンとして挑んでみて?
「直前に任されて、アミノは自分で行くとなったので、しっかり勝利に導くことが大事だと思った。決勝までチームを導けて良かった。でも、決勝戦を勝ちに導けるような選手にならないといけないんだ、と強く思った」
その“どん欲さ”こそが植木の真骨頂だ。
主将・熊倉弘貴
- 決勝という大舞台、重圧の中キャプテンとして立候補したのは?
「自分が4年生としてチームを引っ張って、初タイトルをもたらせたい、という強い覚悟をもっていた」
最上級生であり、リーグ戦でもキャプテンとしてチームを支える熊倉は、タイトルに飢えている。
チームの精神的支柱であり、ゲームメーカーである熊倉弘貴 【日本大学】
チームを支えるエースの一人、熊倉弘達
- アミノを終えて、また総理大臣杯に向けて意気込みは?
「負けてしまって悔しい思いがある。関東2位という立場で全国に出るので、その立場に恥じないように、チームの結果にも個人の結果にもこだわりたい。全国でいいプレーをしてアピールするというのも一つの目標。明治も筑波も食ってやりたい。」
チームのエースは、普段は明かさない熱い思いを語った。
3回戦と準決勝では共に2得点を挙げた熊倉弘達 【日本大学】
日本大学サッカー部のこれからの戦い
チームは確実に前へ進んでいる。一つ一つのプレー・戦術の細部を磨き上げることで失点を減らし、後半戦の粘り強さ、勝負強さを発揮すれば、関東大学サッカーリーグでの上位浮上は決して不可能ではない。
日本大学アスレティックパーク稲城サッカー場の応援席には、今シーズンのスローガンである「超戦」、櫻蹴会(OB会)からのメッセージである「百折不撓の精神」という横断幕が掲げてある。プレーしている選手たちにも、共に戦うサブ、サポート、スタッフにも「もっと上へ」という想いがある。関東大学サッカーリーグ戦、総理大臣杯と、全員の力でしっかりと結果に結びつけていきたい。
全試合を通じて、誰か一人に依存するのではなく、誰が出てもクオリティの高い“日本大学サッカー”というのを、この12日間で体現したのではないか。決勝戦は敗れたが、チャンスを多く作り、相手をヒヤリとさせる場面も演出した。
リーグ戦で白星を献上してしまった大学に、きっちりリベンジもしている。自信につながる大会になっただろう。
しかしながら、掲げた「優勝」という目標にはあと一歩届かなかった。絶対に日本大学が勝つだろう、という会場の雰囲気にはなっていなかった。やっぱり明治か、と。
全国大会までは期間がある。リーグ戦だけではなく、Iリーグ、社会人リーグと公式戦出場の機会は全選手にある。この一か月で、日本大学サッカー部がどのように変貌するのか、楽しみで仕方ない。
関東ナンバー2という立場で挑む全国大会。総理大臣杯だけではなく、関東大学サッカーリーグも上位を目指して、日本大学サッカー部は一丸となり「超戦」する。
その進化を目撃せよ。
文責:井上希羽(スポーツ科学部1年/淑徳巣鴨)
画像:日本大学、日本大学サッカー部広報班
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