2026年7月2日(木)、第29回日本大学校友会 全国桜門スポーツ部会総会が開催された。総会に続いて行われた懇親会では、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック・パラリンピック、ならびに2025年度に開催された世界選手権大会ほかの国際大会に出場した本学関係役員・選手のべ39名(別表)が表彰され、当日出席した11名のアスリートたちに、全国桜門スポーツ部会の鈴木光会長より報奨金が贈呈された。
その中で、FISUワールドユニバーシティゲームズ(2025/ライン・ルール)に、日本代表としてフェンシング部から出場した選手たちに話を聞いた。
(取材日:2026年7月2日)
日本のトップになって、五輪の舞台に立つ。
フェンシング
松本 龍(2024年度・文理学部卒/飯野物産所属)
FISUワールドユニバーシティゲームズ(2025/ライン・ルール)
男子エペ個人 19位/男子エペ団体 優勝

【日本大学】
ジュニア時代から日本代表として活躍してきた松本選手は、本学でも男子エペ種目のエースとして、全日本学生個人選手権大会2連覇や全日本選手権大会優勝(3年次)のほか、全日本学生王座決定戦2連覇(2年・3年次)など団体戦でも実力を示してきた。日本代表としても、2022年の世界選手権男子エペ団体で日本初の銅メダル獲得に貢献したほか、‘23年は杭州アジア大会、アジア選手権、W杯バンクーバー大会で団体優勝と、国際大会で実績を積み重ねてきた。
社会人となった後も、‘25年のFISUワールドユニバーシティゲームズ(本大会開催前年に大学卒業のため有資格)で団体優勝。今年3月のW杯アスタナ大会でも団体銅メダルを獲得するなど活躍を見せているが、自身としては「この1年間は、かなり苦しい1年でした」と振り返る。
「今日、表彰していただくユニバーシティゲームズは、大学を卒業して初めての大会というところでの優勝だったので、ものすごくうれしかったです。しかし、学生時代とは異なり、フェンシングが仕事のような生活をしている中ではなかなか結果を残すことができず、苦しんだというよりも、結構もがいた1年でしたね」
7月下旬に香港で開催される世界選手権に向けて、「いろいろ試行錯誤してきましたけど、今シーズンの集大成になる大会なので、反省点を生かしてしっかり優勝できるように調整していきたいと思います」と、意気込みを語った松本選手。その先に目指すところは、2年後のロサンゼルス五輪にほかならない。
在学中から目標としていたパリ五輪では、日本の団体戦出場権獲得に貢献したものの、五輪代表入りはならず悔しい思いをした。五輪ヘの思いはより強くなったが、今は現状へのもどかしさも感じている。
「昨シーズンの日本ランキングは4位でしたが、今シーズンも同じく4位(6月時点)ということなので、結果だけ見れば停滞している。トップワン・ツーのどちらかに入るっていう目標を立てて臨んだ中での4位と、客観的な結果として出ていることは、重く受け止めなければならないと思っています。やっぱりロサンゼルス五輪に出るには、1・2番ではなく、1番じゃないと」
いまやフェンシング強豪国となった日本、中でも東京とパリでの五輪2大会連続のメダル獲得を果たしているエペ種目は選手層が厚く、超えていかなければならないライバルたちも多い。パリ五輪のエペ個人戦金メダリスト・加納(虹輝)選手がいる。2大会連続メダル獲得へチームを牽引してきた日大の先輩の山田(優)選手もいる。
「団体戦においてはチームメイトですが、個人でのライバルとして僕がもっと強くなることで、チームもさらに強くなっていくと思うので、来シーズンはしっかりトップを狙いに行きます。そこはぶらさずに、反省点をしっかり見直して、来シーズンにつなげていきたいと思っています」と、松本選手はにこやかに、そして力強く、さらなる成長を誓った。
自分のフェンシングをして、全力で五輪を目指す。
フェンシング
竹山 柚葉(スポーツ科4/2025年度卒/エア・ウォーター所属)※学年は大会時
FISUワールドユニバーシティゲームズ(2025/ライン・ルール)
女子フルーレ個人 10位/女子フルーレ団体 3位

