
6月13日 準硬式野球最後の試合で投球する竹川葉流 (スポーツ科4・都立江戸川) 【日本大学】
準硬式野球部 創部初のプロ志望届を提出
本学準硬式野球部に所属する投手、竹川葉流(スポーツ科4・都立江戸川)が、創部以来初となるNPBへのプロ志望届を提出した。 10月22日に行われるプロ野球ドラフト会議を前に、竹川の想いを聞いた。
毎年10月になると、プロ野球ドラフト会議の話題が新聞誌面を賑わすようになる。 ドラ1候補をはじめ、多くのNPB入りを目指す選手がプロ志望届を提出する度にスポーツニュースではドラフト予想が始まり、上位候補と言われる選手名を目にする。 その中に、異色の経歴を持つ選手の氏名があった。 本学準硬式野球部に籍を置く竹川葉流(スポーツ科4・都立江戸川)だ。 野球好きであれば「準硬式野球」というキーワードに目が留まったかもしれない。 NPB入りを目指す選手のほとんどは硬式野球部に所属し、硬式球を使用する試合で腕を磨きながらプロ入りを目指すのが通例だ。 野球に詳しくない人であれば、準硬式球を使う準硬式野球の存在を知らないかもしれない。
竹川が所属する本学準硬式野球部は東都大学1部リーグに所属し、全日本大学準硬式野球選手権大会で6度の優勝を誇る。 準硬式球の中身は硬式と同じ素材を使用し、外側をゴムで包まれていて、一般的に硬式球よりも球速が出にくいと言われる。 竹川の名前が世間に出るようになったのは、3年時に公式戦で152kmの球速をマークした時だった。この頃から少しずつ注目度が上がっていく。 今年の春季リーグ開幕戦にはプロ野球5球団のスカウト陣がバックネット裏から竹川の投球に目を光らせた。 準硬式野球のリーグ戦にNPBのスカウトが集まるのは異例のことだ。 これまでに大学準硬式野球からNPB入りしている実績があることも影響しているかもしれない。 この日は9回に登板し、2奪三振無失点の好投を見せた。
高校時代は無名の投手 大学入学後に準硬式野球へ
竹川は高校時代、都立江戸川高校野球部に所属していた。 当時は目立った実績はなく、甲子園出場経験もない。 もちろんプロを目指すこともなかった。 大学は一般受験で入学し、野球を続ける明確な意思はなかったが、入学後に学生主体で練習に取り組む準硬式野球部の存在を知り、入部を決意した。 大学準硬式野球は、学生が主体となって練習、運営することを特徴とする。 自身で考え行動することが求められる環境も、竹川にとっては好材料だったのかもしれない。 自分の体を理解し、足りない部分を補い、次の目標を決めて行動する。 当たり前のように思えるが、学生がこれを自立して実践することは難しい。 球速が高校時代の130km台から150km台までアップしたのは、この当たり前を毎日実践した成果と言えるだろう。
日大準硬式野球部は他の大学硬式野球部のように専用のグラウンドを持っていない。 都内にある学生寮の中庭にある僅かなスペースと他部と共用で使用するトレーニングスペース、そして大学の授業がない日は公営の球場で実戦練習などをしながらチーム力を磨いていく。 竹川が特に力を入れているのはウェイトトレーニングだ。 球速アップのために体幹トレーニングや必要な筋力量の増加などに取り組む。 トレーニングごとに必ずノートを付けるのも日課の一つ。 今日出来たこと、これからやるべきことをノートに書き出し、頭の中を整理することで現在地を確認する。 この継続こそが成長に欠かせないことを竹川自身が一番理解している。

