
優勝を勝ち取った出場選手たち。前列左より松岡大洋選手、倉本亮弥選手、碓井晴登主将、伊藤洋行選手、永井選手、後列左より吉田アリヤ選手、田島翼選手、リボウィッツ和青選手、平野敬太選手、藤田宝星選手、松澤快選手 【日本大学レスリング部】
2年連続の3位から、悲願の頂点へ。レスリングの団体戦「東京都知事杯令和8年度 東日本学生レスリングリーグ戦」が2026年6月16日(火)〜18(木)に東京・駒沢オリンピック公園総合運動場体育館で開催され、本学は1部リーグ決勝で山梨学院大を下し、2003年以来となる23年ぶり7度目の栄冠に輝いた。日本体育大・山梨学院大の2強を倒しての優勝は、選手個々の強さだけではない、チームとしての“総合力の高さ”を証明するものだった。
“粘り”でつかみ取ったリーグ戦制覇
東日本学生リーグ戦で最後に優勝を飾ったのは、もう1つの団体戦「全日本大学王座決定戦」(2010年大会で廃止)との2冠を達成した2003年まで遡る。以降は、山梨学院大と日本体育大がしのぎを削る状況が続き、本学は決勝進出さえ2007年を最後に遠ざかっていた。
そうした中、2024年4月に、23年前の優勝メンバーでもあった齊藤将士(文理学部2004年度卒)がコーチから監督に就任。昨年は東日本学生リーグ戦、全日本大学選手権・大学対抗得点とも3位に入ったものの、山梨学院大・日体大の2強との力の差は大きく、今年のリーグ戦では2強の一角に食い込むことが目標。主将の碓井晴登(法4・大垣日大)は、「結果を残すことはもちろんですが、1年生の頃からお世話になった先輩方や監督、コーチの方々に恩返しをしようという気持ちで挑みたい」と、最後のリーグ戦に向けての意気込みを語っていた。
1試合7階級で勝利数を競うリーグ戦。予選Bグループ(6校総当たり)に入った本学は、大会初日の1回戦から3回戦までを完勝。大会2日目の4回戦も勝利し、最後の5回戦で、4戦全勝で並ぶ日体大との対戦を迎えた。
2年連続準優勝の強敵を相手に、選手たちは果敢に立ち向かっていった。
第1試合に登場した70kg級・碓井が、互いに譲らぬ展開から試合終盤にポイントを重ね、実力者の細川周選手に勝利。「あの1戦がポイントだった。主将自らが執念を見せてくれ、チーム全体に一気に勢いがつきました」(齊藤監督)という殊勲の白星だった。
だが、続く3試合は日体大の底力に屈して3連敗を喫し、一気に王手を掛けられてしまう。後がなくなった状況で迎えた第5試合、「普段と変わらず、自分のレスリングをするだけという気持ちで挑んだ」という61kg級・永井陸斗(スポーツ科3・花咲徳栄)が大差の判定勝ちで流れを引き寄せると、86kg級では2026年U20世界選手権代表に決まった吉田アリヤ(スポーツ科2・帝京/JWA)が接戦を制してチームスコア3-3に追いつく。さらに、86-125㎏級の藤田宝星(スポーツ科2・花咲徳栄)もU20世界選手権代表の実力を見せて勝利を収める。優勝候補の日体大を撃破し5戦全勝となった本学は、Bグループ1位でのファイナルステージ進出を決めた。
大会最終日、ファイナルステージの準決勝は、Aグループ2位の育英大と対戦。第2試合の吉田と第3試合の永井が勝って2-1とリードしたが、74kg級と70kg級で連敗して逆転されてしまう。それでも「崖っぷちの状況で燃えていたので負ける気はしなかった」と、50-57kg級の副主将・倉本亮弥(危機管理4・大垣日大)が粘り勝ってタイに持ち込む。「自分が勝てば次の伊藤も続いてくれると思っていたので、勝って流れを変えるんだという気持ちでした」
その思いを受け取ったかのように、倉本とともに副主将を務める65kg級・伊藤洋行(スポーツ科4・秋田商)は、序盤から果敢に攻めてポイントを積み重ねていく。そして、わずか2分38秒でテクニカルスペリオリティ(12-2)の勝利を収め、チームスコア4-3と再逆転して、19年ぶりの決勝進出を果たした。
頂点まであと1歩。3時間後に始まった決勝戦の相手は、1部リーグ3連覇を目指す王者・山梨学院大。
第1試合は、本来の主戦場である74kg級で吉田が出場。ポイント1-1から第2ピリオド残り42秒のところで
パッシブにより1点が相手に与えられたが、その直後に吉田が相手を場外に押し出してポイントを奪い2-2に追いつく。そのままタイムアップとなり、最後に得点した吉田が勝者となった。

