最下位に終わった今年の箱根駅伝。巻き返しを図るべく、日本大学陸上競技部特別長距離部門は成長の鍵を握る夏合宿を8月上旬から北海道釧路市でスタートさせた。選手それぞれが、さまざまな想いを抱いてハードな練習に取り組む中、長澤辰朗選手(文理2・中越)は今年の箱根駅伝を逃した悔しさを力にして、ただひたむきに走っている。 (取材日:8月15日)

初めての箱根駅伝は、直前に罹患したインフルエンザの影響で、走ることができなかった。「自分の不覚でした。あと一歩というところまで来ていたので、とても悔しかったです」と長澤選手は唇を噛んだ。

だが、走れなかったゆえに気づいたこともあった。レース当日、出走するはずだった3区で給水係を務めた。そこで、現場の雰囲気を体感すると同時に、「この舞台に立つのはまだ早い、走ってはいけないと言われているような気がした」という。
目の前を駆け抜けていく選手たちが、覚悟を持って走っている様を見て、自分にはそういう覚悟が足りなかったと痛感した。「走りたいと思うだけではダメで、箱根を走ることへの意識を変えていかないと、これからも箱根は走れないと感じています」

今シーズンの前半は、4月の記録会で10000mの自己ベストを更新するなど「いい形で走れている」というが、自身では「自分にはこれといった特徴的なものがない」と分析する。「最後の爆発力だとか、そういうものを持っていない。あるとすれば安定感ですが、それがありつつも突出した結果を出せるようにすることが必要だと思っているので、まずは自力をつけていきたいですね」

昨年に続いて参加している夏合宿は、「なんとしても箱根を走るんだという、強い気持ちで臨んでいます」と覚悟を示す。「1年生で参加した昨年も、最初から最後までしっかりやりきれているので、昨年同様に食らいついていくだけですが、チームとしてすごい強くなっている印象があるので、その中で負けられないという感じです」
また、今回多くの1年生が合宿に参加していることには期待する気持ちもある。「昨年の自分は、成り上がっていこうという思いで頑張ってここまで来ました。今年の1年生たちにも、挑戦者という意識を持ってやってくれたらチームの底上げになるし、自分たちも負けられないという危機感を持ってやれる。お互いに刺激し合っていけば、いい化学反応が起きるのかなと思います」

直近の目標となる10月の箱根予選会。昨年、長澤選手は1年生で唯一出走し、合計タイムの対象となるチーム10番目でフィニッシュした。大学に入って初めての大きなレースだったが、その経験は大きな成長につながったという。「あの暑さの中で、初めてハーフマラソンを走り、10番目に帰って来られたことはとても自信になりました。高校の駅伝では全くチームに貢献できなかったので、自分の走りでチームに貢献できたということにすごい喜びを感じました。その経験を、今年の予選会にも生かしたいと思っています」

そして当然ながら、箱根本戦の出走メンバーを勝ち取ることが大きな目標。「走れるのであれば、どこを任されてもいい。与えられた区間で自分の100%の走りができるようにすることが大事だと思っています」と、覚悟はできている。
箱根を走ることができなかった悔しさは、箱根を走ることでしか晴らせないのだ。

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