
左から犬塚選手、奥村選手、八木澤選手、岸端選手、猪股選手、後藤選手 【日本大学】
3年連続の箱根駅伝出場を目指す日本大学陸上競技部特別長距離部門に、今春16名の新入生が加わった。高校時代に全国大会で活躍するなどの実績を持つ選手たちの何人かは、すでに実戦の中でその実力の片鱗を覗かせており、北海道で行われたトップチームの夏合宿にも6名の1年生が選抜された。これからの日大駅伝チームの主軸となることが期待される彼らに、その意気込みを聞いた。 (取材⽇:8 ⽉15 ⽇)
昨年12月の全国高校駅伝、南九州地区代表として出場した宮崎日大高校の主力として、4区(8.0875km)を走った後藤玄樹選手(文理学部)。日大への進学は、高校の先輩である高田眞朋選手(スポーツ科学部・3年)が在籍していることに加え、「練習メニューの話を聞いて、高校の練習と似ていると思った」ということが決め手になったという。
「高校での練習が自分に合っていて成長することができたので、同じ練習スタイルであればさらに上のレベルで成長できると考え、日大で頑張ろうと思いました」
大学での練習は「すごく距離を踏むなというのが第一印象でした」という。「高校と練習が似ていると言っても、走る距離がまったく違っていました。これまでロング走をあまりやっておらず、練習で長い時間を走るのは苦手でしたが、その部分も大学でしっかり対応できるようになれば、もっと強くなれると思っています」と抱負を語った。

後藤 玄樹[ごとう・いぶき] 2006年生まれ。宮崎県出身。宮崎・宮崎日大高卒。自己ベスト:5000m 14分25秒23 【日本大学】
宮崎日大高校からはもう1人、全国高校駅伝で2区(3km)を走った犬塚唯惺選手(経済学部)が加わった。
「高校の監督が日大出身なので、ずっと勧められていました」とのことで門をたたいた。「最初は練習量が多くて少し戸惑いましたが、今はこの練習についていけば、もっと強くなれるだろうと信じて取り組んでいます」と、今後の飛躍を誓った。

犬塚 唯惺[いぬづか・ゆいせい] 2006年生まれ。福岡県出身。宮崎・宮崎日大高卒。自己ベスト:10000m 30分35秒47(2025年4月) 【日本大学】
昨年の全国高校駅伝で2年連続4回目の優勝を飾った佐久長聖高校からは、6区(5km)を走り区間賞を獲得した岸端悠友選手(文理学部)が入部。
「自分は長い距離に挑戦していきたいという気持ちがあったので、このチームの距離を踏むという練習の方針が自分に合っていると思って日本大学を選びました」
大学での練習は「当初はそこまで設定ペースが速くありませんでしたが、距離自体が長いので練習を重ねていくうちに疲労が重なってきました」と、きつさを感じることが増えてきたという。それでも、「きつさがある中で、どうパフォーマンスしていくかが大事だと思っています」と話すなど、気持ちの強さが垣間見える。
入学早々に参加した4月の記録会では、10000mを走った1年生の中で最も速いタイムを記録し、全日本大学駅伝の関東地区選考会でも、補欠ながら最終エントリーに登録された。夏を超えてさらに力をつけた秋には、上級生に迫る走りを見せてくれるはずだ。

岸端 悠友[きしばた・ゆうと] 2006年生まれ。静岡県出身。長野・佐久長聖高卒。自己ベスト:10000m 29分38秒16(2025年4月) 【日本大学】
高校駅伝準優勝の大牟田高校から入部したのは、3000m障害でインターハイ出場経験のある奥村櫂陸選手(文理学部)。都大路を走ることはできなかったが、昨年10月の奥球磨駅伝では6区2位と好走し、チームの初優勝に貢献。12月のロードレース大会でも男子高校10kmの部で3位(30分01秒)に入った。
「大牟田高校から日大へ進む人がしばらくいませんでしたが、声を掛けてもらいました。2年続けて予選会を突破して箱根駅伝に出場していますし、自分の目標としても箱根駅伝で活躍したいというのがあったので、これから伸びていく大学に加わって力になりたいという気持ちで入学しました」
高校とはレースの区間距離が違うぶん、練習でも距離が増えてくることは承知していたが、「そこはまだ対応しきれてはいません」。しかし、「距離を踏むことで先輩たちも伸びていると思う。同じように自分も長い距離にしっかり対応していき、いい記録を出したいと思います」と前を向く。
「新雅弘監督が来られてから結果も出て、チームの勢いがぐんと上がってきている。それも新監督の力だし、選手がそれについていこうとしているから伸びていると思うので、自分たちもそれについていこうと思っています」と話し、
「予選会を走りたい気持ちが大きいのですが、その時の体の状態が良ければ、全日本大学駅伝でも力試しをしてみたい」と、意欲を見せた。