【日本大学】
大学を卒業して4カ月の竹山選手に「4年間で一番大きな出来事は?」と尋ねると、「1年生の時に膝の前十字靭帯(じんたい)を怪我したことですね」という答えが返ってきた。パリ五輪を控えた大事な時期に1年弱もフェンシングから離れることになり、失意の中、地元の京都に帰ってリハビリを積み重ねた。
「結果的には、その経験が自分を成長させてくれたような気がするんです」と笑顔を見せる竹山選手。思うようにいかないことがあっても、「あの半年間を乗り越えられたんだから、私は大丈夫」とすべてを前向きにとらえられるようになった。その姿勢は競技において大切なことだ。目標にしていた2024年のパリ五輪には、代表メンバーのスパーリングパートナーとして参加し、その過程でも多くの学びを得たという。
昨年のFISUワールドユニバーシティゲームズでは、同期の岩本鈴菜選手(文理4)とともに戦った女子フルーレ団体で、フランスとの3位決定戦を45対37で制して銅メダルを獲得。試合後、「メンバー全員が“絶対にメダルを獲る”と強い気持ちで挑んだ大会でした。自分たちを信じて最後まで戦えたことが、この結果につながったのだと思います」と語った竹山選手は、この試合で45ポイント中20ポイントを1人で挙げている。スコア0-5、22-25と2度の劣勢の状況でピストに立つと、いずれも相手を圧倒して逆転し、チームを勝利に導いた。それは、試練の時を乗り越えてきた中での学びと成長の証しにほかならない。
4月からはエア・ウォーター株式会社に所属し、アスリート社員として活動している。幼い頃からずっと追いかけてきた憧れの存在である上野優佳選手と同僚になり、ともにロサンゼルス五輪を目指せることが竹山選手にとって大きな力になっているという。
「今シーズンはこれまでの競技人生で一番調子が良かった。自分のフェンシングをして、試合で力を発揮できるようになってきたと感じています。そこを維持しつつ、今後は安定して結果を出せるようにしていきたいですね。まだまだ世界のトップ選手に及ばない部分はありますが、自分の持ち味であるスピードを生かしつつ、技術面の課題を解決していきたいと思っています」
ロサンゼルス五輪は2年後。W杯個人戦でメダルを獲り、世界ランキングを16位以内に上げて、次シーズンのアジア選手権・世界選手権で爪痕を残すというのが、自ら描く五輪出場へのロードマップだ。
逆境をプラスに変えていく、しなやかな強さを大学時代に身につけた竹山選手。その眼差しはまっすぐに次の目標を見つめていた。

2025年全日本選手権でフルーレ団体4連覇、および主要大会5冠を達成した竹山選手(左から2人目)と岩本選手(同3人目)【日本大学フェンシング部】
文武両道で身につけた“やり遂げる力”で、五輪へ。
フェンシング
岩本 鈴菜(文理4/2025年度卒/新晃工業所属)※学年は大会時
FISUワールドユニバーシティゲームズ(2025/ライン・ルール)
女子フルーレ個人 18位/女子フルーレ団体 3位

