2026年1月2日(金)・3日(土)に行われた第102回東京箱根間往復駅伝競走(箱根駅伝)。3年連続92回目の出場を果たした日本大学陸上競技部特別長距離部門は、チーム一丸の“総合力”で総合10位に入り、12年ぶりとなるシード権をつかみ取った。「シード権争いに絡む」という目標を超える歓喜をもたらしたメンバーたちと指揮官は、この結果をどう受け止め、どのように次の1年に挑んでいくのだろうか。 新雅弘監督が就任する前の1年間と、就任後の3年間を通じ、さまざまな苦楽を経験してきた4年生たち。箱根駅伝と向き合ってきた大学4年間の思いは、当然ながら選手それぞれだった。
2年間主将を務め、チームをまとめてきた中澤星音主将(経済4・一関学院)の表情は、これまでとは違い安堵感にあふれていた。
「本当に長い4年間であり、きつい4年間だったなと思いますが、この4年間をやり切って、最後に笑顔で終われたことを本当に良かったなと思います」と話す声も、どこか明るく感じられる。
「これで競技は引退しますが、社会人となってもこれ以上つらい経験は、少なくとも肉体面ではないだろうと思うし、メンタル面でもこれよりつらいことはないと思いながら生活できる。陸上競技を通じて、本当にいろんな人の支えがあることを感じられたので、それに対する感謝を忘れずに生きていける人間でありたいと思っています」
そして最後に「シード権という置き土産を残せたので、来年のチームには今年を超えてさらに強くなってほしい。それが一番の願いです」と、後輩たちへの期待を語った。
10区での壮絶なシード権争い制し、「日本最南端ランナー」として注目を集めた大仲竜平選手(法4・北山)も、充実感を漂わせながら感謝の言葉を口にした。
「この4年間、新監督はじめコーチスタッフの方々、そしてチームメイトたち全員を信じて一生懸命にやってきて、やってきました。最後にこうして目標を達成して卒業できることをうれしく思いますし、皆さんに感謝しています。本当にいい4年間だったと思います」
卒業後は、今年のニューイヤー駅伝で過去最高タイの成績を収めたプレス工業(川崎市)で競技を続ける。「今後もしっかり走っていけるように頑張ります」と意気込む大仲選手が、チームをさらに上位へと導いていくはずだ。
2年連続の3区出走で、区間タイムを2分半も縮めた冨田悠晟選手(法4・草津東)。
「4年間の中ではいろいろと紆余曲折がありました。辛いこともあったし、競技から離れたいと思った時もあった。それでもチームのため、自分のために頑張ってきて、最後にこうして素晴らしい形で終えることができ、本当にうれしく思います。これまでやってきたことが無駄じゃなかったと、結果として残せたという点は本当に良かった」と感慨深げに話す。そして、「僕はやっぱり駅伝が好きなので、実業団(NTT西日本)で競技を続けます。チームのエースになりたいですし、来年のニューイヤー駅伝に出場して、チームの入賞に貢献できる走りをしたいと思っています」と、笑みを浮かべて意気込みを語った。
全日本大学駅伝での好走に続いて、2度目の山登りでしっかり結果を出した鈴木孔士選手(法4・中越)は、その一言一言に確かな自信と成長が感じられた。
「“シード権争い”というチーム目標に対して、往路を9位で終えてしっかりシード圏内に入れて良かったですし、復路のメンバーもみんな頑張ってくれてシード権を獲ることができ感謝しかありません。最後は中澤(9区)と大仲(10区)がひやひやの展開でしたが、しっかり力を振り絞って走ってくれて、自分も泣きそうになりながら応援していました(笑)」
さらに、「誰かの失敗を、誰かが取り返すことができるのが駅伝。駅伝という競技はやっぱりチーム力が大事なんだと改めて思いました」と、いつになく高揚した口調で話した鈴木選手。今年のニューイヤー駅伝7位入賞の黒崎播磨(福岡県)に進み、来年元日の出走を目指す。
3年連続の出走を果たした山口月暉選手(法4・鳥取城北)は、あらためて「箱根駅伝」の重みを実感しながら4年間を振り返った。
「1年生の頃は本当に不安ばかりで、右も左も分からない状態でしたが、まさかここまで自分たちが成長できるとは思いませんでした。4年生11人でこの舞台に来れたことに誇りと感謝を感じますし、一般の学生では味わえないことを経験して今がある。大学4年間でしか目指すことができない箱根駅伝というのは、本当にランナーの憧れであり、夢の舞台だったと感じます」
8区を任された今大会では後半苦しい走りになってしまったが、その悔しさを糧に実業団チームの名門・マツダ(広島)での活躍を誓う。
区間エントリーからの当日変更となった滝澤愛弥選手(文理4・佐野日大)は、最後まで箱根路とは縁がなかった。チームの躍進を喜ぶ一方で、「悔しい気持ちはありますが、これも自分の実力」と結果を受け入れている。思うような4年間ではなかったが、「いろいろと学ぶこともあったし、人との出会いもあった。辛いことも多くありましたが、そうした経験のすべてがこれからの競技人生につながると思っています」と前を向く。ニューイヤー駅伝25年連続出場という愛知の強豪・愛三工業でその実力を開花させ、元日の上州路を走る姿を期待したい。

9区、新監督からの声を受けながら前を追う中澤選手 【日本大学】