トレーニングルームで下半身を鍛える竹川 【日本大学】

トレーニングの効果や成果を毎回ノートに書き出して整理するのが日課だ 【日本大学】

都内にある日大八幡山寮のスペースでトレーニングする竹川 【日本大学】
自身を奮い立たせたライバルの存在
日大準硬式野球部にはもう一人150km投手がいる。 竹川がライバルと呼ぶ首藤玄大(文理4・日大豊山)だ。 同じ学年で150kmコンビと言われて注目を集めた。 「首藤がいなければ今の僕はなかった」というほど、首藤の存在は竹川にとって大きなものだった。 彼が出来るなら自分にも出来る、そう言い聞かせながらお互いに切磋琢磨してきた。 同じ環境で上を目指す仲間の存在は、一人では超えられない場所へも連れていってくれる。
昨年11月に阪神甲子園球場で行われた東西対抗戦には2名共に東日本選抜に選出され、憧れだった甲子園のマウンドで投球を披露した。 前日に大阪市内で行われた記者会見で、集まった記者の前でマイクを握った竹川は「NPBを目指します」と力強く宣言。 この時の表情から、プロを目指す覚悟が伝わってきた。

150kmコンビとして切磋琢磨してきた(左から)首藤玄大(文理4・日大豊山)と竹川 【日本大学】

2025年11月 東西対抗戦甲子園大会を前に記者会見でNPBへの想いを語る竹川 【日本大学】

2025年甲子園のマウンドに上がる竹川 【日本大学】
6月13日、8月に行われる文部科学大臣杯出場をかけた春季リーグプレーオフでの敗戦をもって、二人の大学準硬式野球の活動が終了した。 二人は試合後、最後のミーティングの中で後輩達と向き合いながらこれまでの感謝を伝え、さらなる飛躍を託した。 首藤は教員免許を取得した上で、卒業後も野球を続けていくという。 竹川はNPBを目指して硬式野球へ戻るとともに、その二日後には米国サマーリーグ参加のため渡米した。 「サマーリーグで日本の環境とは異なるベースボールを体感したい」と意気込む。

公式戦最後の試合後ミーティングで後輩メンバーと向き合う首藤と竹川 【日本大学】
北米サマーリーグの参加で得た感触と目指す場所
竹川は今夏にMINKリーグとNorthwoods Leagueという二つの北米サマーリーグに参加した。 サマーリーグはマイナーリーグと同様の体制で運営されており、同じ使用球を使い、過密な日程の中でMLBを目指す大学生が参加する。 多くの観客が動員されると同時にエンターテイメント性もあり、日本の大学野球とは大きく異なる環境でプレーができる。 竹川はMINKリーグではSt. Joseph Mustangsに、Northwoods LeagueではLa Crosse Loggersに所属し、先発やリリーフで計12登板を経験した。 生活はホストファミリーにお世話になり、「現地に着いた時は聞き取れなかった英語もある程度会話ができるようになった」と言う。
日本とアメリカの野球の違いを問うと、「アメリカのバッターは一発や長打があるので、いくら真っ直ぐに自信があるとはいえ、安易に配球を組み立てることはせずに、徐々に崩していって、三振を取るということができるようになりました。 また、トレーニング内容についてもアメリカには新たに学ぶべき点が多くありました。日本人の良さと掛け合わせていければ、もっと良くなるはずだと感じました。実はこれまで、自分から積極的にコミュニケーションを取るのはあまり得意ではありませんでした。しかし、思い切って飛び込んでみたことで心も豊かになり、いろんな価値観を知るきっかけになると気づけたので、今も実践しています」と語った。

北米サマーリーグ Northwoods League La Crosse Loggersのチームメイトと 【本人提供】
短期間ではあるが、異なる国と環境での経験によって竹川に新たな価値観が生まれ、さらに上を目指す上で今後の指標になるものが見つかったようだ。 8月18日に帰国後、竹川はプロ志望届を提出した。どんな形であれプロの世界に飛び込みたいと語る竹川は、今の心境を聞かれると、「結果に関わらず、野球人としてやるべきことはこれからも同じです。ここからさらに自分がどうステップアップしていけるか、今はその先の未来へ向かう気持ちの方が強いです」と晴れやかな表情で語った。
NPBドラフト会議は10月22日に行われる。