【日本大学】
10歳でフェンシングに出会い、高校1年生でU 15W杯に出場して5位入賞を果たすなど、ジュニア時代から着実に戦績を挙げてきた岩本選手。しかし、和歌山北高校時代は周囲に強い選手が少なく、それが不安だったという。「強くなるには、切磋琢磨する仲間やライバルの存在が不可欠」そう考えていた。だからこそ、日大入学後のフェンシング部の環境には感謝している。圧倒的な強さを持つ先輩や仲間の存在が、自らの“チャレンジする心”に火をつけてくれた。
大学2年時に出場したFISUワールドユニバーシティゲームズ成都大会では、女子フルーレの個人戦で5位、メンバー3人で戦った団体戦で銅メダルを獲得。さらに、昨年のライン・ルール大会は同期の竹山選手とともにTEAM JAPANとして戦い、団体戦2大会連続の銅メダル獲得に貢献し、「最高のメンバーで最後まで戦えたのが幸せだった」と喜びを語った。
「大学時代に得たものは?」と問いかけると、「やり遂げる力」という答えが返ってきた。それは、競技の分野に限ったことではなく、「文武両道の“文”の方もけっこう頑張ったと思います」。
文理学部の英文学科に本格的な競技部活動をしている学生が入学するのは、岩本選手の世代が初めてだった。前例がないぶん、授業と遠征や大会参加の調整が大変で、試合の出場をあきらめざるをえないこともあった。だからこそ、競技活動を周囲に理解してもらうために、学業の方も必死で頑張った。「フェンシング部で結果を残しつつ4年間で卒業することができたのは、やり遂げる力がついたということなんじゃないかと思います」と笑みを浮かべる岩本選手。学びにおいても“チャレンジする心”が生きたということだ。
大学卒業後、岩本選手は新晃工業株式会社に所属し、アスリート社員として競技を続行している。だが、「思うようなプレーをすることができず、結果を残すこともできなくて」と、今季は苦しいシーズンだった。W杯の予選では、人生で初めて全敗を喫した。「もう終わりや」と落ち込む中、顔を上げる力をくれたのは、会社の先輩や同僚がかけてくれた温かな言葉だった。
「家族やチームメイトのほかに、自分をサポートしてくれる“ホーム”がもうひとつ増えたんだな、と元気をもらいました」
苦しみ中にも光明が見えた。シーズン最後の試合で「今までにないような手応えを感じられた」という。その感覚をキープすることができれば、結果にもつながっていくはず。そして、その先には2年後のロサンゼルス五輪がある。
初めての夢舞台に向けて、「もっと自分らしいプレーができるように、来シーズンは頑張りたいですね」と、岩本選手は瞳を輝かせた。

4年間切磋琢磨してきた岩本選手(右)と竹山選手(左)【日本大学】
怪我に向き合うことで、人として成長できた。
フェンシング
樋渡 怜大(2024年度・法学部卒/ミキハウス所属)
FISUワールドユニバーシティゲームズ(2025/ライン・ルール)
男子サーブル個人 11位/男子サーブル団体 3位

【日本大学】
フェンシングは海外遠征が多く、高額の遠征費がかかるスポーツだ。
2025年3月に大学を卒業し、株式会社ミキハウス所属のアスリート社員として1年と3カ月を過ごした樋渡選手に学生時代と現在の違いを尋ねると、「遠征費を会社に負担してもらいながらプレーを続けられることに感謝しかありません」と襟を正した。
「支えてくださった方々に対して、五輪をはじめとする国際大会で結果を出して恩返しすること。その責任を意識するという意味では、今の毎日には学生時代とは違う覚悟が求められていると思います」
学生最後の1年は怪我に苦しんだ。4年生の6月に膝の前十字靭帯(じんたい)を損傷。初めてのアジア選手権出場が内定した直後のタイミングで、1年間の長期離脱を余儀なくされた。
「競技人生の中で一番落ち込みました。フェンシング部の主将でありながら試合に関われないことも本当につらくて」と、当時を振り返った樋渡選手。「今、自分に何ができるのか?」を考えた末に、コーチングによって後輩たちに技術面をはじめ心技体のすべてを伝えていこうと決めた。その結果、自身最後のインカレで、チームは3年ぶりの団体優勝を果たした。後輩たちの成長が心からうれしく、怪我をしたことで得られたことも多いと感じた。その経験は、社会人となった今、後輩アスリートたちとの向き合い方という点で生きているという。
怪我が癒え、試合に復帰できたのは昨シーズンの後半。当初は海外の選手に打ち負かされ、「怪我をする前の自分との力の違い」を痛感したが、「でもそれは仕方がないこと。自分がもう一段上に上がるための試練だと思っているので、結果を受け止めて次の試合に臨むしかない」と切り替えている。
2025年のFISUワールドユニバーシティゲームズ(本大会開催前年に大学卒業のため有資格)ではサーブル個人では11位に終わったが、サーブル団体で銅メダル獲得という結果を残した。オフシーズンの今は、自信を持って試合に向き合える状態をつくるために心技体への取り組み方を見つめ直し、来季に向けて準備を進める毎日だ。
「怪我をしている時に、多くの方から連絡をいただき、自分がどんなに恵まれた状況の中でフェンシングができているのかを実感しました。そうした支えてくださる方々への恩返しの意味でも、ロサンゼルス五輪でメダルを獲りたい」と語る樋渡選手。その言葉は強い決意に満ちあふれていた。
チーム5冠と五輪メダル、2つの目標に向かって。
フェンシング
周藤 美月(スポーツ科1)※学年は大会時
FISUワールドユニバーシティゲームズ(2025/ライン・ルール)
女子サーブル個人 43位/女子サーブル団体 5位

