令和7年6月28日(土)・29日(日)、団体戦(体重無差別7人制*)での大学日本一を決める全日本学生柔道優勝大会(男子74回)が日本武道館で開催された日本大学柔道部は、出場した選手たちがそれぞれの持ち味を存分に発揮して勝利を重ねていき、決勝戦でも強豪・天理大学を3-1で撃破。28年ぶり6度目となる優勝を飾った。

*先鋒・次鋒・五将・中堅・三将・副将・大将

昨年・一昨年と、2年続けて4回戦敗退という悔しさを味わったこの大会。3回戦からの登場となった本学は、選手一人ひとりが勝利への強い思いを胸に秘めて試合に臨んでいた。

初戦の東亜大学戦を6-0で完勝すると、4回戦の筑波大学には2-0で競り勝ってベスト8。中央大学と戦った準々決勝も、五将戦から一本勝ち2つを含む5連勝と圧倒(5-1)し、久しぶりの4強入りを果たした。

 

準決勝の相手は、創部初のベスト4進出を決めた桐蔭横浜大学。優勝候補と目されていた前年覇者・東海大学に3-2と競り勝って勢いに乗る相手だったが、本学の選手たちは皆、落ち着いた試合運びを見せた。

先鋒を任された濵田哲太選手(4年・スポーツ科学部)は、背負投の仕掛けから肩固めに入り抑え込み20秒で一本勝ち。次鋒戦は引分けたが、五将戦はモンゴルからの留学生ペレンレイジャイムツ オスホバヤル選手(4年・スポーツ科学部)が試合中盤に大内刈で「技あり」を得て優勢勝ち。続く中堅戦では主将の濵﨑龍真選手(4年・スポーツ科学部)が開始わずか43秒で大内刈を決めて一本勝ちし、ポイントを3-0とした。

三将戦を引分けた後の副将戦では、庄司陸吾選手(4年・法学部)が小外掛の「有効」で勝利。大将戦でも三崎大和選手(3年・スポーツ科学部)が序盤に大外刈で「技あり」を奪うと、その後は相手に反撃を許さずに試合終了。

合計5-0で桐蔭横浜大学を下し、昨年準優勝の天理大学と1960年以来65年ぶりに決勝で相まみえることになった。

 

準優勝を果たした2016年以来の9年ぶりの決勝戦の舞台。1997年を最後に遠ざかっていた「日本一」をめざす本学に対し、天理大学もまた、32年ぶり12回目の王座奪還へ意気が上がる。互いに久しぶりの優勝を賭けた熱い戦いが始まった。

先鋒・オスホバヤル選手

先鋒戦には身長2mを超えるオスホバヤル選手が登場。この日は出場した3試合でいずれも勝利しており、決勝でも先制点の獲得が期待された。しかし、素早く動き回る相手に組ませてもらえず、攻めあぐねた。逆に「指導」2つをもらって後がなくなったが、相手を追い詰めながら4分間を戦い切り、引分けに持ち込んだ。

 

次鋒戦は、昨年の学生体重別選手権73kg級2位の太田隆介選手(4年・法学部)と、同大会100kg級3位の選手が対戦。互いに投げ技を見せて拮抗するもポイントを得るまでには至らず、この試合も引分けに終わった。

五将・村瀬選手

0-0の均衡を破ったのは五将戦に挑んだ村瀬浩樹選手(3年・文理学部)。技出しの速い相手を攻めきれずにいたが、残り1分16秒、相手の一本背負投の仕掛けと村瀬選手の投げ技のタイミングが重なり、返し技のような形となって相手が背中から畳に落ちる。主審の手が「技あり(決め技:隅落)」を示すと、日大チームの控え席は大きく湧いた。

残り1分、相手の反撃を許さずリードを守り切って勝利した村瀬選手。礼を交わした後、スタンドで湧き立つチームメイトたちに手を挙げて応えた。

中堅・濱﨑選手

待望の先制点を挙げて迎えた中堅戦は、濵﨑選手と天理大・平見陸選手の主将同士が対戦。いい形で組み手を取れずに技が出せない濵﨑選手は、「指導」2つを受けたものの、平見選手の攻めに上手く対応して4分間をしのぎきって引分けとした。