奥村 櫂陸[おくむら・かいり] 2006年生まれ。京都府出身。福岡・大牟田高卒。自己ベスト:10000m 30分03秒13(2025年4月) 【日本大学】
「高校の監督に勧められました」と、土浦日大高校から入部した猪股富祐貴選手(経済学部)。「距離を踏むタイプの練習メニューであることが、自分に合っているなと感じました」というのも理由だという。
「みんなが言っている通り、走る距離が長いなと感じています。高校でも距離を踏んできましたが、想像をはるかに超えていました。この合宿では多い時で1日50km以上踏むので、月間では高校とは比較できないほど距離を増しそうです」
距離を踏んでいくと、筋肉の疲労も溜まって体がきつくなり、「それまで楽にこなせていた練習もだんだん厳しくなっていく感覚があります」というが、それでも合宿の練習では集団の真ん中で力強く走っている。
「全日本大学駅伝の短い距離よりも、自分のタイプ的にはハーフマラソンの方が合っていると思うので、箱根駅伝予選会の出走を狙っていきたいです」と、大舞台でのメンバー入りを目指して日々励んでいる。

猪股 富祐貴[いのまた・ふうき] 2006年生まれ。茨城県出身。茨城・土浦日大高卒。自己ベスト:10000m 31分00秒86(2025年4月) 【日本大学】
「新監督との縁を感じる」と話すのは八木澤來太選手(文理学部)。中学3年生の時、進学先を、監督が当時指導していた倉敷高校と洛南高校とで迷っていた。「その時は洛南高校に入ったのですが、今回、新監督からまた声を掛けていただいたので日大進学を決めました」
猪股選手と同様、大学での練習は「予想以上に距離を踏むな」という印象だったが、「距離の多さが最近の日大の勢いの秘訣なのかなと思う。そこにケアや治療を上手く取り入れながら順応していきたい」と前向きに捉えている。
4月の記録会では10000mで30分を切るタイムを出しており、大学初戦でその力を示した。夏合宿での練習は「きついです」と言いながらも、集団の中でしっかり先輩たちについて走る姿が印象的だ。

八木澤 來太[やぎさわ・らふと] 2006年生まれ。徳島県出身。京都・洛南高卒。自己ベスト:10000m 29分50秒27(2025年4月) 【日本大学】
ニチダイシンジダイ
今年の箱根駅伝の結果をどう感じたのかをルーキーたちにたずねると、犬塚選手は「体調不良者が多く出ていたようなのでしかたないと思う」。また、八木澤選手が「正直、あれ?という感じでした」と話すと、ほかの5人から笑いが起きた。しかし、「これからの伸びしろがあるチームだと思うし、自分たちの代が活躍して、チームを成長させていきたいと思いました」という力強い決意に、全員がうなずいた。
夏合宿序盤の長い距離走でも、上級生たちにしっかりついていくその姿に、頼もしげな視線を送っていた新監督。「これから試合で経験を積んでいけば、3年生になる頃が楽しみです」と顔をほころばせる。期待の新戦力たちが、新たな「ニチダイシンジダイ」を築いてくれるはずだ。

取材終了後、1年生たちは武者由幸コーチの引率により、釧路の観光スポット・和商市場へ。 【日本大学】

それぞれで好きな海鮮ネタを選んで作る名物「勝手丼」に舌鼓を打ち、ひとときの休息を楽しんだ。 【日本大学】