強い4年生たちに引っ張られて、シード権を手にした下級生たち。2026年のチームがどんな形になるかはまだわからないが、その中心を担うのは箱根路を経験した3年生たちであることは間違いない。1年後の箱根駅伝に向けての意気込みを聞いた。
1区を走り17位という結果に終わった山口彰太選手(スポーツ科3・佐野日大)。「シード権争いというチーム目標をしっかり達成し、その結果としてシード権を獲れたことをとてもうれしく思います」と、チームの躍進を喜ぶとともに、来年に向けての覚悟を口にした。
「今年の素晴らしい4年生たちが見せてくれた、大会に向けての緊張感や後輩を引っ張っていくリーダーシップを、新4年生としてしっかり受け継いでいきたい。そして、そういうものをまた下の代につなげていけたらいいと思っています」
2区での快走が往路躍進につながったシャドラック キップケメイ選手(文理3・イエギリティ/ケニア)は、新チームでも絶対的エースとしての活躍が期待される。最後の箱根駅伝に向けて「来年こそ2区で区間賞を獲れるように、また頑張ります」と目標を口にして、白い歯を見せた。
4区で箱根デビューを果たした片桐禅太選手(法3・中越)も、安定感のある走りで存在感を示した。「来年も箱根駅伝に出られますが、今度はシードを獲るだけじゃなくて、往路を走らせてもらった経験者として、もっと上のチームと勝負できるような走りをしていきたいと思います」
6区の山下りで箱根路の厳しさを味わった山口聡太選手(文理3・佐野日大)は、「9区・10区で4年生の主将・副主将が素晴らしい走りをしたのを目の当たりにして、今度4年生になる自分たちも、そういう部分をしっかり見倣っていかないといけない」と言葉に力を込める。そして「来年は、シード校としてふがいない走りはできないですし、自分がしっかり勝負を決められるような走りをしたい」と決意を語った。
7区での好走が光った天野啓太選手(法3・岡崎城西)も、「シード権を獲って箱根予選会がないぶん、練習の質も上がると思うし、合宿でもしっかり走り込みをして、スピードを磨いていくと思う。そうしたところを大切にして、日々の練習に取り組んでいきたいと思います」と、その視線はもう次に向けられている。
エントリーメンバーに入りながら出走が叶わず、悔しさを募らせながらチームメイトのサポートに奔走した高田眞朋(スポーツ科3・宮崎日大)、長澤辰朗(文理2・中越)、石川悠斗(法2・佐野日大)、𣘺本櫂知(スポーツ科2・学法石川)、後藤玄樹(文理1・宮崎日大)の5選手をはじめ、部員全員で戦った第102回箱根駅伝。
第103回大会のメンバー入りへ、チーム内競走の号砲はもう鳴っている。
「来年は“確実にシード権を獲る”が目標」
「シード権争いに絡むという目標以上に、選手たちがよく走ってくれたことが1番ですね」と、シード権獲得の要因を語った新雅弘監督(1983年・経済学部卒)。
「チームの総合力で勝負していこうという中で、9区・10区に起用した4年生がしっかりまとめてくれました。最後でシード権争いになれば、中澤も大仲も2年前に走った経験があるし、それが生きてくると思いましたが、まさかシードを獲れるとは思っていませんでした…」
チームに勢いをつけた往路9位という結果についても、出走メンバーを讃えつつ新監督は「うちは誰かがポイントというのではなく、ポイントは全員なんです。みんなの力が集まって、3年目でシード権を獲れた。当初の予定では3年目で箱根駅伝出場だったし、まして12年ぶりのシードだなんて、僕もびっくりしています(笑)」と、いつも通りにこやかに話す。
さらに「中澤にも2年間主将をやってもらって、1年目は故障などいろいろありましたが、そこでめげずによく頑張ってくれました。最後に花を咲かせることができて良かったですね」と、チームをまとめてきた中澤主将を讃えた新監督。
しかし、来年に向けての質問をすると、その表情は一気に引き締まり、「来年は確実にシードを獲る」ときっぱり。そして「僕が選手たちに言いたいことは、まだ半分ほど残っています。レベルが高いことを言っても通用しないので、いつもその時々のレベルになってから話をしています」と、チームの伸びしろに期待を寄せる新監督は、「来年、再来年も楽しみ」と話す。
「今回、3年生はみんな良い状態だったので、誰を起用しても良かった。1・2年生もエントリーメンバーに入って、走れなくてもこういう大きな舞台を経験できたことが来年につながる。次は絶対に自分が走りたいという気持ちを持てば、生活面も変わってくると思うので、そういう意味で今回の結果はチームにとって本当に良かった。みんな一生懸命こつこつと、真面目にやってきたので、神様もちゃんとご褒美をくれました。大学をはじめ、みなさんのおかげです(笑)」
歓喜と感動から一夜明けた1月4日(日)、早朝の陸上競技場に部員たちの姿があった。2月1日(日)に行われる丸亀ハーフマラソン(日本学生ハーフマラソン併催)に向けて、3年生以下が挑む5000mのタイムトライアル。応援のため顔を見せた4年生たちが見守る中、日本大学陸上部特別長距離部門は正月帰省を返上して新たなスタートを切った。
今年は出雲駅伝がある、全日本大学駅伝の連続出場もかかる、そして第103回箱根駅伝が待っている。1年先を見つめながら、チームはさらなる進化を目指し、「真の古櫻復活」へと疾走する。