際どい勝負となった決勝の第1試合は、吉田選手のラストポイントで決着した 【日本大学レスリング部】
第2試合の50-57kg級・倉本は、昨年の大学王者で国際大会でも活躍する勝目大翔選手との対戦となった。
ポイント1-2のビハインドから、第2ピリオド52秒、仕掛けてきた相手をつかまえての投げ技が決まり、4点を挙げて逆転。その後は逆転を狙う相手の猛攻を凌ぎ切って6-4(山梨学院大のチャレンジ失敗で1ポイント追加)で勝利を収めた。
「土壇場で練習の成果が出ました」とビッグポイントの場面を振り返った倉本は、「流れを引き寄せられるキーになりましたが、相手も強い選手だったの全く気は抜けなかったし、点差を守り切ることに必死でした」。そしって「相手のチャレンジの審議中は神頼みと言う感じでした。日頃の行いが良かったので助かりました」と笑みを浮かべた。

試合終了間際の猛攻を耐え抜いた倉本選手の勝利で、チームスコアは2-0とリード 【日本大学レスリング部】
第3試合は、1年生ながら抜擢された田島翼(文理1・京都八幡)が、2025年世界選手権代表の須田宝選手に屈したが、続く第4試合の86-125㎏級は、残り33秒に場外ポイントを得て1歩リードした藤田が、留学生選手に競り勝って勝利。悲願の優勝まであと1勝に迫った。

上背のあるカザフスタンからの留学生選手を、パワーで場外へ押し出してポイントを挙げた藤田選手 【日本大学レスリング部】
第5試合に出場した86kg級・松岡大洋(危機管理4・大垣日大)がテクニカルスペリオリティで敗れ、チームスコア3-2と追い上げられたが、観客席に陣取る日大応援団のボルテージは逆に一段と高まっていく。
第6試合・65kg級の伊藤の相手は、U20世界選手権銀メダルの内田怜児選手。第1ピリオドを2-0で折り返した伊藤は、第2ピリオド1分で2ポイントを追加したが、すぐさま内田選手に後ろを取られて2ポイントを返される。このまま何とか逃げ切りたかった伊藤だが、再び内田選手に2ポイントを奪われ4-4。このままタイムアップとなれば、ラストポイントを取った内田選手の勝利になってしまう。
「追いつかれて焦りましたが、流れが日大に来ていたので取り返せると思っていました」という伊藤。残り10秒を切り、「もう取りに行くしかないっていう気持ちで、がむしゃらに攻めていた」と、低い姿勢から内田選手の足を取りに行くがかわされてしまう。しかし、後ずさった内田選手がバランスを崩し、一瞬棒立ちになったところを見逃さなかった。素早いタックルで膝下に潜り込み両足をすくうと、内田選手は尻餅をついて倒れこみ、その瞬間、会場は大歓声に包まれた。残り4秒余り、起死回生のテイクダウンを奪い6-4としたところで試合終了。「みんなが見ている決勝という大舞台で、優勝を決める逆転タックルを決められたので、とても気持ちよかった」とガッツポーズで雄叫びを挙げる伊藤を、駆け寄って力強く抱きしめた齊藤監督。自らも小さくガッツポーズを見せ、2003年以来となる優勝の喜びを噛み締めていた。

ラスト4秒、伊藤選手は渾身のタックルから相手の両足首をすくって相手を後ろに倒し、値千金のポイントを獲得 【日本大学レスリング部】

劇的勝利でチームに優勝をもたらした伊藤選手 【日本大学レスリング部】
「感動を生み出す日大の構築」へ、新たな挑戦は続く。
「結果を残すことはもちろんですが、1年生の頃からお世話になった先輩方や監督、コーチの方々に恩返しをしようという気持ちで挑みたい」と、最後のリーグ戦に向けての意気込みを語っていた碓井主将。大会に臨むにあたって、「メンバーかどうかは関係なく、全員で戦おう。試合に出なくても、応援などで必ずチームのためになることはあるので、それぞれが自分にできることを全力で取り組んで、全員で勝ちにいこう」と、部員たちにも伝えたという。
「自分の試合では『勝たなきゃいけない』という緊張もありましたが、ほかの選手たちは必ず勝ってくれると確信していたので、特に不安はなかった。日大らしい闘い方ができた」と胸を張った碓井。「仲間が勝ちを決めてくれた瞬間は『本当にやったんだ』と、喜びよりも実感が湧かない感じでしたが、みんなが喜ぶ姿を見て、自分も次第に喜びが湧き上がり、これまでやってきて本当によかったと心から思いました」と、万感の思いを語った。