背負投で勝利を決めた三将・濵田選手

何としても勝利してポイント差を広げたい三将戦は、濵田選手が畳に立った。序盤から積極的に得意のかつぎ技を仕掛けていた濵田選手は1分過ぎ、投げをこらえようとする相手の足を払っての背負投。相手の体は大きく弧を描いて畳に落ち、主審の手が横に伸びて「技あり」を取った。

濵田選手はその後も果敢に攻め続けていたが、残り20秒、両膝をつき相手の懐に入っての背負投で、相手の体は低い軌道でくるりと1回転。鮮やかな一本勝ちに、ひときわ大きな歓声が会場に響き渡った。

 

ポイントが2-0となり、副将戦には準決勝に続いて庄司選手が起用された。もう後がない天理大に対し、一気に勝利を決めてしまいたいところだったが、相手のスーパー1年生・平野匠啓選手に巧みに攻め手を封じられる。最後は内股を決められて無念の一本負け。2-1となり優勝の行方は大将戦に持ち越された。

 

互いにチームの期待を一身に背負った大将・三崎選手と、相手大将・向井選手の戦いは、最後まで手に汗握る激闘だった。

 

先に「指導」を受けた三崎選手だったが、2分が経過しようとした時、相手の右胴をしっかりとつかんで大きくかつぎあげると、空中で相手の体を回転させ背中から勢いよく畳に叩きつけた。大腰での豪快な「技あり」に会場のボルテージは一段と上がる。

 

リードを奪った三崎選手は、向井選手の激しい仕掛けにも冷静に対応し、このまま逃げ切るかと思われた。しかし、残り35秒に小外刈で「有効」を取られると、直後には突進してきた向井選手に足を掛けられて場外へ押し倒される。主審がコールした「技あり」は、副審との協議でも変わらず、向井選手が逆にポイントでリードする形になった。

 

それでも、一本勝ちでしか逆転優勝がないため、向井選手の攻撃はさらに勢いを増す。時計が止まった残り9秒からの再開時、「始め」の声とともに向井選手が飛び掛かってきた。それに気づいた三崎選手は、冷静に相手の動きを見極めて右袖口をつかんでの一本背負投を発動。流れるような動きで、向井選手の体は一回転して畳に伏せた。残り6秒、2つめの「技あり」を奪い、合わせ技一本での逆転勝ちを収めた三崎選手は、立ち上がるや短い雄叫びを上げた。

劇的な幕切れにより3-1で勝利し、28年ぶり6度目となる「大学日本一」に昇りつめた本学。試合後のインタビューで、濵﨑主将は「昨年ベスト16で負けて悔しい思いをした。今年こそは勝ってやるぞという強い思いで戦いに挑みました。このチームで勝てて本当に良かった、最高でした」と喜びをかみしめた。
また、BS11一本大賞を受賞した三崎選手は、「毎日きつい練習をやってきても、なかなか結果が出なかったが、今大会で金野先生を日本一にすることができてとてもうれしい。体重別団体優勝大会(10月)でも勝って、2冠を狙いたい」と、次の目標へ向けての意気込みを語った。

「1回戦から決勝まで、自分らしくやることだけを言い続けた。強い弱いは考えず、自分たちの柔道を最後まで出し切ろうと、それだけを繰り返しました」とインタビューで語った金野潤監督にとっても、日大柔道部の監督に就任して20年近くになる中で初めての全国優勝。8年間務めてきた全日本柔道連盟の強化委員長を昨年退任し、この1年は学生を直接指導する時間が増えたという。

「選手と時間を費やすことはシンプルだけれど大事なこと。(全柔連の)強化選手が一人もいないチームで、みんなが力を合わせて戦ってくれた。最高の選手たちに恵まれて本当に幸せです」と感慨深げに話した。

 

2年続けて4回戦敗退という悔しさを味わい、一人ひとりが勝利への強い思いを胸に秘めて臨んだ今大会。最高の結果を体現してみせた選手たちには、さらなる古豪復活ストーリーを作っていくことを期待して止まない。

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