【日本大学】
フェンシングの強豪、愛媛県・新田高校に在学中からカデ(U17)やジュニア(U20)の日本代表選手として活躍し、サーブル界の期待の星として注目されていた周藤選手。FISUワールドユニバーシティゲームズへの出場が決まったのは、大学へ進学して間もなくのことだった。
「“学生のオリンピック”と呼ばれるくらい規模の大きな大会で、一緒に参加した先輩方も含め周りはすごい選手ばかり。私は緊張して大会の雰囲気にのまれてしまい、個人戦は予選敗退という悔しい結果に終わりました」
個人戦が終わった当初は、他国の同年代の選手たちが活躍する姿を見て「自分はここまで何しに来たんだろう」と落ち込んでいた。しかし自分と同じように個人戦で不本意な結果だった日大の先輩たちが、気持ちを切り替えて団体戦のメダルを目指す様子を見て、周藤選手も気持ちを再び奮い立たせたという。
「特に、卒業されたばかりのOB・松本龍選手(2024年度・文理学部卒/飯野物産所属)が金メダルを獲得した男子エペ団体の試合は、今まで見たことがないようなすさまじい熱量でした。普段はあまり関わる機会がない一世代上の日大の先輩が、全力でメダルを獲りに行く姿を間近で見て『日大でプレーする道を選んで良かった』と改めて思いましたね」

「日大の誇りを、これからの3年間で下の世代にどう伝えていくか、自分がどうやって示していけるかを考えていきたい」と話す周藤選手。【日本大学】
周藤選手が取り組む女子サーブル種目は、パリ五輪で史上初の団体銅メダルを獲得するなど、近年の国際大会での活躍がめざましく、同時に先輩の金子優衣奈選手(2025年度・文理学部卒/ミキハウス所属)をはじめ日本代表の選手層は厚い。そうした中で周藤選手は最近、「金子選手世代の先輩方と自分たちは、なぜこんなに差があるんだろう」とよく考えるようになった。
まだ確かな答えは見つけられていないが、「先輩たちへの憧れが抜けていないのでは」と感じるところもある。先輩たちの強さを憧れでなく目標として定め、「上の世代がなぜ強いか」を冷静に分析して、自分がやるべきことを手を抜かずにやっていくしかないと自らを叱咤する。
「どうしたら追いつけるのかわからなくても、投げ出してしまうのではなく、日大のアスリートらしくコツコツ努力を続けていこうと思っています。妥協したり、甘えを出したら差は広がる一方になってしまいますから」と笑顔で話すところは頼もしい限り。今は、大学の大会と個人の国際試合を両立するために、日々の生活を見直し、生活リズムを整えていくことを始めたという。
日大フェンシング部一員としての目標は、関東学生リーグ戦・全日本学生フェンシング王座決定戦・関東学生フェンシング選手権大会・全日本学生フェンシング選手権大会(インカレ)・全日本フェンシング選手権大会(団体戦)の主要大会で5冠を獲ること。そして、「下級生に『この人についていこう』と思ってもらえるような選手になることを目指して、人間としても成長していきたい」と言葉に力をこめる。
個人としては、2027年のFISUワールドユニバーシティゲームズでメダルを獲ることが当面の目標。そしてその先、最終学年になる2年後には、昔からの憧れだった五輪が待っている。ロサンゼルス大会でのメダル獲得はもちろん、「次のブリスベン五輪で金メダルを獲りたい」と、一歩先を見据えて大きな夢を思い描いている。
「チーム日大で戦えることは、成長の糧であり大きな財産」と、フェンシングに真摯に向き合う周藤選手のこれからに,期待が高まるばかりだ。

2025年の全日本学生王座決定戦は、1年生ながらレギュラーとして出場した周藤選手(左から2人目)。4年生の金子選手とともに戦い、女子サーブル団体準優勝に貢献した。【日本大学フェンシング部】