最下位に終わった今年の箱根駅伝。巻き返しを図るべく、日本大学陸上競技部特別長距離部門は成長の鍵を握る夏合宿を8月上旬から北海道釧路市でスタートさせた。選手それぞれが、さまざまな想いを抱いてハードな練習に取り組む中、鈴木孔士選手(法4・中越)は、山上りへの再挑戦を意識した走り込みを続けている。(取材日:8月15日)

箱根駅伝2度目の出走となった今回、鈴木選手は切望していた5区を任された。小田原中継所でタスキを受け取った時は総合19位だったが、区間15位のタイムで走り切り、順位を2つ上げて総合17位で芦ノ湖のゴールに飛び込んだ。
「実際に5区を走ってみて、力不足というところはありましたが、自分なりの走りでまとめられたと思うし、同時にまだ上を目指せるなという感じもありました。」

山上りの練習を積んできたが、「実は上り始めが一番きつい」と話し、「勾配が急になる塔ノ沢からの4〜5kmをどう攻略するか」を考えてきたという。
今年のレースでは、塔ノ沢に差し掛かった時、先導する白バイの先に、前を走るランナーの姿は見えなかった。心が萎えかけたその時、運営管理車に乗る新監督から声が掛かった。「白バイを追いかけていけば、いつか前が見える。ここでお前があきらめたら離れていくだけだ。しっかり白バイについて行って前を追うぞ」と。「その声を聞いて、気持ちをリセットできました。監督からの言葉が支えになって、きつい所を乗り越えられたと思います」
再び力を得た鈴木選手は、その後、上りが続く大平台の前で1人、元箱根に向かう下りでもう1人を抜き去った。「駅伝で人を抜いて順位を上げるのは初めてでしたが、やっぱり気持ちよかったですね」と笑った。

ゴールの芦ノ湖が近づいてきた時、前を走る関東学生連合チームとは少し距離があり、抜くことは半ばあきらめていた。しかし、ゴール手前350mくらいの所に、中学時代の陸上部顧問の先生がいるのを見つけ、その応援の声がしっかり耳に届いた。「頑張れば追い抜けるかもしれない」と奮い立ち、「先着してゴールテープを切りたい」と、残り150mからスパートをかけ、ゴール直前にさらに加速して競り勝った。「ゴールテープを切れた喜びと達成感がありましたが、これほど余力があるのなら、もう少しタイムを稼ぐことができたんじゃないかと、その悔しさもありました」

「山は、ある程度余裕を持って挑まないと上りが走れなくなる」という鈴木選手。「全力の99%くらいの力を維持して上っていければ、もっといい結果を出せるんじゃないか」と考え、「その力を身につけるための釧路での距離走。余裕を持ちながら走るということをテーマにしています」と、1日2回、約30kmを走る練習にも、箱根の山を意識して取り組んでいる。

今年の夏前、母校の中越高校(新潟県)で教育実習を行なった。高校生や教職員の先生方と接し、会話をする中で、いろいろと気付かされることがあった。さらに、野球部が夏の甲子園大会に出場。ベンチ入りした控え選手の中に、ホームルームを担当したクラスの生徒がいた。試合は初戦敗退となったが、その選手は9回に守備固めとして出場し、アウトを1つ取った。「地方大会の時から頑張っているのを見ていたし、甲子園でプレーする姿を見て、自分も頑張らなきゃいけないなと、練習に対するモチベーションが上がりました」
教育実習でふれあった生徒たちの多くは、年明けに受験を控える。鈴木選手は、自分が箱根の山を勇壮に走ることで、“教え子”たちにエールを贈ろうと心に期する。

「箱根の予選会を突破するのは当たり前。余裕を持って予選会を突破したい」と力強く語る。個人的に前回以上の結果を残すことが、チームの躍進にもつながると考えている。小学校の卒業文集に書いた将来の夢、「日大で5区を走って区間賞を獲る」を実現するためのラストチャンスに、全力を傾けていく。

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