
北海道釧路市での合宿模様 【日本大学】
最下位に終わった今年の箱根駅伝。巻き返しを図るべく、日本大学陸上競技部特別長距離部門は成長の鍵を握る夏合宿を8月上旬から北海道釧路市でスタートさせた。選手それぞれが、さまざまな想いを抱いてハードな練習に取り組む中、成長著しい𣘺本櫂知選手(スポーツ科2・学法石川)が予選会メンバー争いに名乗りを上げる。(取材日:8月15日)
7月、北海道・網走で行われた記録会で10000mタイムレースの1組目に出場した𣘺本選手。気温・湿度が高い悪条件の中、前半から好位置をキープすると、7000m過ぎに先頭に立ち、そのままトップでフィニッシュした。
「タイムより順位を狙おうと思っていたので、目標通りに走れたことは良かった。他の先輩方に比べるとタイムはまだ劣っているので満足していませんが、厳しいコンディションの中でもしっかり走れるというところはアピールできたと思います」と、顔をほころばせた。
駅伝の強豪校で過ごした高校時代は、強者揃いのチームの中で伸び悩み、結果を残すことができなかった。それでも、「箱根駅伝を走る」という夢を追いかけて大学で競技を続けることを決意。自ら「黙々とやるタイプなので」と言い、「ほかの人よりできることを探して、成長していきたい」と地道な努力を重ねてきた。それは、昨年、2度におよぶ10000m自己ベストの更新に結びついた。
「ここまで大きなケガもなく走れていますし、自分なりに成長していると感じています」と話す𣘺本選手は、自身の強みを「どんな状況でも、ある程度のタイムで走れる安定感」だという。
昨夏も合宿メンバーに入り、最後まで参加できたものの、「合宿後半は疲労が溜まって、まったく練習をこなせない状態でした」と振り返る。「その後もアピールできなかったので、ちょっとまずいと思っていた」と焦りもあったが、自分なりに箱根予選会への出走を期待していた。だが、エントリーメンバー14人には選ばれず、「まさか外れるとは思っていなかったし、補欠にすら入れなかったというのは、かなり悔しかった」。夏合宿に来ていない選手が選ばれたことも悔しさに拍車をかけた。心が折れかけたが、目標を本戦出場に切り替えて練習に打ち込んだ。一次エントリーには入ったが、結局、箱根路を走る機会は訪れなかった。

𣘺本櫂知選手(スポーツ科2・学法石川) 【日本大学】
冬を越え、気持ちをリセットして臨んでいる今シーズンは、「去年に比べて練習もできている」と手応えを感じている。4月の記録会では10000mで30分を切り、再び自己ベストを更新。1年前の記録会で出した自己ベストから1分近くタイムが縮まった。
一方、箱根予選会と同じコースを使う立川シティハーフマラソン(3月)を走った際は、後半のアップダウンで失速し、距離に対してのスタミナ不足を露呈した。そのため、2度目の参加になる夏合宿では、長い距離を走ってスタミナを養うことを課題にしているという。
「スタミナをつけていけば、強みである安定感のある走りが予選会のコースでもできると思う。これからアピールしていき、何としても箱根予選会を走りたいと思います」
この秋、さらに成長した𣘺本選手が、チームに貢献する走りを見せてくれるに違いない。

課題克服のためのスタミナをつける練習に励む𣘺本選手 【日本大学】