チームメイトに胴上げされる碓井主将。予選リーグは個人5戦全勝の活躍で1部リーグ最優秀選手賞も受賞。「選ばれた時は驚きましたが、自分だけのものではなく、チームの代表としてもらったものだと思っています」 【日本大学レスリング部】
監督就任から2年2ヶ月でチームを優勝に導いた齊藤監督は、「最高の準備ができ、非常に良い状態で大会に臨むことができた。選手たちには常に『我々は挑戦者である』と伝え、『全力で闘って日本の大学レスリング界の勢力図をひっくり返そう!』と鼓舞していました」と話す。全日本女子チームでコーチを務めていた経験から、「選手たちに自ら考えさせる」ことを指導の軸として取り組んできた成果が、日体大戦、準決勝、決勝と、劣勢の状況からの粘りで勝利をつかみ取ってきたところに表れていると言えよう。
「優勝をつかむことができた一番の要因は、チーム全体に“我慢強さ”が身についたことだと考えています。気の抜けない厳しい試合が多く、常に緊張感がありましたが、学生たちの頑張りを最後まで信じ続けていました。彼らの粘り強さが、追い込まれた状況を打開してくれたと感じています。特に4年生たちが、最上級生としての責任感を持って本当に最後までよく頑張ってくれたことが、この結果に結びついたと感じています」

自身が選手として出場した2003年以来の優勝に導いた齊藤監督は、1部リーグ最優秀監督賞を受賞。「学生たちに囲まれて胴上げをされ、本当に幸せ者だと実感しました。その時は『日大最高!レスリング最高!』という思いが頭を駆け巡るほど、喜びでいっぱいでした」 【日本大学レスリング部】
眼前の目標は達成できた。しかし、大切なのはここからになる。
「23年前の優勝時は、高校チャンピオンクラスの選手が多く揃ったメンバーでしたが、今回は高校時代に無冠だった選手たちが大多数。そのような選手たちを日大の環境でしっかりと育成・強化し、東日本の大会でありながら実質の日本一を決める大会で、頂点まで引き上げることができたという事実は、チームの指導方針としても非常に大きな価値があると感じています」と、齊藤監督は今回の優勝の意義を話す。
「今後の課題は、チームの“普通のレベル”を上げていくこと。勝ち続けるためには、全体の水準をさらに引き上げなくてはなりません。この優勝に満足することなく、競技面はもとより私生活の面も含めて律していく必要があります。『克己・自律』の精神を胸に、日々の基準をさらに高めていきます」
続けて「団体では、内閣総理大臣杯(全日本大学選手権・大学対抗得点)と全国大学グレコ大会での優勝、個人では世界チャンピオン、五輪チャンピオンを輩出するという目標に向かって、これからも全力で努力邁進していきます。私たちが目指すのは、『強い日大。魅力ある日大。感動を生み出す日大の構築』です。ここからまた、新たな挑戦を始めます」と、力強く決意を語った。
試合直後のミーティングで「もう次の勝負は始まっている。現状に満足せず、引き続きやるべきことを地道にやっていこう」と、選手たちの気持ちを引き締め直した齊藤監督。学生レスリングの「3強」時代が、いま始まろうとしている。

部員全員に感謝を伝え、「みんな本当に凄いよ!」と言葉を掛けた齊藤監督。「目標を明確に持ち、人生をかけてコツコツ頑張れば勝てるというのを証明してくれたことを称え、素晴らしい成功体験ができたと伝えました」 【日本大学レスリング部】
【選手のコメント】
主将・碓井晴登選手
改めて、日本大学の一体感や絆の強さを感じました。生活を共にして、同じ釜の飯を喰う者同士だからこそ生まれるものが、他大学にはない応援の大きさなどにも影響をもたらしているのかなと思います。試合前や大会期間中にも、多くのOB方々から応援のメッセージをいただきましたし、実際に会場に足を運んでくださった先輩方もいて、多くのものに恵まれているなと強く感じました。
副主将・倉本亮弥選手
チームで戦うことの大切さを改めて実感した大会でした。自分一人ではなく、仲間の声援や支えがあったからこそ最後まで戦い抜くことができたと思います。ここまで育ててくれた監督・コーチや、応援してくれた沢山の先輩や後輩、保護者の方々に、結果で恩返しすることができてとてもうれしく思っています。
副主将・伊藤洋行選手
とにかく「うれしい」の一言です! 僕たちの代は高校チャンピオンもいないし、これまでの成績も他の代に比べて良いとは言えず、正直「最弱世代」だと思っていました。しかし、最後の年のリーグ戦で、マットに立った4年生全員が意地を見せて大活躍し、全員の力で優勝をもぎ取ることができた。本当に最高ですし、この仲間とつかんだ優勝は、僕たちの人生において一生の宝物です
永井陸斗選手
決勝戦は怪我をして出場することができず、チームに貢献することができませんでしたが、自分の好きなチームがリーグ戦を優勝することができたのでうれしい気持ちです。決勝戦で先輩方が見せてくれたように、相手に実績も実力もあったとしても、最後まであきらめず、戦い方次第で勝てることがあるということを、大会を通じて学びました。
吉田アリヤ選手
今大会では、安定した試合運びができ、焦ることなく試合をすることができました。今後は、これで満足せずもっと上を目指し、11月の全日本大学レスリング選手権大会でも優勝できるように頑張ります。
藤田宝星選手
今回の試合では、組み手で相手を崩す時、落としなどが単発になってしまい、タックルなどの攻めに繋げられなかったので、うまく繋げていけるようにしたい。今後は、8月にあるU20世界選手権でメダル獲得を目指します。

【日本大学レスリング部】